156 / 197
〜第5章〜
151.『各自報告』
しおりを挟む旧トンネルの隠れ家で見つけたクスリ。
カエデの案でリンに頼んで科学捜査研究所に調べてもらうことに話が進んだ『カモミール』の3人。
3人はリンの到着を前に、ある事について話し合っていた。
みつ「来月の『ドッグオーディション』だが、ハナさんの様子からして出る確率は低いと思う。」
みつれはハナが『ドッグオーディション』に出ない可能性があることを示唆した。
しお「それはなんでなの?」
みつ「『犬』にしてる人間を組織が管理してる敷地内とはいえ、自由に行動させたりしない。……普通の『犬』ならな。」
しお「・・・つまりハナさんは普通じゃないと?」
みつ「あぁ。ハナさんは自由に動き過ぎていた。他の構成員と同じように。…恐らくシロサキはハナさんを組織の構成員として使う気だ。リンもそれは勘づいてる。」
しお「・・・なるほど。じゃあ『ドッグオーディション』への襲撃はやめる?」
みつ「いや、すまないがハナさんがいなくても私は行く。…トドロキと決着をつけたい。」
『ドッグオーディション』のオーナーはみつれを裏切ったトドロキ。
みつれはどうしても決着をつけたかった。
しお「そうだね。」
カエ「あの…『ドッグオーディション』って?」
カエデが2人に質問した。
みつ「あぁ…なんて説明すればいいか……」
まだ中学生のカエデに説明するには刺激が強過ぎる内容なだけに少し戸惑った。
すると事務所の扉が開き、リンがやって来た。
リン「お待たせ。ん?カエデちゃんも居るんだね。」
カエ「こんにちは、リンさん。怪我、大丈夫ですか?」
頭に包帯を巻いてるリンをみて心配するカエデ。
リン「大丈夫だよ。ありがと。」
みつ「待ってたぞ。とりあえず座ってくれ。」
4人はソファに座る。
みつれはクスリとメモをリンに渡した。
みつ「これがスイが持っていたクスリだ。これはスイが書いたメモだ。」
リン「これが……」
リンは受け取ったメモを見た。
みつ「そのメモには『クスリの成分は不明』と書いてある。…リン、このクスリの成分を科捜研で調べてほしい。」
リン「科捜研か……なるほど、考えたね。成分を調べて入手経路を辿るってことでしょ?」
リンは察しがついた。
みつ「あぁ。カエデの案なんだ。それで完全に出処が分かるとは思ってないが、出処を掴む為の大きな一歩になると思う。」
リン「カエデちゃんが!?凄いね!よく科捜研なんて知ってたね。」
リンはカエデの案だと聞いて驚いていた。
少し照れる様子を見せるカエデ。
リン「わかったよ。これは科捜研で調べてもらう。わかったらすぐ連絡するね。」
しお「よろしくお願いします。」
リンはクスリを仕舞った。
みつ「それともう一つ、さっき話していたんだが……『ドッグオーディション』の件だ。」
みつれは『ドッグオーディション』の話を始める。
しお「リンさんもやっぱりハナさんが『ドッグオーディション』に出ないと考えてるんですか?」
しおんはリンに訊ねた。
リン「わからないけどそうだと思う。」
リンは少し俯く。
昨日のハナの様子を思い出していた。
みつ「さっきも話したが、シロサキはハナさんを『犬』ではなく組織の構成員として使うと私は考えている。」
リン「・・・私もそう思う……。今のハナちゃんは私たちが知ってるハナちゃんじゃない。まるで別人だった。」
みつ「クスリの影響だろうな。私もそうだったからな……。いくら訓練していようが身体を鍛えていようが、内部からやられれば耐えようが無い。」
リン「『ドッグオーディション』はどうするの?」
みつ「潰す。そしてトドロキとも決着をつける。」
リン「なら当初の予定通り警察を使って一斉検挙する?」
みつ「あぁ、会場いる全員捕まえる。一人残らずな。」
みつれは険しい表情をして言い放った。
リン「わかった。それも手配する。日時がわかったら教えてね。それと私からの報告なんだけど…」
リンはバッグから封筒を取り出した。
リン「シロサキが送り込んできた半グレたちの尋問の報告書だよ。」
みつれとしおんは報告書に目を通す。
リンは説明していった。
リン「まず、昨日私を襲った半グレたちだけど、計画的なものだったよ。どうやら私たちが店に入るところをずっと監視していたらしい。」
しお「まさかあの時からずっと監視されていたなんて…」
みつ「・・・なんで私たちの行動が分かっていたんだ?計画的なものだったら私たちの行動を知っていたってことになる。」
リン「ユウゼンだよ。ユウゼンが私たちの居場所をシロサキを通してリークしたんだ。」
リンはその後も話し続けた。
リン「シロサキの指示は、私が1人になったら襲うこと。なるべく痛めつけて再起不能にさせること、そして再起不能にしてシロサキのところまで連れてきたら報酬は倍になる……てことだったよ。まぁシロサキ自身は無理だと思ってただろうけどね。結局コイツらを餌にして私を誘き出したってわけ。」
みつ「なるほど。やっぱりそうだったのか。」
しお「他にまだ半グレメンバーは居るんですか?」
リン「いや、雇われたメンバーはこの6人だけだったよ。ユウゼンを監視していたのもこの6人だって吐いたよ。」
しお「つまりもう半グレに狙われることは無いってこと?」
リン「今はね。ただシロサキがまた別の半グレを使う可能性は十分にある。用心するに越したことはないよ。」
現実離れした内容を黙って聞いているカエデ。
本当に危険なんだと理解するに時間は掛からなかった。
みつ「だいたいわかった。ありがとう、リン。とりあえず今は大丈夫だってことだ。」
リン「まぁけど用心はしてね?……さて、私はこれを科捜研に持っていくよ。」
リンはソファから腰を上げた。
みつ「すまないが、頼んだぞ。」
リン「うん。またわかったら連絡するね。」
リンは事務所を出ていった。
しお「・・・僕らはどうする?みつれさん。」
みつ「科捜研の結果を待つしかない。それまで待機だ。」
みつれはリンが置いていった報告書をまとめた。
しお「おっけー。リンさんからの連絡を待とう。」
しおんは腰を上げた。
しお「僕はちょっと出かけるよ。今直してるデバイスのパーツを調達してくる。」
みつ「あぁ。気をつけてな。」
しおんは事務所を出ていった。
事務所にはみつれとカエデだけが残った。
カエデはずっとソファに座っていた。
みつ「・・・私たちも出かけるか?カエデ。行きたい場所があるんだ。付き合ってくれるか?」
カエ「は、はい!」
みつれはカエデを連れてとある場所へとむかった。。。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる