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第2章 私は学園で恋をする

殿下が怖いです

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 最後の確認事項を共有し、解散目前となった所で誰かが生徒会室にやってきました。少し息を乱している銀糸の彼は―――言うまでもなくクリストファー様です。



「遅れてすみません、ゼノ」

「いや、大丈夫だ。ユリウスのやつ相変わらず過保護だな。ハハハハ!」



 クリストファー様も生徒会役員だったのですね。じっと見る私の視線に気がついたクリストファー様は、私達一年生に自己紹介した後、私に近づいて来ました。じわじわと頬に赤みが差します。



「ジゼル嬢、昨日は大丈夫でしたか?」

「はい、助けて頂き本当にありがとうございました。昨日は不躾に申し訳ありません」

「気にしないでいいですよ。また何かあったら必ず僕に言って下さいね」



 困った様に微笑むクリストファー様を直視出来ず、礼をした後そのまま自然に斜め下に視線を外しました。



「なんだなんだ?ウェリスと知り合いなのか?」

「えぇ、そんな所ですよ」

「へぇ」



 ニヤニヤと口元を緩めながらクリストファー様と私を交互に見る会長。副会長は心底どうでも良さそうですが、そちらの方が私の心臓的にも有難いです。



「ジゼル嬢は副会計兼副書記でしたっけ?僕は会計兼書記ですから、よろしくお願いしますね。早速仕事内容を説明しても―――「今日はもう宜しいですか」」



 クリストファー様の言葉に被せ、自身の背中に私を隠すように前へ出たジルフォード殿下。殿下は突き放すような言い方で遮っていたので、私は眉間に皺を寄せてしまいます。クリストファー様は目を僅かに開き、直ぐにまた苦笑に戻りました。

 確かにこれからお話する約束をしていましたし、それも国王様からの案件ですから、外す訳にはいかないことは分かっています。ですが、クリストファー様の話の腰を折る事は無い筈です。

 クリストファー様は何も気にしていない様子で、「そうですか、すみません殿下」と腰を追って1歩下がりました。



「リズ、行こうか。……。失礼します」

「……は、い………失礼致しました」



 殿下の半歩後ろを着いていきます。表情は見えませんが、何だかジルフォード王子の雰囲気がトゲトゲと険悪なムードを醸し出しています。私は何故殿下がこうなるのか分かりませんでした。

 王族専用サロンに入り、向き合ってソファーに腰掛けます。紅茶を1口口に含んでから息をゆっくり吐いた殿下は、微笑んでいますが目が笑っていません。怖いです。



「まず要件をすまそうか。これが父上からリズへのものだよ」



 受け取ったのは1枚の手紙。王家の紋章の入った封蝋で閉じられた封筒を開け、便箋を取り出してその場で確認します。その内容は、魔法省で準研究員として働いてみないか、というお誘いでした。とても魅惑的な勧誘に気持ちが華やぎますが、学生の身で宜しいのでしょうか。



「殿下、見て頂いて良いですか……?」



 殿下は手紙にざっと目を通し、顎元に手を当てて考え込みました。やはり不味いでしょうか。



「……私はリズがやって見たいのなら、いいと思うよ」



 それにしては歯切れの悪い回答ですが、本当に大丈夫なのでしょうか……?魔法省に勤めたいと密かに夢を抱いているのは事実ですから、この経験は大きくプラスされますので、挑戦してみたいと思います。

 はい、と返事を返すと、にこりと微笑んだ殿下。
 殿下のスイッチ入りました。圧が私にのしかかります。



「で、本題だけれど」



 あ、こちらが本題になったのですね。



「クリストファー=レヴィロとはいつから知り合いなのかな?」

「……つい先日ですわ。わたくしが不注意で怪我をしそうになった所を、偶通りかかったレヴィロ様に助けて頂いたのです」

「へぇ」



 この場の気温が2、3度下がったような気がしました。春になって暖かい筈なのに鳥肌が立ちます。殿下、魔力が微妙に漏れ出しているので引っ込めて下さい。殿下のそれは洒落になりませんから。

 私が怖がったのを気がついたのか、深呼吸をしたジルフォード殿下は、私の紫の瞳を真っ直ぐ射抜きます。その視線は、嘗て無い程に熱誠を含んでいました。私は背筋を伸ばして殿下の言葉に注意深く耳を傾けます。













「――――――――――――――――――」





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