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第7話

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「ミラ・・・本当に寝室は別々なのか?」

「ええ、先日お話した通りです。
ご理解いただけない場合は、離・・・「いや!大丈夫だ」」

「別邸の改装が終了すればクラリス様とノアも越してきます。
しばしご辛抱くだされば、あちらでお過ごしいただけますので」

「・・・・・・君は、その、平気なのか?
私が別邸で過ごしても・・・・・・」

「はい」

「ミラ・・・君は、私の事を・・・・・・。
いや・・・何でもない」

夜になると、こうして旦那様が私の寝室に顔を出すのは何度目になるだろう。

「奥様、ハーブティーをお持ちしました」

ノックの音と共に部屋へ入ってきたアニーの顔を見てホッとする。

「ありがとう、アニー」

「お疲れのようでしたので、ハーブティーです」

「あなたが淹れてくれるハーブティーを飲むと、リラックスして眠れるの。
今日は忙しい一日だったから助かるわ」

「それは良かったです。
ごゆっくりお休みください」

「・・・・・・そうか、もう休むんだな。
じゃあ、私も行くとしよう」

旦那様は私の頬に口付けすると、おやすみと言って、扉を開けて主寝室へと戻った。

すると、アニーが旦那様が今閉めたばかりの扉にガチャっと鍵をかける。
その音の大きさに、思わずアニーと目を合わせて笑ってしまった。




2週間前にお屋敷に戻ってから、私は旦那様にいくつか要望をした。
一つでも要望に添えない場合には、離婚することを条件に。



・侍女のアニーと護衛のカイを新たに私の専属にする。

・私をこの屋敷の女主人であることを使用人に再認識させる。

・夜会、お茶会には本妻である私のみが出席する。 

・ロージーの前、及び夜会など人前では仲睦まじく接する。

・寝室を別にする。

・ロージーが結婚後には離婚する。


クラリス様を知る古くからの使用人も居る中で、本妻と愛人の違いをはっきりさせておきたかった。
私はまだしも、ロージーが蔑ろにされては堪らないから。


・クラリス様とノアの立場を尊重する。

・旦那様が別邸で過ごすことに関して一切苦言を呈さない。

・私は愛人は作らない。
又それを誤解させるような行動を取らない。

私も自分にルールを課すことにした。



すでにスタンリー伯爵家で作成した契約書を旦那様に渡すと、渋い顔をして考え込み、“寝室を別にする”“ロージーが結婚後には離婚する”を変更できないか、かなり粘られた。

どうしてその二つに拘るか分からなかった。

王太子殿下の側近であり次期エヴァンス公爵の旦那様が、名門といわれるスタンリー伯爵家との縁を切って、男爵令嬢の愛人との再婚は外聞が悪くて踏み切れないのは分かる。

でも、愛する女性クラリス様をやっと別邸に迎えるのに。
ロージーが成人、結婚する頃なら再婚するには寧ろちょうどいい。


『別邸のお母様の寝室はとっても広いんだ!!』
ノアだって、そう言ってた。

クラリス様とノアには二回程会った。

一回目は旦那様に正式に紹介され、二回目は別邸の改装を決める為に訪れた。

旦那様と三人で寄り添って、楽しそうに壁紙や家具を決めていた。



結局旦那様はその場で契約書にサインをし、私達の関係性は大きく変わった。



「かあしゃま!!」

「ロージー、どうしたの?」

「にぃに、くやいす!」

「そう、じゃあ、行きましょうか」

そういえば、カーペットやカーテンを決めるから二人が来る。って旦那様が話していた。

手を広げて抱っこをねだるロージーを抱き上げて歩き出す。

階段の上から見下ろすと、ちょうど到着したクラリス様とノアが旦那様に抱きついていた。


慣れなきゃいけない。

わかってる。


でも、まだ胸の辺りが苦しくなる。


ロージーをギュッと抱きしめて階段を下りると、ロージーが走り出し、私は笑顔で二人を迎えた。













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