時の扉を開けて~初恋をこじらせたイケメン令嬢&早とちり令息の時間旅行~

壱邑なお

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【番外編3】きみも星 後編

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「アレク? 何でそんなとこに……!?」
「すまない、ステラ! ケネスが『自分からも謝罪したいから、見守ってて欲しい』と」
「謝罪……? あれが!?」
 横目でケネスを見やると、『てへっ』と笑って来る。
 いや全然、反省してないし!

 とりあえず、ケネスは放置して。
「それでアレク、お父様とはお話出来たの?」
 休暇中、ずっと気になっていた事をたずねると、
「出来たよね、兄さん? 『魔法道具開発クラブ』に入る許可も、貰もらったし!」
 すかさず弟が、口を挟んで来た。

「ちょっと! 私はアレクに聞いてるの!」
「えーっ? 俺が答えても一緒でしょ? ほらアレクとは、双子みたいにそっくりだし!」
 確かに、目と髪の色以外は、背格好も顔もよく似てるけど。
「中身が全然違うから! 」
 バチバチ火花を散らす、ステラとケネス。

「何だか、ホントの姉弟みたいだ……」
 少しうらやましそうなアレクの手には、『やまびこ草』の鉢植えが。
「あれっ―その子、あの時の?」
「うん」
 ステラの問いかけに、ほわりとうなずいて。
 金色の葉にちょんっと魔力を注ぐと、
『アレク』
 反響した声が、温室中に広がった。

 ひーっ、めちゃめちゃ恥ずかしい! 
 でもスーパースペシャルレアな、はにかみ笑顔のアレクが、それ以上に尊い!

 心の中で合掌するステラの耳元で、
「アレク兄さん、すっごく大事に世話してたよ? 『ステラおはよう』とか『おやすみステラ』とか、甘ーい声で言いながら」
 ケネスがにんまり、極秘情報をささやいた。

 わたしの名前を? 甘い声で……!?
 そういえば―この子の葉っぱ、めっちゃツヤツヤ元気そう!
 素焼きの鉢も、高級そうな緑の鉢に変わってるし。
 そんな大事に、してくれてたの?

 何だかふわふわした気持ちで、アレクとやまびこ草を見つめていると。
「あっ、そろそろ行かなきゃ―またね、『ステラお姉様』!」
 最後に何気なく、爆弾を投下したケネスが、温室から走り去って行く。
 お姉様……? それって、『未来の』的な?
 
「ケネス、あいつ―! 弟がまた不躾ぶしつけに、すまない!」
 あわあわと、謝罪して来るアレクに。
「あっ、ううんっ、嬉しかったよ! えっと、ほら―ベルが後輩に『お姉様』って呼ばれるの、ちょっと憧れてたし!」
 こちらも、あわあわ返したら。

「そっか、なら良かった……ケネスは気が利くし。俺と違って、誰からも好かれるから」
 少し寂しそうな笑顔で答える、氷のプリンス。
 いやさっき私、そのケネスと―あんなバチバチしてましたけど?

「そう、なの? わたしは、ちょっと不器用でも……優しくて植物を大事にする。星みたいな青い目をした人の方が、好きだけど?」
 この前話した後に、思い出した。
 初めて会った時、私もアレクの目を『星みたい』って、思ったことを。
 そのアイスブルーの瞳に、今伝えたい。
 
「好き……って言った?」
「言ったよ?」
「ちょっ、ちょっと! ちょっとだけ、待って……!」
 ボンッと真っ赤になったアレクが、大急ぎで取り出したのは、もうひとつの『やまびこ草』。
 水色の鉢に植えられた、双子みたいにそっくりな葉っぱに、氷のプリンスが魔力を注ぐ。
 
『大好きだよ、ステラ』
 葉っぱが記憶したアレクの声が、そっと繰り返して来た。
 何度も、何度でも。

「ちゃんと俺から言おうって、準備してたのに……」
 少しねた声が、耳をくすぐる。
 思っていたよりずっと温かい、氷のプリンスの腕の中で。
「早い者勝ち」
 ステラはくすりと、幸せそうに笑った。 
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