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番外編
【番外編】太凱と蒼瑛
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こちらは番外編です。興味ない方は読み飛ばしてください。
――――――――
太凱《タオガイ》は、どうしても納得がいかなかった。
「翠蓮……祭の日、なんかあったんだよな?」
あの日、はぐれた翠蓮を探していたら陳偉と凌暁に会った。
翠蓮は陳偉が送り届けるから心配ないと言われ、太凱は凌暁と城に帰った。
翠蓮本人は直ぐに帰ったと言っているが、明るいうちに帰ってこなかったことを、太凱は知っていた。
陳偉も凌暁も妙な変装をしていたが、理由は教えてくれなかった。
おそらく身分を隠すためなのだろう。問題はなぜ身分を隠さねばならなかったのか――
「……やっぱ殿下と関係あるんだよな?」
翠蓮は夜まで蒼瑛と居たのだろうか。そう思うと太凱は足がムズムズしてきた。
「だー!! めんどくせぇ!」
そう言うと太凱は走り出し、蒼瑛の書斎のドアを叩いていた。
返事はない。
「突然来ても会えないか……」
「太凱?」
書斎に戻ろうとしていたのだろうか、ちょうど蒼瑛が姿を見せた。
「殿下に聞きたいことがあるんですけど!」
蒼瑛は遮るように手を上げた。
「とりあえず中へ……」
書斎に入った太凱は、勧められるまま蒼瑛の前にどっかり腰を下ろす。
蒼瑛は何の話か分かっているのだろうか。特に話を促すでもなく静かに座っている。
(あー……こういう落ち着いてるとこがいいってか? 翠蓮も――)
太凱はすぐに思考を打ち消した。いくらなんでも相手は皇子だ。翠蓮が彼に、憧れ以上の気持ちを持つなんて信じたくなかった。
(だけど……改めて見るといい男だよな。
……別に俺の目指すタイプじゃないけど)
楽府の祝宴で、女性がこぞって蒼瑛を取り囲んでいたことが思い出される。
皆目の色を変え、甘えた声を出し、手を重ねようとする者や、酔ったふりをしてしなだれかかろうとする者までいた。
蒼瑛はそのどれもこれもを、笑顔で華麗に交わしていた。
おまけに酔いつぶれた太凱を介抱してくれたという。
「そんなに見つめられると照れるな」
不意に声をかけられ太凱は我に返る。
余裕な感じがちょっと癪に障る。
「……聞きたいことがあります」
「なんだ?」
「祭の日……翠蓮と二人でいました?」
「いた。すまない」
あまりにあっさり認められ、太凱は感情の行き場がなくなった。
「え……その、二人でデートしたってことですか?」
「デート……」
太凱の露骨な言いように、蒼瑛は眉をひそめる。
「翠蓮、祭の日から様子がおかしいんですけど、知ってました?」
蒼瑛は首を横に振る、太凱はだんだん、目の前の皇子に腹が立ってきた。
「殿下ならいくらでも、周りにお似合いの女性がいますよね? わざわざ翠蓮にちょっかいかけないでもらえますか?」
「そのようなつもりでは……」
「じゃあ、どういうつもりなんです?」
「太凱」
蒼瑛は静かに名を呼んだ。
「それを、私から聞いてどうする?」
太凱は、はっと息を呑んだ。
蒼瑛の声音は穏やかだったが、逃げ道を塞ぐような静けさがあった。
「……っ」
反論しようとして、言葉が見つからない。
聞きたいはずだった。確かめるために、ここまで来たはずだった。
だけど——
もし、ここで蒼瑛の口から何かを聞いてしまったら。
それが、望まない答えだったら。
「……ちっ」
太凱は乱暴に立ち上がった。
「すいません。今日はもういいっす」
そう言い、形だけ礼をする。
背後で蒼瑛が何か言いかけた気配がしたが、振り返らなかった。
外に出ると、胸の奥が妙にざわついている。
怒りなのか、焦りなのか、それとも——。
「……めんどくせぇ」
吐き捨てるように呟く。
向き合うべきは蒼瑛じゃない。
時が来たら――
……いや、来たら、だ。
今はまだ、その覚悟がなかった。
太凱はそう自分に言い訳しながら、足早にその場を離れた。
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太凱《タオガイ》は、どうしても納得がいかなかった。
「翠蓮……祭の日、なんかあったんだよな?」
あの日、はぐれた翠蓮を探していたら陳偉と凌暁に会った。
翠蓮は陳偉が送り届けるから心配ないと言われ、太凱は凌暁と城に帰った。
翠蓮本人は直ぐに帰ったと言っているが、明るいうちに帰ってこなかったことを、太凱は知っていた。
陳偉も凌暁も妙な変装をしていたが、理由は教えてくれなかった。
おそらく身分を隠すためなのだろう。問題はなぜ身分を隠さねばならなかったのか――
「……やっぱ殿下と関係あるんだよな?」
翠蓮は夜まで蒼瑛と居たのだろうか。そう思うと太凱は足がムズムズしてきた。
「だー!! めんどくせぇ!」
そう言うと太凱は走り出し、蒼瑛の書斎のドアを叩いていた。
返事はない。
「突然来ても会えないか……」
「太凱?」
書斎に戻ろうとしていたのだろうか、ちょうど蒼瑛が姿を見せた。
「殿下に聞きたいことがあるんですけど!」
蒼瑛は遮るように手を上げた。
「とりあえず中へ……」
書斎に入った太凱は、勧められるまま蒼瑛の前にどっかり腰を下ろす。
蒼瑛は何の話か分かっているのだろうか。特に話を促すでもなく静かに座っている。
(あー……こういう落ち着いてるとこがいいってか? 翠蓮も――)
太凱はすぐに思考を打ち消した。いくらなんでも相手は皇子だ。翠蓮が彼に、憧れ以上の気持ちを持つなんて信じたくなかった。
(だけど……改めて見るといい男だよな。
……別に俺の目指すタイプじゃないけど)
楽府の祝宴で、女性がこぞって蒼瑛を取り囲んでいたことが思い出される。
皆目の色を変え、甘えた声を出し、手を重ねようとする者や、酔ったふりをしてしなだれかかろうとする者までいた。
蒼瑛はそのどれもこれもを、笑顔で華麗に交わしていた。
おまけに酔いつぶれた太凱を介抱してくれたという。
「そんなに見つめられると照れるな」
不意に声をかけられ太凱は我に返る。
余裕な感じがちょっと癪に障る。
「……聞きたいことがあります」
「なんだ?」
「祭の日……翠蓮と二人でいました?」
「いた。すまない」
あまりにあっさり認められ、太凱は感情の行き場がなくなった。
「え……その、二人でデートしたってことですか?」
「デート……」
太凱の露骨な言いように、蒼瑛は眉をひそめる。
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「殿下ならいくらでも、周りにお似合いの女性がいますよね? わざわざ翠蓮にちょっかいかけないでもらえますか?」
「そのようなつもりでは……」
「じゃあ、どういうつもりなんです?」
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「それを、私から聞いてどうする?」
太凱は、はっと息を呑んだ。
蒼瑛の声音は穏やかだったが、逃げ道を塞ぐような静けさがあった。
「……っ」
反論しようとして、言葉が見つからない。
聞きたいはずだった。確かめるために、ここまで来たはずだった。
だけど——
もし、ここで蒼瑛の口から何かを聞いてしまったら。
それが、望まない答えだったら。
「……ちっ」
太凱は乱暴に立ち上がった。
「すいません。今日はもういいっす」
そう言い、形だけ礼をする。
背後で蒼瑛が何か言いかけた気配がしたが、振り返らなかった。
外に出ると、胸の奥が妙にざわついている。
怒りなのか、焦りなのか、それとも——。
「……めんどくせぇ」
吐き捨てるように呟く。
向き合うべきは蒼瑛じゃない。
時が来たら――
……いや、来たら、だ。
今はまだ、その覚悟がなかった。
太凱はそう自分に言い訳しながら、足早にその場を離れた。
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