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First Ep - 想定外の新規客
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レンタル彼氏を務めるにあたっての最重要事項。
『お客様と恋愛しないこと。』
キャストだって一人の人間なのだから、好みの顔や気の合う女性と出会えば、心が引かれることもある。
常連客と何度も会って話し合えば、情が芽生えることもある。
そうやって幾人の同僚がトラブルを起こし、退職する様を近くで見てきた。
オレだって男だし、客の女性を可愛いと思うことも、抱きたいと思うこともある。
けど、思ってもそこまで。
今の立場や収入を捨ててまで、お客と本気の恋愛をしたいとは思えなかった。
高校卒業後、レンタル彼氏「Love Boy」に勤めて早5年、この仕事一本で生活するのに困らないほど、新規客もリピーターもいる。
大変なことはあれど、尽くせば尽くしただけお客から喜んでもらえるこの仕事が楽しいとも思う。
順風満帆な今、お客と恋愛してトラブルなんて絶対に起こしたくない。
そもそもこんなサービスに申し込む客なんて、どこか難ありなわけで。
それが本人自身にあるのか環境にあるのかはそれぞれだろうけど、どちらにしても恋愛関係になるには、オレにはちょっと重い。
客と本気の恋愛なんて自分はしない。そう思っていた。
次の相手は新規客、廣瀬侑紀、26歳。18時から20時までの2時間コース。
駅前で集合した後、予約してくれたレストランでディナーデートの予定だ。
新規客のデート内容としては、時間帯も場所も至って無難で一般的。おそらく変な客ではない。
20分前に到着し、あらかじめ交換したLINEから連絡をしようとスマホを取り出す。
「あの、佐野さんですか?」
掛けられた声の低さに驚いた。
まろやかなテノールは重低音とまでは言わないが、女性の声からは程遠い。
「申し込みをさせていただいた廣瀬です。よろしくお願いします」
柔和な笑顔には少し緊張が滲んで見えた。
女性にしてはかなり短めな焦げ茶色の髪に、180近いオレが僅かに見下ろす程度の高身長。
細身ではあるものの、女性とは明らかに異なる骨ばった体つき。
どこからどう見ても、男だ。
得意の笑顔を作ることも、いつもの通り好青年を演じて挨拶することも出来ず、オレはただ呆然と彼を見つめていた。
それがオレ、佐野一哉と、廣瀬侑紀の初対面だった。
『お客様と恋愛しないこと。』
キャストだって一人の人間なのだから、好みの顔や気の合う女性と出会えば、心が引かれることもある。
常連客と何度も会って話し合えば、情が芽生えることもある。
そうやって幾人の同僚がトラブルを起こし、退職する様を近くで見てきた。
オレだって男だし、客の女性を可愛いと思うことも、抱きたいと思うこともある。
けど、思ってもそこまで。
今の立場や収入を捨ててまで、お客と本気の恋愛をしたいとは思えなかった。
高校卒業後、レンタル彼氏「Love Boy」に勤めて早5年、この仕事一本で生活するのに困らないほど、新規客もリピーターもいる。
大変なことはあれど、尽くせば尽くしただけお客から喜んでもらえるこの仕事が楽しいとも思う。
順風満帆な今、お客と恋愛してトラブルなんて絶対に起こしたくない。
そもそもこんなサービスに申し込む客なんて、どこか難ありなわけで。
それが本人自身にあるのか環境にあるのかはそれぞれだろうけど、どちらにしても恋愛関係になるには、オレにはちょっと重い。
客と本気の恋愛なんて自分はしない。そう思っていた。
次の相手は新規客、廣瀬侑紀、26歳。18時から20時までの2時間コース。
駅前で集合した後、予約してくれたレストランでディナーデートの予定だ。
新規客のデート内容としては、時間帯も場所も至って無難で一般的。おそらく変な客ではない。
20分前に到着し、あらかじめ交換したLINEから連絡をしようとスマホを取り出す。
「あの、佐野さんですか?」
掛けられた声の低さに驚いた。
まろやかなテノールは重低音とまでは言わないが、女性の声からは程遠い。
「申し込みをさせていただいた廣瀬です。よろしくお願いします」
柔和な笑顔には少し緊張が滲んで見えた。
女性にしてはかなり短めな焦げ茶色の髪に、180近いオレが僅かに見下ろす程度の高身長。
細身ではあるものの、女性とは明らかに異なる骨ばった体つき。
どこからどう見ても、男だ。
得意の笑顔を作ることも、いつもの通り好青年を演じて挨拶することも出来ず、オレはただ呆然と彼を見つめていた。
それがオレ、佐野一哉と、廣瀬侑紀の初対面だった。
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