84 / 138
審罪の黙示録
しおりを挟む
禍々しき光に包まれた《堕天の翼兵》の大軍が、王都上空を覆い尽くし、聖鐘の音を掻き消した。
王国民は空を仰ぎ、恐怖に凍りついた。だが、彼らの恐怖はまだ序章に過ぎない。
その中心――
「審判の時だ。神に見捨てられし天の意志が、汝らの罪を暴く」
堕天使《ルシフェル》が静かに舞い降り、王城の上空で六翼を広げた。
その声は甘く、そして絶望に満ちていた。
---
騎士団本部では、アレクシス・バルナードが静かに立ち上がった。背後にはすでに騎士たちが武具を手にし、出撃の合図を待っている。
「防衛陣形・第七展開、都市中枢を死守せよ。ゼフィル、お前は――」
「……舞台は整ったようだな」
ゼフィル・ヴァイスラントは微笑を浮かべ、蒼き剣を抜いた。
「この“宝剣”の真価、存分に見せてやろう。堕天使とやらに、美しき敗北を届けに行くぞ」
---
一方、堕天の翼兵たちは、血の涙を流しながら空中より突撃。
聖なるはずの魔法を捻じ曲げ、神聖な治癒光は兵士たちの傷を逆に裂いていく。王国の弓隊は応戦するも、翼兵たちは風のように舞い、光の槍で一騎、また一騎と騎士たちを貫いた。
---
「……詩人は歌う。王の偽善と、民の盲信に」
影の中から音もなく現れたのは《アラゼル》。
その詩が空気を震わせた刹那、黒紫の剣閃が放たれ、王国兵の前衛陣を切り裂く。
《深淵剣舞》が一歩ごとに奏でられ、詩が進むたびに死が広がる。
「一節、二節――次は君たちの番だ」
アラゼルの視線の先には、シリルとルーカスがいた。
---
そして、大地が呻いた。
「……あれ、なんか地面……腐ってない?」
リディアの呟きに、地面が沈む。
《大地の死骸》ティアマト・ヴォルグが姿を現した。背中に枯れた大樹を背負い、踏みしめた大地を死に変えながら進軍する。
腐蝕なる根源が土壌を蝕み、王国の聖地や農地すら、息を引き取っていく。
「下がっていろ!」
アレクシスが巨大な塔盾《グラヴィス・フォート》を地面に突き立て、暴走する腐蝕の波を押し留める。
「……これはただの魔物じゃない。国そのものを殺す“災厄”だ」
---
そのとき、空間に静かな時の“歪み”が生じた。
「……演算開始。戦場の流れ、補正」
《ノクス=リヴィア》の姿が浮かび上がると同時に、《時間跳躍》が発動される。
王国兵の一人が剣を振るった瞬間、その動作が“巻き戻され”、もう一度同じ軌道を繰り返した――そこに、堕天の槍が突き刺さる。
「な……なんだ今の……!? 動きが……!?」
ユージンが叫び、焦りに汗を滲ませた。
その背後に、柔らかな足音。
「あなたの“後悔”……ひとつ、ふたつ、いくつあるの?」
アンティークドールのような少女が、血に濡れたドレスで現れる。
《エルヴィラ》。
怨嗟紡ぎの糸が、ユージンの過去へと伸びていく――
過去、笑顔で励ましてくれた父。
だがその父は、今のユージンを冷たく見下ろす。
『憎しみに飲まれ、復讐のために剣を振るうとはな。失望した。』
「やめろ……やめてくれ……!」
血の涙を流すエルヴィラの顔と、泣き崩れるユージンの姿が重なる。
---
そして中央広場では、赤と黒の旋律が踊っていた。
《グラン=バロック》――その優雅な吸血鬼は、血の霧の中で踊るように剣を振るい、王国兵を“鎖”で繋ぎ止めていく。
「その絶叫、もっと聴かせてくれ……ああ、素晴らしい……!」
血を啜り、分身を増やし、幻惑し、彼はまさに“殺戮の舞踏会”を演出していた。
---
――王国が崩れる。
空から、地から、心から。
だが、この地獄の只中――
なおも剣を構える者がいた。
ゼフィルが、空へ向けて魔剣を構える。
「おい、堕天の女王。俺の剣の光……地獄の舞台にも映えるだろう?」
ルシフェルがその声に、微笑んだ。
「ならば踊りなさい。偽りの神に捧げる舞を――」
王国民は空を仰ぎ、恐怖に凍りついた。だが、彼らの恐怖はまだ序章に過ぎない。
その中心――
「審判の時だ。神に見捨てられし天の意志が、汝らの罪を暴く」
堕天使《ルシフェル》が静かに舞い降り、王城の上空で六翼を広げた。
その声は甘く、そして絶望に満ちていた。
---
騎士団本部では、アレクシス・バルナードが静かに立ち上がった。背後にはすでに騎士たちが武具を手にし、出撃の合図を待っている。
「防衛陣形・第七展開、都市中枢を死守せよ。ゼフィル、お前は――」
「……舞台は整ったようだな」
ゼフィル・ヴァイスラントは微笑を浮かべ、蒼き剣を抜いた。
「この“宝剣”の真価、存分に見せてやろう。堕天使とやらに、美しき敗北を届けに行くぞ」
---
一方、堕天の翼兵たちは、血の涙を流しながら空中より突撃。
聖なるはずの魔法を捻じ曲げ、神聖な治癒光は兵士たちの傷を逆に裂いていく。王国の弓隊は応戦するも、翼兵たちは風のように舞い、光の槍で一騎、また一騎と騎士たちを貫いた。
---
「……詩人は歌う。王の偽善と、民の盲信に」
影の中から音もなく現れたのは《アラゼル》。
その詩が空気を震わせた刹那、黒紫の剣閃が放たれ、王国兵の前衛陣を切り裂く。
《深淵剣舞》が一歩ごとに奏でられ、詩が進むたびに死が広がる。
「一節、二節――次は君たちの番だ」
アラゼルの視線の先には、シリルとルーカスがいた。
---
そして、大地が呻いた。
「……あれ、なんか地面……腐ってない?」
リディアの呟きに、地面が沈む。
《大地の死骸》ティアマト・ヴォルグが姿を現した。背中に枯れた大樹を背負い、踏みしめた大地を死に変えながら進軍する。
腐蝕なる根源が土壌を蝕み、王国の聖地や農地すら、息を引き取っていく。
「下がっていろ!」
アレクシスが巨大な塔盾《グラヴィス・フォート》を地面に突き立て、暴走する腐蝕の波を押し留める。
「……これはただの魔物じゃない。国そのものを殺す“災厄”だ」
---
そのとき、空間に静かな時の“歪み”が生じた。
「……演算開始。戦場の流れ、補正」
《ノクス=リヴィア》の姿が浮かび上がると同時に、《時間跳躍》が発動される。
王国兵の一人が剣を振るった瞬間、その動作が“巻き戻され”、もう一度同じ軌道を繰り返した――そこに、堕天の槍が突き刺さる。
「な……なんだ今の……!? 動きが……!?」
ユージンが叫び、焦りに汗を滲ませた。
その背後に、柔らかな足音。
「あなたの“後悔”……ひとつ、ふたつ、いくつあるの?」
アンティークドールのような少女が、血に濡れたドレスで現れる。
《エルヴィラ》。
怨嗟紡ぎの糸が、ユージンの過去へと伸びていく――
過去、笑顔で励ましてくれた父。
だがその父は、今のユージンを冷たく見下ろす。
『憎しみに飲まれ、復讐のために剣を振るうとはな。失望した。』
「やめろ……やめてくれ……!」
血の涙を流すエルヴィラの顔と、泣き崩れるユージンの姿が重なる。
---
そして中央広場では、赤と黒の旋律が踊っていた。
《グラン=バロック》――その優雅な吸血鬼は、血の霧の中で踊るように剣を振るい、王国兵を“鎖”で繋ぎ止めていく。
「その絶叫、もっと聴かせてくれ……ああ、素晴らしい……!」
血を啜り、分身を増やし、幻惑し、彼はまさに“殺戮の舞踏会”を演出していた。
---
――王国が崩れる。
空から、地から、心から。
だが、この地獄の只中――
なおも剣を構える者がいた。
ゼフィルが、空へ向けて魔剣を構える。
「おい、堕天の女王。俺の剣の光……地獄の舞台にも映えるだろう?」
ルシフェルがその声に、微笑んだ。
「ならば踊りなさい。偽りの神に捧げる舞を――」
1
あなたにおすすめの小説
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた
アイイロモンペ
ファンタジー
2020.9.6.完結いたしました。
2020.9.28. 追補を入れました。
2021.4. 2. 追補を追加しました。
人が精霊と袂を分かった世界。
魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。
幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。
ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。
人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。
そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。
オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる