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ずっと一緒に
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『……あれ?』
意識を手放してしまっていたらしい紫音は、ハッと目を開けた。
『……えっと……』
身体が痺れているわけでもないので、一瞬だろう。そうでなければ、細いとはいえ筋肉質で長身の明弘の下敷きになっていたのだから、体中痛くなっていそうだ。
「アッキー? アッキー?」
ペチペチと背中を軽く叩くと、『ハッ!』と声を上げて目を開けた。
「うわ、なに? 俺、気絶してた?」
「いや、そうではないと思うけど……わたしも、なんかちょっと記憶が飛んでて……でも、一瞬だと思うよ?」
「ごめん、しーちゃんに乗っかっちゃって」
「あっ、んんっ……」
慌てて明弘が身体を離すと、繋がったままになっていた部分がズズッと引き抜かれ、紫音は思わず声を漏らした。
「うわ、ごめん、入れっぱなしだった!」
「だ、大丈夫、わたしも気づいてなかったからびっくりしただけで……」
そんなに馴染んでいたということかと、紫音は真っ赤になりながらアタフタと答えた。
「……大丈夫? 痛いとことかは……」
「無いよ、大丈夫」
「良かった」
そう言うと、明弘は紫音の首の下にグイグイと腕を差し込んだ。そして、抱きしめ、口づけをする。
「腕痺れちゃうよ?」
「大丈夫!」
「ん~、じゃあ、ちょっとだけ……」
明弘の胸に顔を埋め、目を閉じる。
『ああ、すっごく幸せ……満たされる……あ、そう言えば……』
ふと、さっきの事を思い出し顔を上げると、明弘と目が合った。
「ん? どうかした?」
「う、ううん、なんでも……」
見られているとは思っていなかったので、恥ずかしくなって一度視線をずらし……しかし、もう一度明弘を見た。
「あの……さっき『こういうのされるの初めて?』って聞かれたから……そういう事、気になるのかなって……」
「え? あー、無神経な事聞いちゃったよね……ごめん」
気まずそうに明弘が謝る。
「なんかあの時は、興奮しちゃってあんな事言っちゃったけど……しーちゃんが初めての事したいって欲求はあるんだけど、別に、それは重要じゃなくって……俺は告白もしてなかったんだから、しーちゃんが他の人と付き合ってたのは当たり前の事だって思ってるよ。……ごめんね、変な事言って」
「ううん……あの……こんな事言うのもなんだけど……その……こういう事って、一度しかしていないから……結構昔の事だし、何もかも、結構初めてな感じで……そりゃあ、初めてではなかったけど、なんていうか……ね?」
「そ、うなの? ……え? じゃあ俺の方がもう、そいつより多くしてるってこと?」
「まあ、そういう事だね」
「……そっかぁ~」
嬉しそうに、噛みしめるようにそう言うと、明弘はギュッと紫音を抱きしめた。
「ホントに、そんな事どうでも良かったんだけど……でも、嬉しい。だって俺、ずっと昔からしーちゃんの事、独り占めしたいって思っていたから。ずっと、一緒にいてね、しーちゃん」
「うん。一緒にいようね」
大きく、素敵に成長したけれども、やっぱり可愛いと感じる明弘にスッポリと抱きしめられて、紫音は心の底から幸せを感じ、目を閉じた。
意識を手放してしまっていたらしい紫音は、ハッと目を開けた。
『……えっと……』
身体が痺れているわけでもないので、一瞬だろう。そうでなければ、細いとはいえ筋肉質で長身の明弘の下敷きになっていたのだから、体中痛くなっていそうだ。
「アッキー? アッキー?」
ペチペチと背中を軽く叩くと、『ハッ!』と声を上げて目を開けた。
「うわ、なに? 俺、気絶してた?」
「いや、そうではないと思うけど……わたしも、なんかちょっと記憶が飛んでて……でも、一瞬だと思うよ?」
「ごめん、しーちゃんに乗っかっちゃって」
「あっ、んんっ……」
慌てて明弘が身体を離すと、繋がったままになっていた部分がズズッと引き抜かれ、紫音は思わず声を漏らした。
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「だ、大丈夫、わたしも気づいてなかったからびっくりしただけで……」
そんなに馴染んでいたということかと、紫音は真っ赤になりながらアタフタと答えた。
「……大丈夫? 痛いとことかは……」
「無いよ、大丈夫」
「良かった」
そう言うと、明弘は紫音の首の下にグイグイと腕を差し込んだ。そして、抱きしめ、口づけをする。
「腕痺れちゃうよ?」
「大丈夫!」
「ん~、じゃあ、ちょっとだけ……」
明弘の胸に顔を埋め、目を閉じる。
『ああ、すっごく幸せ……満たされる……あ、そう言えば……』
ふと、さっきの事を思い出し顔を上げると、明弘と目が合った。
「ん? どうかした?」
「う、ううん、なんでも……」
見られているとは思っていなかったので、恥ずかしくなって一度視線をずらし……しかし、もう一度明弘を見た。
「あの……さっき『こういうのされるの初めて?』って聞かれたから……そういう事、気になるのかなって……」
「え? あー、無神経な事聞いちゃったよね……ごめん」
気まずそうに明弘が謝る。
「なんかあの時は、興奮しちゃってあんな事言っちゃったけど……しーちゃんが初めての事したいって欲求はあるんだけど、別に、それは重要じゃなくって……俺は告白もしてなかったんだから、しーちゃんが他の人と付き合ってたのは当たり前の事だって思ってるよ。……ごめんね、変な事言って」
「ううん……あの……こんな事言うのもなんだけど……その……こういう事って、一度しかしていないから……結構昔の事だし、何もかも、結構初めてな感じで……そりゃあ、初めてではなかったけど、なんていうか……ね?」
「そ、うなの? ……え? じゃあ俺の方がもう、そいつより多くしてるってこと?」
「まあ、そういう事だね」
「……そっかぁ~」
嬉しそうに、噛みしめるようにそう言うと、明弘はギュッと紫音を抱きしめた。
「ホントに、そんな事どうでも良かったんだけど……でも、嬉しい。だって俺、ずっと昔からしーちゃんの事、独り占めしたいって思っていたから。ずっと、一緒にいてね、しーちゃん」
「うん。一緒にいようね」
大きく、素敵に成長したけれども、やっぱり可愛いと感じる明弘にスッポリと抱きしめられて、紫音は心の底から幸せを感じ、目を閉じた。
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