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第四章

卒業パーティー  

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 王立クリスタル学園の卒業式が、厳かに行われた。
 そして同日の夕方からは、生徒会主催の卒業パーティーだ。
 会場は学園の大ホールで、参加するのは卒業生(パートナーを一名伴っても良い)、教師、学園関係者、生徒会役員等である。
 卒業生達は、卒業式よりもこのパーティーを楽しみにしていて、軽食や飲み物が用意され、楽団が音楽を奏で、ダンスや会話を楽しむのだ。
 


「リザ! 甘い物がもう無くなりそうよ。まだあるかしら」
「追加を依頼しているけれど、もう少し時間がかかるかと……それにしても無くなるのが早すぎない? これでも例年の倍以上用意したのに」
「リザ様のお菓子ですから、普段は甘い物を食べないという方も手に取っているようです。それに王妃殿下がとてもお気に召しているようで、それにつられて来賓の方々も……」
「……予想が甘かったわ……でも、軽食の方はまだ充分あるのよね?」
「ええ、そっちは大丈夫よ。まあ、ミートパイはすぐに無くなったけれどね」
「それも追加で頼んでいるわ。それじゃあ時間稼ぎの為に、楽団に盛り上がる曲を演奏してもらえるように頼んで、皆さんをダンスの方に誘導しましょう」
「エリザベート様、私が伝えて参ります」
「お願いね、ルーク」

 会が盛り上がっている中、生徒会役員達は忙しく働いている。

「生徒会の女子は、色違いの揃いのドレスで合わせたんだね、良く似合っているよ。お姫様、一曲お付き合い願えないかな?」

 そんな忙しい中、ニコニコとやって来たディランを、エリザベートはキッと睨む。

「お褒めいただいてありがとうございます、ディラン様。でも今そんな余裕はございませんので……あ、丁度良いですわ、あのあたりにいらっしゃる方々に『一緒にダンスしてくれるお姫様はいないかな』とか言って、お菓子から引き離していただけません?」
「えぇ……俺はリザと踊ろうと……」
「追加のお菓子がまだ届かないのです。さあ、早く!」
「もう……人使いが荒いなぁ……」

 ブツブツ文句を言いながらも指示に従うディランは、エリザベートの思惑通り、ごっそりと女生徒をダンスフロアの方へと誘導するのに成功している。

(さすがディランね。さてさて、あと問題はないかしら? 陛下と妃殿下は貴族の方々とご歓談中ね。レオンハルトはルチアとオリバーと一緒に、取り巻き達に囲まれているから害はないし、他は……皆、楽しそうにしているわ。ダンスの方も盛り上がってきたし、良いパーティーね。あ、追加のお菓子が届いたわ。公爵家と城の料理人が協力して作りまくったクッキーにパウンドケーキにシュークリームにパイ、大人気ね。店を出す事を、本気で検討した方がいいわね)

 そんな事を考えつつ、無事にパーティーを終える為に、あれこれ気を配るエリザベートだった。




「それではここで、卒業生代表としてレオンハルト・アレキサンド殿下にお言葉を頂きます」

 パーティーも終盤を迎え、来賓や学園長からの挨拶があり、最後に前生徒会長の話となった。
 進行役のテオールに紹介され、レオンハルトが壇上に上がる。

「今日は我々の為にこのような会を用意してくれた事、心から感謝する。学園での3年間は…………」

 レオンハルトの声を聞き流しながら、エリザベートはフーッと息を吐いた。

(はぁ……無事に終わった……物凄く、疲れたわ。片付けは業者がやってくれるから良いとして、一度生徒会室に集まってサッと反省会をするという事だったわね。ああ、早く帰ってゆっくりお風呂に浸かりたい。そうだわ、今日はラベンダーの薬湯にしてもらいましょう。そうすればぐっすり眠れて疲れも取れるはず)

「…………と、挨拶はこれで終わるが」

(あら、考え事をしていたうちに終わりみたいね。反省会では、せめて皆の疲れを癒せるように、心を込めてお茶を入れましょう)

「この場で、発表したい事がある!」

(……ん?)

「アレキサンドライト王国王太子であるレオンハルト・アレキサンドは、エリザベート・スピネル公爵令嬢との婚約を破棄する!」
「…………ええっ???」

 突然の事に、すぐには状況を飲み込めなかったエリザベートだったが、沈黙ののち、驚きの声を上げた。

「な……なに……何をいきなり……」
「エリザベート・スピネル! そなたがルチア・ローズ男爵令嬢に対して行った数々の嫌がらせ、全て把握しているぞ! そなたのような悪女は、国母となるに相応しくない。よって私はそなたとの婚約を破棄し、ルチア・ローズを婚約者とする!」
「え……突然そんな……えぇぇ……」

 注目を浴び、エリザベートは小さく呻きながら唇を噛んだ。

(なんなの? もう既に婚約破棄できたから、卒業パーティーでの断罪イベントなんて無いものだと油断していたわ! もおっっ、このバカ王子がっ!)

 ギュッと目を閉じて気合を入れて……エリザベートはカッと目を見開いた。

(そういう事なら、やってやろうじゃない。このわたしに喧嘩を売った事、後悔させてやるわ!)


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