逃げて、恋して、捕まえた

紅城真琴

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逃避行の先に見えたもの

消えた芽衣 side奏多②

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午後の早い時間に日本に着いてまずは自宅へ戻ってみた。
予想通りというかやはり芽衣はいなかった。
それどころか芽衣の荷物も全てきれいに片付いていて、跡形すらない。

当然芽衣が住んでいたアパートにも行ってみた。
近くに住んでいる大家に確認してみたら3日前に解約して荷物は全て業者が処分したと言われ、計画的な行動だったんだとわかった。
芽衣は初めから俺がシンガポールへ行ったタイミングで姿を消すつもりだったんだ。そう思うと裏切られた気持ちが強く怒りがこみ上げてきた。


その後会社に向かい、雄平を呼び出した。
雄平にしてみればいい迷惑でしかないだろうが、芽衣の失踪に一役買ってしまった責任は雄平にもある。それがわかっているらしく何も言わずに俺の文句を聞いていた。

「で、これからどうするんだ?」
「さぁなあ」
どうするかなあ。

どちらにしても、芽衣が本気で逃げ出したのなら俺には打つ手がない。

「小倉がなんでお前に黙っていてくれって言ったか、わかるか?」

俺の怒りが一通り収まった頃を見計らって、雄平が聞いてきた。

「逃げる時間が欲しかったからだろ」
実際芽衣は逃げ出したじゃないか。

「それもある。せっかく決心してもお前の顔を見れば気持ちが揺らぐだろうからな。でも、それ以上にお前の足を引っ張りたくなかったんだよ」
「何だよそれ」
「『今自分がいなくなれば奏多はシンガポールから飛んで帰ってくるだろうから、プロジェクトの契約が無事終わるまでは絶対に言わないでほしい』って言ったんだ」

芽衣の奴、よけいな気を使いやがって。
そんなことされて俺が喜ぶとでも思っているのか。

「小倉は小倉なりにおまえのことを心配して出した答えだと思うぞ」
「そんなこと・・・」
俺は頼んでいない。

俺は芽衣といて幸せだった。
ただ側にいてくれればよかったんだ。
でもきっと、それは芽衣にとっての幸せじゃなかったんだな。
結局は俺の独りよがりだったらしい。

「なあ奏多」
「ん?」
「久しぶりに飲みに出るか?」

「あ、ああ」

俺に断る理由はない。
今はどんなに焦っても芽衣が帰ってくる訳ではないし、強引に探して無理やり連れ帰っても芽衣の心までは取り戻せないと気が付いた。
こんな時はパーッと飲みに出るか。

「奏多の奢りだからな」
「わかってる。その代わり、朝まで付き合えよ」
「ああ」

俺と雄平は飲みに出ることにした。
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