24 / 44
心配と不安
しおりを挟む
週末。
紫音は明弘に会えなかった。
『風邪ひいちゃったみたいなんだ。しーちゃんにうつすと大変だから、今日明日はおとなしくしてるよ。ごめんね』
スマホに届いたそのメッセージを見て慌てた紫音は、すぐに返事を送った。
『大丈夫? 熱とかあるの?』
『そんなには、ないと思う。体温計無いから測ってないけど』
『咳とか喉痛いとかは?』
『ちょっとだけ。でもそんなに辛くないよ。大丈夫』
なんとなく、明弘の『大丈夫』は信用できない。
辛い事を我慢する癖がついているような気がするのだ。
『本当に大丈夫? ごはん食べてる? 薬はある?』
……しばし待つが、返事が来ない。
『何か持って行こうか?』
返事を待ちきれず、紫音はメッセージを送った。
『レトルトのおかゆとか、薬とか。必要な物教えてくれれば持って行くよ』
『住所教えてくれば、ナビで行けるし』
すると、返事がきた。
『ホントに大丈夫。食べる物も薬もあるし』
『そう? じゃあ、ゆっくり休んでね。困ったときは教えてね。会わないで、玄関先に置いて来る事もできるんだからね』
『うん、ありがとう。早く治すよ』
やり取りを終え、紫音はフーッと息を吐いた。
「んー……まあ、大丈夫って言ってるからね……」
心配だが、しょうがない。
「行くって言えば、喜ぶかと思ったのになぁ……」
なんとなく、残念な気持ちになる。
『会いたいって言われると思ってた。ちょっと、浮かれすぎね。あーほら、あれだ、部屋片づけてないから恥ずかしいとか。うん、そういう事かもしれないよね。会いたくないとか、そういうことじゃなくて……』
もう気にしないようにしようと、テレビを点ける。しかし、
『……昨日、酔ってたよね。わたしもだいぶ飲んでたけど、アッキーもわたしのペースに合わせてたから。……昨日のは酔った勢いだったのかな……で、今日になって、後悔したとか?』
ついつい、考えてしまう。
『ていうか、わたしもだいぶ酔った勢いだったからなぁ……。そうだよ、アッキーの気持ち考える前に、自分の気持ちよ! どうするわけ? アッキーと付き合うの? 5歳違うんだよ? まあ、今は4歳だけど……もう、すぐにわたし25になるし。これまでずっと、弟のような気持ちで接してきたのに、急に男の人として見る事なんて……いや、それは、見られるね、うん。昨日、めちゃくちゃドキドキしたし、好きって言ってもらったの、すっごく嬉しかったし、今日会えないってわかって、めちゃくちゃがっかりしたし……』
と、言う事は、もちろん付き合うかというと……『でも……』と思ってしまう。
『アッキーはまだ大学生でハタチでしょう? 大学には同じくらいの齢の女の子がいっぱいいるわけだし、社会人になってからも、かわいい同僚とかできるだろうし……今まで、会えなかったからわたしの事をずっと思ってきたのかもしれないけど、会えたって事で、目標達成になるんじゃない? 満足したらやっぱり、他の女性にも目がいくだろうし……』
『初恋』という甘美なフィルター越しの自分は、長くはもたないと思う。
「はぁぁぁぁ……どうしよう……困っちゃったなぁ……」
紫音はパタリと横になり、目を閉じた。
紫音は明弘に会えなかった。
『風邪ひいちゃったみたいなんだ。しーちゃんにうつすと大変だから、今日明日はおとなしくしてるよ。ごめんね』
スマホに届いたそのメッセージを見て慌てた紫音は、すぐに返事を送った。
『大丈夫? 熱とかあるの?』
『そんなには、ないと思う。体温計無いから測ってないけど』
『咳とか喉痛いとかは?』
『ちょっとだけ。でもそんなに辛くないよ。大丈夫』
なんとなく、明弘の『大丈夫』は信用できない。
辛い事を我慢する癖がついているような気がするのだ。
『本当に大丈夫? ごはん食べてる? 薬はある?』
……しばし待つが、返事が来ない。
『何か持って行こうか?』
返事を待ちきれず、紫音はメッセージを送った。
『レトルトのおかゆとか、薬とか。必要な物教えてくれれば持って行くよ』
『住所教えてくれば、ナビで行けるし』
すると、返事がきた。
『ホントに大丈夫。食べる物も薬もあるし』
『そう? じゃあ、ゆっくり休んでね。困ったときは教えてね。会わないで、玄関先に置いて来る事もできるんだからね』
『うん、ありがとう。早く治すよ』
やり取りを終え、紫音はフーッと息を吐いた。
「んー……まあ、大丈夫って言ってるからね……」
心配だが、しょうがない。
「行くって言えば、喜ぶかと思ったのになぁ……」
なんとなく、残念な気持ちになる。
『会いたいって言われると思ってた。ちょっと、浮かれすぎね。あーほら、あれだ、部屋片づけてないから恥ずかしいとか。うん、そういう事かもしれないよね。会いたくないとか、そういうことじゃなくて……』
もう気にしないようにしようと、テレビを点ける。しかし、
『……昨日、酔ってたよね。わたしもだいぶ飲んでたけど、アッキーもわたしのペースに合わせてたから。……昨日のは酔った勢いだったのかな……で、今日になって、後悔したとか?』
ついつい、考えてしまう。
『ていうか、わたしもだいぶ酔った勢いだったからなぁ……。そうだよ、アッキーの気持ち考える前に、自分の気持ちよ! どうするわけ? アッキーと付き合うの? 5歳違うんだよ? まあ、今は4歳だけど……もう、すぐにわたし25になるし。これまでずっと、弟のような気持ちで接してきたのに、急に男の人として見る事なんて……いや、それは、見られるね、うん。昨日、めちゃくちゃドキドキしたし、好きって言ってもらったの、すっごく嬉しかったし、今日会えないってわかって、めちゃくちゃがっかりしたし……』
と、言う事は、もちろん付き合うかというと……『でも……』と思ってしまう。
『アッキーはまだ大学生でハタチでしょう? 大学には同じくらいの齢の女の子がいっぱいいるわけだし、社会人になってからも、かわいい同僚とかできるだろうし……今まで、会えなかったからわたしの事をずっと思ってきたのかもしれないけど、会えたって事で、目標達成になるんじゃない? 満足したらやっぱり、他の女性にも目がいくだろうし……』
『初恋』という甘美なフィルター越しの自分は、長くはもたないと思う。
「はぁぁぁぁ……どうしよう……困っちゃったなぁ……」
紫音はパタリと横になり、目を閉じた。
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる