オメガバース

おもち

文字の大きさ
上 下
1 / 1

無題

しおりを挟む
「アメリカから転校してきました。レオです。よろしくお願いします」

自己紹介にもあった通り、アメリカから来たと話す彼は少しだけ日本語がぎこちない。と言っても日常生活に困難がありそうな感じでもなく、少し訛っていて可愛らしいと思う程度だ。

彼が挨拶の最後ににこりと微笑むとクラス中の殆どのアルファが小さく悲鳴をあげていた。なんせ彼はオメガの中のオメガ。アルファだけでなくベータまでもを引きつける力を持つ。(僕はアルファだが、それなりに耐性がついているので彼の一挙一動に騒いだりはしない)
その証拠としてこの教室は彼の甘いフェロモンの匂いに加えて、多数のアルファのフェロモンの匂いが充満している。他のアルファの強いフェロモンの匂いはアルファにとって威圧的な役割もあるので自分自身としてもあまり心地のいい空間ではないが、何より彼が心配である。

「じゃあレオ。席は先生の前の─」
「ユウトの隣がいいです。教科書も見せてもらいたいし他にも教えてもらいたいので」
「知り合い?」
「幼馴染です」
「それなら隣に」

やっほーと手を振りながら僕の隣にレオが座る様子を、クラス中の全員に注目されている。

「みんな見過ぎだから僕じゃなくて前見て」
「…き、君が、可愛くて」
「はは、ありがとー」

視線をたくさん向けられることに慣れていない僕とは裏腹にレオは慣れたように対応している。不快ではないのだろうか。心配だ。






「ユウ、一緒にご飯食べよ」
「いいけど…いいの?」
「なにが?」
「お誘いたくさんあるでしょ」
「興味ない。崇められるのは悪くないけど」

そう言って彼はいたずらっぽく笑うと、一緒に食堂へと向かい、僕はレオと一緒に食事をする事となった。

「ユウ、どうかした?」
「…視線が痛いなと」
「ああ」

チラッと周りを見たレオは彼らに向かって笑顔で手を振る。

「ごめんね、僕が可愛すぎるせいで」
「あんま自分でそういうこと言わないよ」
「でもレオも僕のこと可愛いと思うでしょ?」
「…まあ」
「あはは、珍しく素直じゃん」

そう言いながらレオは食事を続ける。

「うん、やっぱ良いね。ジャパニーズフードは食堂でもこんなに美味しいなんて」
「そう?あっちではなに食べてたの?」
「ピザとか、フライドチキンとか。三日で飽きるよ」

その後もレオは向こうでの学校生活について色々と話してくれた。楽しかったことも、大変だったことも。
話を聞くに、向こうでもたいそうモテたようで苦労していたらしい。

「でもコッチ来たからダーリンが守ってくれるから安心だね?」
「ダーリンって…」
「ハニーって呼ばれたほうが良かった?」

レオは僕をからかうようにくすくすと笑う。
本気なのか、冗談なのか、分かりにくくて。そういうところがレオのズルいところだと思う。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

転生少女は異世界でお店を始めたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,295pt お気に入り:1,713

神田弁護士物語

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

異種族キャンプで全力スローライフを執行する……予定!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,649pt お気に入り:4,744

可笑しなお菓子屋、灯屋(あかしや)

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:852pt お気に入り:1

彼女たちの恋愛対象:シーズンⅢ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:3

あなたの世界で、僕は。

BL / 連載中 24h.ポイント:2,390pt お気に入り:56

処理中です...