初めから恋だった

すずなりたま

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   凌介との関係は、とても心地がいい。
 元々人間嫌いの俺だけど、大学で初めて親友と呼べる存在に出会えた。
   凌介とセックスをするようになって、何故俺とこんなことをするのだろう、と疑問に思う時期もあった。
   特定の恋人も作らないし、適齢期を過ぎても結婚する様子もない。
 凌介は俺と違って両親も健在だし、しかも長男だから結婚というかお見合いを勧められる数は俺以上だと思うのだけど。

   何故理由を聞かなかったのか。
 そこには女々しい理由などは一切ない。
   俺達の周りには、恋愛の他に夢中になれるものが常に山のようにあったので、それほど気にならなかったのだ。
 つまり興味の優先順位の問題。
 
   しかしどれだけ研究に没頭していても、生きている限り三大欲求は消失しない。
 しかも俺の場合、食欲なんかはそこまで無いのに性欲は強い方だった。
 それも凌介とのセックスで判明した。
   そんな俺に、凌介は提案した。

『1人でするのも気持ちいいけど、セックスの方が数倍気持ちいいだろう?わざわざ恋愛してセックスまで持っていく過程が面倒なら、俺がいつでも抱いてやる。問題あるか?』
『ない』

   俺はその申し出を有難く受け取り、それからも凌介に抱かれることとなった。
   ちなみに凌介の口車に乗せられたとか、騙されてるとか、そういったことはない。(当時俺達の関係に気付いたゼミの女性が、有難くも俺のことを心配してくれたのだ)
   何故なら凌介には、俺を騙して抱くメリットなんか一つもないからだ。
   俺達は単に身体の相性が最高に良くて、凌介も俺を抱くのが好きなのだろう。
   そんな今で言うウィンウィンな関係が、もう25年も続いている。





「海里、いるか?」

   凌介は、いつも何時だろうとお構い無しにうちに来る。
 大学の教授というのはそんなに自由気侭な職業だっただろうか。
   合鍵を渡しているから呼び鈴も押さない。
 俺が居ない時でも、勝手に上がって寛いで待っている時さえある。

「居るよ」
「昨日帰ってきたんだ。約束のドイツ土産買ってきたぞ。バームクーヘン」
「約束はしてないけど、ありがとう。でも土産はヴルストじゃなかったっけ」
「気が変わった。コーヒーに合うと思って」
「あ、そう。飲むか?」
「飲む」

   丁度コーヒーを淹れていたところだった。
 俺は自分のと凌介専用のカップを出して、コーヒーを注いだ。
   この家には、至る所に凌介の私物が置いてある。
 コーヒーカップ、歯ブラシ、箸、下着、靴下、服まで。邪魔だから持って帰れと言うのだけど、奴の私物は溜まっていく一方だ。
 もはや凌介専用の棚でも置いて、家賃を支払って貰うべきじゃないかと思う。
   煙草に火を点けながら、俺は聞いた。

「……どうだった」
「何が?」
「ドイツ。どこの都市?」

   俺から世間話をするのは非常に珍しいためか、凌介の反応は少し鈍かった。

「ハンブルク。向こうの教授に毎晩死ぬほどビール飲まされて本気で死ぬかと思った。絶対次の健康診断、肝臓の数値悪くなってる」
「死ぬなよ」
「うん。……何、心配してくれてるのか?」
「ああ」
「珍しい……今日は雪が降るのか?」

   今は8月だ。でも──

「降らないかな」
「え?」
「雪」
「海里……最近何かあった?」

   俺はその問いには答えず、紫煙を燻らせながらじっと凌介の目を見つめた。
 これは俺からの、普段あまり使わない『抱いて欲しい』のサインだ。

「別に」
「ここでしたい?」
「……ベッドで」
「じゃあ、行くか」
「ん」

   凌介が来る前に、既にシャワーは浴びていた。
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