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第32話 ローリー・ディクソン
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「宰相、これが目的だったんだろ」
「はい?」
陛下には、いつも驚かせられる。
確かに・・・・・・その通りだった。
2年に一度訪れる隣国で、王女殿下がわが国に興味を持ちそうな話を少し、ほんの少しずつしていた。
花好きな王女殿下に花祭りの話をしたり、一流のデザート職人の話、王女殿下の愛読書の小説家が友人である話、学園の制服が3種類から選択でき、諸外国から留学生が集まり国際色豊かな話等・・・。
あることを期待してーー
そして、王女殿下が15歳になり、この度わが国に1年間留学する運びになった。
もちろん、王女殿下が慕うロージーもやって来る。
カイからの便りや、2年に一度はミラとロージーには顔を合わせて、ロージーが(表向きは)元気にやっているのは知っていた。
でも、あの屋敷から離れて、違う世界を見て知って欲しかった。
あそこだけが、ロージーの世界じゃない。
ディクソン侯爵家には、騎士団長が騎士団に欲しがる程の剣の技を持つ護衛騎士が居る。
毎朝、鍛練を怠らないロージーなら興味を持つはず。
ただ、この護衛騎士ジェイミー・フォーブスは黒髪、ヘーゼルアイの見目麗しい22歳。
こんな男だから、そりゃモテる。
たが、田舎の男爵3男のこの男は人見知りが激しく、女性とも話せない。
話したくても、緊張で固まるらしい。
正直、15歳の可憐な美少女ロージーに引き合わせるのは気が進まないが、ロージーはジェイミーから剣を学べることに飛びつくだろう。
それに、うちには素晴らしい温室があり、年中様々なフルーツ狩りが楽しめる。
料理人は超一流で、リサーチ済みのロージーの好物はお手のものだ。
だから、寮生活を望んでいたはずのロージーは、すぐに考えを変更した。
準備していた部屋も気に入ったようで、何よりだった。
ミラは3ヶ月に一度、ロージーに会いに侯爵家にやって来る。
最初、敷地内にある温室を見た時には驚いていた。
ミラがこぼした言葉を、まさか本当に実行するとは思わなかったらしい。
ロージーと二人でフルーツ狩りを楽しんで、時には料理人にフルーツのデザートをリクエストしている。
二人の笑顔を見られただけで、温室を作った甲斐があったというものだ。
ある日屋敷で寛いでいると、ロージーが息を切らしてやってきた。
「おじさま!お母様が今回は少し早くこちらに来るみたいよ!」
それを聞いて、すぐにスケジュール調整を行ったのは言うまでもない。
ミラはーー会うたびに美しくなっている。
そんなミラに気づかれないように、会話の最中にこっそりと見惚れていてる。
決して話を聞いていないわけではない。
「・・・・・・ローリー?人の話聞いてる?」
「・・・・・・ああ、勿論だ。
ただ、ちょっと、もう一回いいか?」
「あのね、離婚することになったの」
「離婚!?」
今回、ミラが予定よりこちらへ早く来たのは、ロージーの意見を聞くためだった。
公爵家嫡男であるノアの提案により、婚約者であるソフィア嬢に次期公爵夫人として指導を行い、ロージーが成人となる16歳を過ぎてから離婚してはどうかと。
ロージーは賛成してくれて、離婚に向けて準備を進めるらしい。
ただ、ロージーは今のままエヴァンス公爵家に残るか、ミラと共に公爵家を出るかはわからないらしい。
ロージーの気持ちを思うと、簡単には喜べなかった。
でも、このままミラが公爵家に残り続けたとしても、ロージーはきっと複雑だろう。
結婚を早く決めて、早くミラを安心させて、そんな焦りが生まれる可能性だってある。
いずれ、離婚は避けられない。
ただ早いか遅いかの違いだ。
1年・・・・・・
俺は、かねてより準備していた事を行動に移し始めた。
宰相補佐官には2年前から、徐々に仕事を増やしていた。
今では、俺がいなくても難なく回る。
そんな段階まで来ていた。
後は、面倒なあの方に、話を通すだけ。
「陛下・・・・・・」
陛下には、かなり渋られた。
「あと、2年。その後はお目付け役として残留という形を取って。
・・・大丈夫。もうこき使わないから」
信用するしか・・・ないだろう。
王都のど真ん中の、最新の建物の最上階に会社がある。
投資家としての、もう一つの顔。
実際に、ミラの工房『ロージー』以外にも、いくつか投資している。
最近では、王都でのフルーツ栽培。
自分の敷地内の温室の噂を聞きつけた者から話が上がった。
主に、貴族向けの高級フルーツ、又はレストランに卸す用だ。
あれから1年。
今日は、これから客人に会う。
手紙のやり取りをしていた、大切な客人。
ミラ・・・・・・。
落ち着かず大きな窓から王都の街を見渡していると、
扉がノックされた。
「はい?」
陛下には、いつも驚かせられる。
確かに・・・・・・その通りだった。
2年に一度訪れる隣国で、王女殿下がわが国に興味を持ちそうな話を少し、ほんの少しずつしていた。
花好きな王女殿下に花祭りの話をしたり、一流のデザート職人の話、王女殿下の愛読書の小説家が友人である話、学園の制服が3種類から選択でき、諸外国から留学生が集まり国際色豊かな話等・・・。
あることを期待してーー
そして、王女殿下が15歳になり、この度わが国に1年間留学する運びになった。
もちろん、王女殿下が慕うロージーもやって来る。
カイからの便りや、2年に一度はミラとロージーには顔を合わせて、ロージーが(表向きは)元気にやっているのは知っていた。
でも、あの屋敷から離れて、違う世界を見て知って欲しかった。
あそこだけが、ロージーの世界じゃない。
ディクソン侯爵家には、騎士団長が騎士団に欲しがる程の剣の技を持つ護衛騎士が居る。
毎朝、鍛練を怠らないロージーなら興味を持つはず。
ただ、この護衛騎士ジェイミー・フォーブスは黒髪、ヘーゼルアイの見目麗しい22歳。
こんな男だから、そりゃモテる。
たが、田舎の男爵3男のこの男は人見知りが激しく、女性とも話せない。
話したくても、緊張で固まるらしい。
正直、15歳の可憐な美少女ロージーに引き合わせるのは気が進まないが、ロージーはジェイミーから剣を学べることに飛びつくだろう。
それに、うちには素晴らしい温室があり、年中様々なフルーツ狩りが楽しめる。
料理人は超一流で、リサーチ済みのロージーの好物はお手のものだ。
だから、寮生活を望んでいたはずのロージーは、すぐに考えを変更した。
準備していた部屋も気に入ったようで、何よりだった。
ミラは3ヶ月に一度、ロージーに会いに侯爵家にやって来る。
最初、敷地内にある温室を見た時には驚いていた。
ミラがこぼした言葉を、まさか本当に実行するとは思わなかったらしい。
ロージーと二人でフルーツ狩りを楽しんで、時には料理人にフルーツのデザートをリクエストしている。
二人の笑顔を見られただけで、温室を作った甲斐があったというものだ。
ある日屋敷で寛いでいると、ロージーが息を切らしてやってきた。
「おじさま!お母様が今回は少し早くこちらに来るみたいよ!」
それを聞いて、すぐにスケジュール調整を行ったのは言うまでもない。
ミラはーー会うたびに美しくなっている。
そんなミラに気づかれないように、会話の最中にこっそりと見惚れていてる。
決して話を聞いていないわけではない。
「・・・・・・ローリー?人の話聞いてる?」
「・・・・・・ああ、勿論だ。
ただ、ちょっと、もう一回いいか?」
「あのね、離婚することになったの」
「離婚!?」
今回、ミラが予定よりこちらへ早く来たのは、ロージーの意見を聞くためだった。
公爵家嫡男であるノアの提案により、婚約者であるソフィア嬢に次期公爵夫人として指導を行い、ロージーが成人となる16歳を過ぎてから離婚してはどうかと。
ロージーは賛成してくれて、離婚に向けて準備を進めるらしい。
ただ、ロージーは今のままエヴァンス公爵家に残るか、ミラと共に公爵家を出るかはわからないらしい。
ロージーの気持ちを思うと、簡単には喜べなかった。
でも、このままミラが公爵家に残り続けたとしても、ロージーはきっと複雑だろう。
結婚を早く決めて、早くミラを安心させて、そんな焦りが生まれる可能性だってある。
いずれ、離婚は避けられない。
ただ早いか遅いかの違いだ。
1年・・・・・・
俺は、かねてより準備していた事を行動に移し始めた。
宰相補佐官には2年前から、徐々に仕事を増やしていた。
今では、俺がいなくても難なく回る。
そんな段階まで来ていた。
後は、面倒なあの方に、話を通すだけ。
「陛下・・・・・・」
陛下には、かなり渋られた。
「あと、2年。その後はお目付け役として残留という形を取って。
・・・大丈夫。もうこき使わないから」
信用するしか・・・ないだろう。
王都のど真ん中の、最新の建物の最上階に会社がある。
投資家としての、もう一つの顔。
実際に、ミラの工房『ロージー』以外にも、いくつか投資している。
最近では、王都でのフルーツ栽培。
自分の敷地内の温室の噂を聞きつけた者から話が上がった。
主に、貴族向けの高級フルーツ、又はレストランに卸す用だ。
あれから1年。
今日は、これから客人に会う。
手紙のやり取りをしていた、大切な客人。
ミラ・・・・・・。
落ち着かず大きな窓から王都の街を見渡していると、
扉がノックされた。
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