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要の兄(肇)

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要の兄(肇)



なんとか、会社も立ち直り、要と新たに事業を始めたりと、忙しい日々を送っている

皆で暮らす家は、暖かく心地よい。
まぁ、要と蓮のイチャイチャ振りには、苦笑するしかないが・・・・
ただ、幸せな空間に俺が居てもいいのか?と、少し不安でもある。
だがまぁ、もうこの場所は、もうなくてはならない場所だと。思うんだ。

そして、俺は、次期総帥の要を支えて行こうと、決めたんだ。
それが、俺の出来る事だと思うから。
贖罪の意味もあるな。


ある日、両親から話があると、呼ばれた。
縁談だ。
無理にとは言わない。
断ってくれても構わない。
聞けば、相当の縁談の話が舞い込んでいるみたいだ。
いいのか俺で?
蓮は、
「お義兄さんは、カッコいいよ。会社の人達もね言ってたよ?優しいもん。」
そう言われて、俺は泣きそうになった。
何でだろうな。
俺の会社でも、要の会社でも、皆笑顔で対応してくれる。

あの頃の俺に言ってやりたい。
俺の周りには、こんなに優しい人達がいるんだと、お前は1人じゃない。と。
でも・・・あの頃の俺がいて、今の俺がいるんだ。
人の優しさや暖かさが、分かる自分になれた事が嬉しかった。
そんな風に変われた自分も、誇らしく思えるようになった。

そして、家族、会社の皆に感謝している。
1番はもちろん、蓮だ。
それから、要、両親。
俺を見捨てずに、付いてくれていた秘書の成瀬だ。
やさぐれて、会社経営の何一つ分からない俺を、一から教えてくれたのは、成瀬だった。
若い女性だからと、舐めてかかった俺だったが、素晴らしく有能な人材だった。
全くやる気のない俺を、見限らず黙々と、経営術を教えてくれたし、色々な書類の処理の仕方も教えてくれた。

蓮と、出会ってからは、真面目に取り組むようになった俺を、どこか嬉しそうにしていた。
そんな成瀬に俺は、
「今まですまなかった。色々と教えてくれた成瀬には、感謝している。これからもよろしく頼む。」
と、頭を下げた。
成瀬は、
「・・・社長。謝らないで下さい。私が至らないばかりに。もうし訳ありません。こちらこそ、これからもよろしくお願いします。」
泣きそうな顔で言うから、俺も泣きそうになったが、グッと堪えて、
「ありがとう。」
と、笑顔で返した。


それからは、俺は真面目に会社の社長として、やり直すべく必死になって頑張った。
要や、蓮にも協力してもらった。
要には、本当に何から何まで助けて貰った
蓮には、会社に花を置いてもらい、会社全体の雰囲気も良くなった。

蓮は、成瀬とも仲良くなり、家に良く遊びに来るようになっていた。
何度か家で会うようになり、食事も家で食べたりする仲になった。

そんなある日、蓮から
「お義兄さんは、好きな人はいないの?」
と、聞かれ
「ん?今は特にいないなぁ。」
「そうなんだ。」
「なんで?」
「ううん、いるのかなぁ?って思っただけだよ?僕ね、芽以ちゃん、あっ!成瀬さんね、大好きなんだ。だから、お義兄さんのお嫁さんに来てくれたら嬉しいなって、思ったの。」
「はっ?なっ!えーっ!・・・蓮。いくら蓮が好きだからって、俺には勿体ない人だよ。」
「お義兄さんは、芽衣ちゃんの事好きじゃない?」
「いや、いやいやいや、好きとか嫌いとかの問題ではなくて、だな。」
「じゃあ、好き?」
「・・・・好きだ。けど、成瀬には俺よりもっといい人がいるだろ。」
「うんうん、わかった!」
「はっ?何が?おい!蓮。余計な事するなよな!」
「ふふっ。だってーー!芽衣ちゃん!!」
蓮が大きな声で、成瀬を呼ぶから俺は、ビクッとして、そちらをゆっくりと向くと、
成瀬が真っ赤な顔で、両手を口元に当てていて、目からは涙が溢れそうにウルウルしている。
その姿を見て俺は、胸が痛くなる。
・・・可愛い・・・
そう、成瀬は可愛いんだ。
初めて見た時から、ずっと可愛いと思っていたんだ。
でも、言っちゃいけない。思ってもいけないと、心に鍵をかけていたんだ。
成瀬には、幸せになって欲しい。
俺には、その資格はない。
だから、好きだなんて言える訳がない。

だから、この状況はどうしたらいいのか、わからない。

「・・・えっと、あーっと、あのだな、成瀬。すまない。」
「・・・ぐすっ、し、社長。私、社長の事が好きです。」
「~っ!あ、ありがとう。俺も、好きだ」
思わず、言ってしまった・・・

「うわーい!やったーーー!!!」
蓮が叫ぶから、ビックリして、えっ?と、蓮の方を見ると、皆がいた。

なんって恥ずかしい!!!
公開処刑だ・・・・恥ずかし過ぎる!!

いや、もうこの際開き直った方がいい!
「えっと、まぁ、そう言う事です。」
俺は、成瀬の肩を抱き寄せると、皆にそう言うと、皆から盛大に拍手を送られて、何とも恥ずかしい気持ちだったが、隣にいる成瀬の顔を見ると嬉しそうに笑顔でいたから、まぁいっか。と、俺も笑顔で対応した


それからは、正式に成瀬と結婚を前提として交際を始めた。

が、俺は成瀬をもう離したくなかったのですぐに結婚を申し込んだ。
成瀬も、喜んで!!と、二つ返事で受けてくれたので、あれよあれよと言う間に結婚式が終わり、別居する話も出たが、この家がいいと成瀬が言うので同居する事になった。

本当に今、俺は幸せだ。
毎日そう実感する。
そして、近いうちもう1人家族が増える。
もう、それを聞いた家族は、狂喜乱舞で大変だった。
やれ、増築するだの、名前はどうするだの男の子か女の子か、等々。
こんな、暖かな場所で産まれてくる我が子は、何て幸せだろうと。
慈しみ、愛して、大事に育てて行こう。
皆に貰った愛を、惜しみなく与えよう。

大切な家族へ。
ありがとう。
感謝を込めて花束を贈るよ。
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