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第1章
4 遭遇
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スリッパを近くに生えている丈夫な茎を使って足にくくりつけ、グラディエーターサンダルっぽくした俺は、馬がいると思しき方面へ向かっていた。
どういうわけだか、家で不健康なヒキニート生活を送っていた割には体が軽い。
そのことへの疑問はさておいて、俺は警戒しながら木々の合間を抜けて歩いていく。
「ん……道か……?」
今まで俺がいた場所は木々が乱立する森のような場所だったが、そこを切り開いたような長い道のようなものが視界に飛び込んできたのだ。
地面は土を慣らして整地されているような感じだけど、アスファルトではない。
とはいえ、歩きやすいので助かるけど。
小走りで道に沿って進んでいく。
すると。
……何かがいる。
ぬかるみにはまったのか立ち往生している馬車。
そのすぐ傍には赤毛の女性が大きな剣を持って構えている。
このご時勢に銃ではなく剣というところに違和感を感じないではないが、そこまではいい。
しかし、彼女を取り囲むように六体の異形の生き物が居た。
日本で生活していてありえないのは、その生物が二足歩行をし、棍棒や剣で武装しているところだ。
顔は毛むくじゃらで犬のような容姿で、ガウガウと唸り声を上げている。
俺はその非現実感に立ち竦んでしまった。
「おらおらどうしたっ! 来ないならこっちから行くぜ!」
大剣を持った女性が犬顔の生物に呼びかけている。
大柄で、年齢は15、16の女子高生くらいに見える。
率直に言って、今まで見たことの無いほどの美少女だ。
言葉は男性的というかやや乱暴な口調だが、その生気が漲っているような雰囲気と合っているように思えた。
彼女は武器を持って敵と向かい合うという状況も怯えている雰囲気は無く、むしろ犬型生物が襲ってくるのを今かと待ち構えている様子である。
「コボルトびびってる! ヘイヘイヘイ、コボルトびびってる! ヘイヘイヘイ」
むしろ楽しんでいるような感すらある。
「ちょ、アノア殿! マジメにやってくだされ! こっちは命と荷物がかかってるんですぞ!」
止まったままの馬車の中から一人の女性が顔を出し、少女に声をかけた。
こちらはアノアと呼ばれた少女と違って余裕の無い感じだ。
「ちっちっちっ。わかってないな、ミリアムの姉御。これは相手を挑発するための駆け引きってやつよ。オレはいたって真剣に戦ってるぜ」
「ホントですか……?」
ミリアムと呼ばれた女性は疑わしげに呟く。
そんな風に軽口を叩いているアノアを見て隙ありと読んだのだろうか。
一体のコボルトが粗末な剣を振りかぶって少女に襲い掛かる。
しかし。
「あらよっと!」
それは彼女にとっては想定内の行動だったらしい。
体勢をずらしてコボルトの一撃をかわすと、そのままの勢いで一気に斬りつける。
哀れなコボルトは一刀の元に切り捨てられていた。
彼女の剣の動かし方はまるで俺の知っている物理法則を無視するような動きだ。
一方、そんな彼女の腕を見た残りのコボルトは、チラリと顔を見合わせ小声でガウガウと囁き合っている。
何やら意思疎通を図っているのだろうか。
「どうした? そっちが来ないなら、こっちから行くぜ」
アノアが野性味のある笑みを浮かべながら挑発する。
それに気圧され決断したのだろうか。
一体のコボルトがガウッとひときわ大きな声で鳴くと、それと同時に全員が振り返り一斉にその場から立ち去り始めた。
「なんだ、逃げるのかよ」
拍子抜けしたように呟く。
しかし、その集中が途切れた瞬間。
俺には彼女の背後で影のような何かが蠢いているのが見えた。
どういうわけだか、家で不健康なヒキニート生活を送っていた割には体が軽い。
そのことへの疑問はさておいて、俺は警戒しながら木々の合間を抜けて歩いていく。
「ん……道か……?」
今まで俺がいた場所は木々が乱立する森のような場所だったが、そこを切り開いたような長い道のようなものが視界に飛び込んできたのだ。
地面は土を慣らして整地されているような感じだけど、アスファルトではない。
とはいえ、歩きやすいので助かるけど。
小走りで道に沿って進んでいく。
すると。
……何かがいる。
ぬかるみにはまったのか立ち往生している馬車。
そのすぐ傍には赤毛の女性が大きな剣を持って構えている。
このご時勢に銃ではなく剣というところに違和感を感じないではないが、そこまではいい。
しかし、彼女を取り囲むように六体の異形の生き物が居た。
日本で生活していてありえないのは、その生物が二足歩行をし、棍棒や剣で武装しているところだ。
顔は毛むくじゃらで犬のような容姿で、ガウガウと唸り声を上げている。
俺はその非現実感に立ち竦んでしまった。
「おらおらどうしたっ! 来ないならこっちから行くぜ!」
大剣を持った女性が犬顔の生物に呼びかけている。
大柄で、年齢は15、16の女子高生くらいに見える。
率直に言って、今まで見たことの無いほどの美少女だ。
言葉は男性的というかやや乱暴な口調だが、その生気が漲っているような雰囲気と合っているように思えた。
彼女は武器を持って敵と向かい合うという状況も怯えている雰囲気は無く、むしろ犬型生物が襲ってくるのを今かと待ち構えている様子である。
「コボルトびびってる! ヘイヘイヘイ、コボルトびびってる! ヘイヘイヘイ」
むしろ楽しんでいるような感すらある。
「ちょ、アノア殿! マジメにやってくだされ! こっちは命と荷物がかかってるんですぞ!」
止まったままの馬車の中から一人の女性が顔を出し、少女に声をかけた。
こちらはアノアと呼ばれた少女と違って余裕の無い感じだ。
「ちっちっちっ。わかってないな、ミリアムの姉御。これは相手を挑発するための駆け引きってやつよ。オレはいたって真剣に戦ってるぜ」
「ホントですか……?」
ミリアムと呼ばれた女性は疑わしげに呟く。
そんな風に軽口を叩いているアノアを見て隙ありと読んだのだろうか。
一体のコボルトが粗末な剣を振りかぶって少女に襲い掛かる。
しかし。
「あらよっと!」
それは彼女にとっては想定内の行動だったらしい。
体勢をずらしてコボルトの一撃をかわすと、そのままの勢いで一気に斬りつける。
哀れなコボルトは一刀の元に切り捨てられていた。
彼女の剣の動かし方はまるで俺の知っている物理法則を無視するような動きだ。
一方、そんな彼女の腕を見た残りのコボルトは、チラリと顔を見合わせ小声でガウガウと囁き合っている。
何やら意思疎通を図っているのだろうか。
「どうした? そっちが来ないなら、こっちから行くぜ」
アノアが野性味のある笑みを浮かべながら挑発する。
それに気圧され決断したのだろうか。
一体のコボルトがガウッとひときわ大きな声で鳴くと、それと同時に全員が振り返り一斉にその場から立ち去り始めた。
「なんだ、逃げるのかよ」
拍子抜けしたように呟く。
しかし、その集中が途切れた瞬間。
俺には彼女の背後で影のような何かが蠢いているのが見えた。
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