【完結】はい、かしこまりました。婚約破棄了承いたします。

はゆりか

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56.

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そんなこんなで翌日、詳細は分からないままエリーさんに言われたまま約束した時間に約束の場所まで向かう。


中庭にある大きな巨木の下。
私はエリーさんに言われた通り1人でその場に行ってエリーさんが来るのを待つ。

私がその場に着いてからから数分後にエリーさんが何気ない表情でその場にくる。



この場所は遮るものもなく色々な人の目につく場所。

エリーさんが私の案内役であることは周知の事実であるけど、作戦を開始して以降、私とエリーさんが共に行動することは一切なかった。

久々の公の場所での2ショット。
噂の一つである私とエリーさんが共にいる事で自然と周りの人の視線を集めている気がする。


「カロリーナさん。表情を変えずに聞いてください。」

エリーさんがこっそりとした声で私に話しかける。

「わかりました」
「あなたにはあなたにしか出来ないことがあります」
「私にしかできない事?」
「えぇ。これが作戦の最終段階です」
「はい…」

これが上手くいったらこの作戦は成功するという事ですよね。

「これからここにマルクが来ます。そのタイミングで私の頬を力一杯頬を叩いてください。」

えっ…

「っっ…頬を…叩く?」
「っっ表情を崩さないでっ」

あまりのワードに驚く私にエリーさんは静かに注意をする。

「すみません…」
「大丈夫。とにかく、いい?一切遠慮なしに思いっきり頬を叩くの」

「む…無理ですそんなこと…なんで私がエリーさんの頬を殴らなくては?」

私がためらうと、エリーさんは木の幹の影に自身の体を隠すようにしてから私の右手を掴んで自らの頬に当てる。

「これは作戦です。出来ないではなくやるんです。これはカロリーナさんにしか出来ない事です。自身にできる事をしたいのでしょう?だったら躊躇わずやって下さい。私が作り出した悪役令嬢になって下さい」

エリーさんの作り出した悪役令嬢になる…?

エリーさんの真剣な表情に私は戸惑いながらも、コクンと頷く。


人の頬を…エリーさんの頬を叩くなんて本心ではやりたくない。

でもこれは計画で、私にしか出来ない事なのであれば選択肢は1つ。


「わかりました。やります。失敗はしたくないので叩くタイミングを教えて下さい」

私の答えにエリーさんはニッコリと笑う。

「マルクが来た時点で私はカロリーナさんの方を振り返ります。そのタイミングで叩いて下さい。」

エリーさんが振り返ったタイミング…
初めてやる事だから上手くできるかしら……

「私を叩いた後は躊躇いを見せず堂々としていて下さい。絶対ですよ。いいですね」
「わ…分かりました。頑張ります…」


それから何分もしないうちに遠目にマルク様がご機嫌に歩いてくる姿が見える。

あんなご機嫌なマルク様の姿…初めて見るわ…

「カロリーナさん…準備はいいですか?」
「……えぇ。大丈夫です」


そう言ってエリーさんは私に一度背を向ける。

「ご…ごめんなさいっっカロリーナさんっっ」

エリーさんが急に大声を上げて私の方を振り返る。
私はエリーさんに言われた通りに振り返ったエリーさんの頬を目がけて手を振り切る。


バチーンっっ

思っていた以上に大きな音が周りに響き渡る。
振り切った右手のてのひらがジンジンと痛むけど、グッと堪える。

「エリーっっ」

瞬間、こちらに向かってきていたマルク様がエリーさんの名前を叫びながら駆け寄ってくる。

「カロリーナ…お前なにをやっているんだっ」

マルク様はよろめくエリーさんを支えると狂気を満ちた目で私を見てくる。

背筋がゾクリと震える。

…怖い……


でも、これはエリーさんが体を張って作ってくれた最終段階…
ここで私が失敗をしたら全てが水の泡になる…

これは私にしかできない事…
私は悪役令嬢…

でも、悪役令嬢とはどうしたらいいの?

戸惑ってはダメだと思うのに、急にどうしたらいいかが分からなくて頭が真っ白になる。

そんな時、ジっと見つめられるような鋭い視線を感じる。
視線を向けられる方向をチラリと見るとそこにはアロンが真剣な表情で立っていた。

アロンの姿を見て私の気持ちはスッと落ち着きを取り戻す。

やらなきゃ。
私の出来る事を…
私にしかできない悪役令嬢を。

自分自身の為に…

私はスゥっと息を大きく吐くと静かにその息を吐き出す。


「なんでもありません…エリーさんの頬に虫が止まっていたので仕留めて差し上げただけですわ。悪い虫では無かった様でよかったですね。エリーさん」

私の言葉にエリーさんも目を見開いて驚いた表情を見せる。

…これでいいのかな?


「カロリーナ…お前って奴は…それがお前の本性かっ」

マルク様が怒りに満ちた声を出す。

「私の本性?どうでしょう…そうなのかもしれませんね」

私は戸惑いの表情を出さないようにクスリと笑みを浮かべて、それだけ言い残すとその場を足速に後にした。
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