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【番外編3】きみも星 前編
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4月の初め。
薄紅色のアーモンドの花が、庭のあちこちで咲き誇る、ヘイミッシュ魔法学園に。
春季休暇を終えた生徒たちが、賑やかに戻って来た。
「ベル、久しぶり! 休暇はどうだった?」
寮の部屋に入った途端、ステラ・リードが弾んだ声をあげる。
「楽しかったよ、ステラ! おばあさまたちと買い物に行ったり、パーシーと音楽会に行ったり!」
メイベル・ハートリーも、笑顔で返した。
「へーえ、音楽会? また途中で、抜け出したとか?」
にやりとベルに問いかけると、
「ちゃんと、最後までいました! パーシーが『終わった』って勘違いして、曲の途中で『ブラボー!』って叫んじゃったけど」
くふっと楽しそうに、恋人の『早とちりエピ』を披露して来る。
ベルは彼の早とちりを、バカにしたり嘲笑ったり、絶対にしない。
『だって、あれはパーシーの個性だし?』と、男前に胸を張る。
パーシー先輩、ほんっと、いい彼女見つけたね!
ベルの惚気を聞いてたら、何だか急に、アレクシスの顔が見たくなって。
「ちょっとだけ、温室行ってくるね!」
荷解きは後回し。
ステラは、部屋を飛び出した。
回廊を抜け、ピンク色の屋根のようなアーモンドの花の下、中庭を横切ると。
廊下の端に、温室が見えて来た。
『今日は水曜じゃないし、約束もしてないけど』
何となく会える気がして、ガラス張りのドアをそっと開くと、
「あっ、ステラ先輩―じゃなくて、ステラ!」
笑顔で振り向いたのは、赤毛のメガネ男子。
「えっ、アレク? 何でまた、弟のフリしてるの?」
きょとんと尋ねると、
「『変色魔法薬』が、1回分残ってたから。ステラをびっくりさせたくて!」
にっこり返して来た。
その笑顔に、何だか違和感を感じて。
メガネの奥をじっと見る。
口角はキレイに上がっているのに、黒い瞳は笑っていない。
ただ冷静に、観察してるだけ。
アレクはこんな目で、わたしを見ない。
いつも嬉しそうに、夢見るみたいに笑いかけてくれる。
「あなた……アレクじゃない。本物のケネスでしょ?」
すっと指で差しながら、ぴしりとステラが指摘する。
「えっ、マジで……?」
ぱちりと、黒い目を見開いて。
「何でこんなにすぐ、分かったの?」
偽アレクが、面白そうに聞いて来た。
「分かるよ。だって……あなたより」
ストレートの金髪をばさりと払い、きりっと緑の瞳で見据えて。
「あなたの真似したアレクの方が、百万倍可愛いから!」
『先輩なめんな』と、ステラは言い切る。
「かっけー!」
ひゅうっと口笛を吹いてから、
「―だってさ、アレク兄さん?」
ケネスがにんまり、温室の奥に声をかけると。
植物棚の陰から、真っ赤になった氷のプリンス―アレクこと、アレクシス・ブロワが現れた。
薄紅色のアーモンドの花が、庭のあちこちで咲き誇る、ヘイミッシュ魔法学園に。
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「ちょっとだけ、温室行ってくるね!」
荷解きは後回し。
ステラは、部屋を飛び出した。
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『今日は水曜じゃないし、約束もしてないけど』
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「あっ、ステラ先輩―じゃなくて、ステラ!」
笑顔で振り向いたのは、赤毛のメガネ男子。
「えっ、アレク? 何でまた、弟のフリしてるの?」
きょとんと尋ねると、
「『変色魔法薬』が、1回分残ってたから。ステラをびっくりさせたくて!」
にっこり返して来た。
その笑顔に、何だか違和感を感じて。
メガネの奥をじっと見る。
口角はキレイに上がっているのに、黒い瞳は笑っていない。
ただ冷静に、観察してるだけ。
アレクはこんな目で、わたしを見ない。
いつも嬉しそうに、夢見るみたいに笑いかけてくれる。
「あなた……アレクじゃない。本物のケネスでしょ?」
すっと指で差しながら、ぴしりとステラが指摘する。
「えっ、マジで……?」
ぱちりと、黒い目を見開いて。
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「分かるよ。だって……あなたより」
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『先輩なめんな』と、ステラは言い切る。
「かっけー!」
ひゅうっと口笛を吹いてから、
「―だってさ、アレク兄さん?」
ケネスがにんまり、温室の奥に声をかけると。
植物棚の陰から、真っ赤になった氷のプリンス―アレクこと、アレクシス・ブロワが現れた。
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