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博多に向かう
21.報奨金を貰う
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じいさんと箱を抱えた増長天が入ってくる。
「なんじゃお前達、博多に向かうのか?」
そうじいさんが尋ねてくる。
「ちょうどよかった。実はな…」とじいさんが続ける。
「朝一番でお前さんが儂の弟子じゃということを政庁に言いに行ったんじゃ」
ほうほう、ついでに取り調べ免除も勝ち取ってくれていれば助かるのだが。
「ああ、それは心配せんでもええ。儂の弟子じゃってことで話はついとる。んで、この箱を預かってきた」
そう言ってじいさんは増長天が持ってきた箱を開ける。
中には荒縄で括られた貨幣が入っていた。
「これは渡来銭じゃ。見たことあるか?」
俺は小夜を見る。キョトンとしている。どうやら小夜は見たことはないようだ。もちろん俺も実物を見るのは初めてだ。そういえば遺跡から出てきた甕の中からちょくちょく出土するやつか。
「そうか知らぬか…まあ仕方ない。これは渡来銭といって、大陸から輸入してきた貨幣じゃ。貨幣はわかるか?」
それはわかる。そもそも俺は貨幣経済の生まれだ。
「これは一枚が一文。千枚まとめて一貫文。だいたい一貫文で米が一石買える。輸入した年によって、彫り込まれた文字は異なるが、価値は一緒じゃ」
なるほど…米が通貨の代わりだったのは、元の世界と同じだ。米一石はおよそ150kgだったか。千枚で米150kgとして、日本円に直すと…7枚で1kg、米がだいたいスーパーで5kg3500円とすると、35枚で3500円。一文で100円という換算でよさそうだ。
とすると一貫文で10万円か。
「それでじゃ、昨日突き出した悪党どもが実はそれなりに衛士どもが手を焼いておったやつらでの。一人当たり一貫文の報奨金が出た」
ほうほう…つまり50万円相当か。
「じゃからこの銭はタケル、お前のもんじゃ」
おお…一気に資金が増えた。
相変わらずキョトンとしていた小夜だったが、突然何かが繋がったようだ。
「タケル兄さん!串焼き!串焼きが食べられるとよ!これ1枚やったけん、いっぱい食べられるよ!!」
おう…そうきたか。まあ貨幣の価値を計る基準は人それぞれだ。とりあえず可愛かったから、小夜の頭をワシワシしておこう。
「それでじゃ…政庁から、お前を召し抱えたいとの言伝じゃが、正直なところ儂は勧めん。お前さんは異常過ぎる。勤めたりした日にはすぐにボロが出るじゃろうて」
それはそうだ。一応じいさんの弟子ということで難を逃れようとしているが、所詮は異邦人なのだ。
「そこでじゃ、儂はお前さんにさっさと逃げるように勧めにきた。いや別に二度とこの街に足を踏み入れるなというわけではない。夏も過ぎれば皆忘れるじゃろう。それまで各地を回ってこい。というつもりじゃった」
うん。きっかけはどうあれ、とりあえず宰府を離れようとしていたところだ。路銀も手に入ったし、迷わず博多に向かおう。
「そうと決まればさっさと支度…というほどの物もないな。青と小夜で鍋を片付けてくれるか?黒と白で昨日使ったシュラフを持ってきてくれ。紅はこの銭の収納を手伝ってくれ」
そう言うと、皆一斉に動き出してくれた。
準備は10分もしないうちに終わった。離れの前に集まり、じいさんにしばしの別れを告げる。
特に権兵衛親子と弥太郎に別れの挨拶をしない不義理を謝る。
「なに、あいつらも博多を根城にした行商人じゃ。きっとすぐに会えるわい」
じいさんは軽く笑ってそう言う。
「それはそうと、お前さんその格好じゃ陰陽師の弟子としては通用せんのう…広目天!儂の古着があったじゃろう」
じいさんがそう言うと、広目天がスッとじいさんの後ろに現れ、俺には一着の着物を差し出してきた。
「ちょっと着替えてこい!」
じいさんに背中を押され、俺だけ離れに押し込まれる。
柿渋色の狩衣。まあ色としては嫌いではない。見よう見まねで着てみる。
離れの引戸を開けると、興味津々でこちらを見ている面々。「まあ馬子にも衣装ですね」とは青のお言葉。褒め言葉と受け取っておこう。
「それとじゃ、黒龍よ、ちょっとこれを6つばかり複製してくれんか?」
そう言ってじいさんが黒に首から下げていた勾玉を渡す。
黒は黙って勾玉を受け取り、両手で包むように握る。
両手を開いたその先には、6個に増えた勾玉があった、革紐まできちんと複製している。
「おお…便利じゃな。これをお前さん達にやる。首から下げておけ。お前さん達に何かあったら、勾玉を握って念じよ。勾玉を持っているもの同士には念が通じるじゃろ」
携帯電話のようなものか。それは便利だ。
「それとな…」
そう言ってじいさんが懐から木の板を取り出し俺に渡す。何やら模様が墨で書き込まれている。
「鑑札じゃ。身分を明かすよう求められたら、これを見せよ。多少話の通じる相手なら、面倒ごとにはならんはずじゃ」
じいさん…いろいろとありがとう。
俺たちはしっかりと礼を言い、じいさんの家を後にした。
向かうは博多の街だ。
「なんじゃお前達、博多に向かうのか?」
そうじいさんが尋ねてくる。
「ちょうどよかった。実はな…」とじいさんが続ける。
「朝一番でお前さんが儂の弟子じゃということを政庁に言いに行ったんじゃ」
ほうほう、ついでに取り調べ免除も勝ち取ってくれていれば助かるのだが。
「ああ、それは心配せんでもええ。儂の弟子じゃってことで話はついとる。んで、この箱を預かってきた」
そう言ってじいさんは増長天が持ってきた箱を開ける。
中には荒縄で括られた貨幣が入っていた。
「これは渡来銭じゃ。見たことあるか?」
俺は小夜を見る。キョトンとしている。どうやら小夜は見たことはないようだ。もちろん俺も実物を見るのは初めてだ。そういえば遺跡から出てきた甕の中からちょくちょく出土するやつか。
「そうか知らぬか…まあ仕方ない。これは渡来銭といって、大陸から輸入してきた貨幣じゃ。貨幣はわかるか?」
それはわかる。そもそも俺は貨幣経済の生まれだ。
「これは一枚が一文。千枚まとめて一貫文。だいたい一貫文で米が一石買える。輸入した年によって、彫り込まれた文字は異なるが、価値は一緒じゃ」
なるほど…米が通貨の代わりだったのは、元の世界と同じだ。米一石はおよそ150kgだったか。千枚で米150kgとして、日本円に直すと…7枚で1kg、米がだいたいスーパーで5kg3500円とすると、35枚で3500円。一文で100円という換算でよさそうだ。
とすると一貫文で10万円か。
「それでじゃ、昨日突き出した悪党どもが実はそれなりに衛士どもが手を焼いておったやつらでの。一人当たり一貫文の報奨金が出た」
ほうほう…つまり50万円相当か。
「じゃからこの銭はタケル、お前のもんじゃ」
おお…一気に資金が増えた。
相変わらずキョトンとしていた小夜だったが、突然何かが繋がったようだ。
「タケル兄さん!串焼き!串焼きが食べられるとよ!これ1枚やったけん、いっぱい食べられるよ!!」
おう…そうきたか。まあ貨幣の価値を計る基準は人それぞれだ。とりあえず可愛かったから、小夜の頭をワシワシしておこう。
「それでじゃ…政庁から、お前を召し抱えたいとの言伝じゃが、正直なところ儂は勧めん。お前さんは異常過ぎる。勤めたりした日にはすぐにボロが出るじゃろうて」
それはそうだ。一応じいさんの弟子ということで難を逃れようとしているが、所詮は異邦人なのだ。
「そこでじゃ、儂はお前さんにさっさと逃げるように勧めにきた。いや別に二度とこの街に足を踏み入れるなというわけではない。夏も過ぎれば皆忘れるじゃろう。それまで各地を回ってこい。というつもりじゃった」
うん。きっかけはどうあれ、とりあえず宰府を離れようとしていたところだ。路銀も手に入ったし、迷わず博多に向かおう。
「そうと決まればさっさと支度…というほどの物もないな。青と小夜で鍋を片付けてくれるか?黒と白で昨日使ったシュラフを持ってきてくれ。紅はこの銭の収納を手伝ってくれ」
そう言うと、皆一斉に動き出してくれた。
準備は10分もしないうちに終わった。離れの前に集まり、じいさんにしばしの別れを告げる。
特に権兵衛親子と弥太郎に別れの挨拶をしない不義理を謝る。
「なに、あいつらも博多を根城にした行商人じゃ。きっとすぐに会えるわい」
じいさんは軽く笑ってそう言う。
「それはそうと、お前さんその格好じゃ陰陽師の弟子としては通用せんのう…広目天!儂の古着があったじゃろう」
じいさんがそう言うと、広目天がスッとじいさんの後ろに現れ、俺には一着の着物を差し出してきた。
「ちょっと着替えてこい!」
じいさんに背中を押され、俺だけ離れに押し込まれる。
柿渋色の狩衣。まあ色としては嫌いではない。見よう見まねで着てみる。
離れの引戸を開けると、興味津々でこちらを見ている面々。「まあ馬子にも衣装ですね」とは青のお言葉。褒め言葉と受け取っておこう。
「それとじゃ、黒龍よ、ちょっとこれを6つばかり複製してくれんか?」
そう言ってじいさんが黒に首から下げていた勾玉を渡す。
黒は黙って勾玉を受け取り、両手で包むように握る。
両手を開いたその先には、6個に増えた勾玉があった、革紐まできちんと複製している。
「おお…便利じゃな。これをお前さん達にやる。首から下げておけ。お前さん達に何かあったら、勾玉を握って念じよ。勾玉を持っているもの同士には念が通じるじゃろ」
携帯電話のようなものか。それは便利だ。
「それとな…」
そう言ってじいさんが懐から木の板を取り出し俺に渡す。何やら模様が墨で書き込まれている。
「鑑札じゃ。身分を明かすよう求められたら、これを見せよ。多少話の通じる相手なら、面倒ごとにはならんはずじゃ」
じいさん…いろいろとありがとう。
俺たちはしっかりと礼を言い、じいさんの家を後にした。
向かうは博多の街だ。
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