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悠十

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魔王城編

第三話 従者作成

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 セス、テオドア、アビーの三人は、さっそく庭に出て、魔方陣を書いた紙を広げた。
 紙が飛ばされないように固定し、魔方陣の中心に拳大の魔石を置く。

「これで、良し。……テオドア、折角だから、お前がやってみないか?」
「え!? 僕がですか?」

 目を丸くして驚くテオドアに、セスは頷く。

「ああ。お前には専属の侍女も従者も居ないだろう。俺にはアビーが居るし、折角だから此処で作ってしまおう」
「え、え、でも……」

 戸惑うテオドアに、セスは優しく語りかける。

「大丈夫だ。この魔方陣に魔力を流し、呪文を唱えればちゃんと作成出来るようになっている。万が一、失敗するようなことになっても、魔石が砕けるだけだ。危険な事は起こらないよ」
「そう……なんですか?」

 テオドアは小首を傾げながらも、安心したようで、にっこりと笑って頷いた。

「じゃあ、僕、やってみますね」
「ああ、頑張れ」

 テオドアは呪文の書いた紙を受け取ると、魔方陣の方へと歩いて行った。
 そのテオドアの背を見つめていると、アビーがそっと近づいて来た。

「セス様」
「何だ?」

 テオドアの背から視線を外さず、二人は言葉を交わす。

「あの従者作成の魔法、セス様では魔力が足りませんよね?」

 セスは視線を明後日の方向へ飛ばし、アビーは呆れたような目でセスを見つめ、溜息を吐いた。

「採算度外視でロマンを追い求める研究者じゃないんですから……」

 セスは頑なにアビーと目を合わせようとはしなかった。



   ※ ※ ※



 テオドアは一つ深呼吸をし、目の前の魔方陣を見つめた。
 
「それでは、始めます」

 開始を宣言し、呪文を紡ぐ声に魔力が込められる。


―巡れ、廻れ、めぐれ
 力は輪の中に、意思は輪の外に

 巡れ、廻れ、めぐれ
 力は輪の外に、意思は輪の中に

 伸びよ、道よ
 絶えよ、理よ

 此処に扉は開かれる―


 魔方陣に魔力が行き渡り、ふわりと魔石が浮かび上がった。


―汝、輪を外れし者
 汝、彷徨える者
 汝、意思を遺す者

 来たれ、誇り高き者よ

 誇りを骨の如く芯とし
 力を血の如く巡らせ
 意思を肉の如く纏え―


 魔石から幾筋もの赤い光が飛び出し、次第にそれは人の形を作っていく。


―来たれ、今一度此処に
 受けよ、偽りの生を
 
 此処に契約を結ばん―


 呪文の詠唱の完了と共に、紙に書かれていた魔方陣が紙から剥がれ、そのまま魔石の中に吸い込まれた。そして、魔石が一際大きく光を放ち、その光が集束して一つの人型を作り上げた。
 光が落ち着く頃、淡く光を放つ人型に罅が入る。
 光の膜がボロボロと剥がれ落ち、そこから現れたのは、黒髪の二十代半ばくらいの若い男だった。
 肌は日に焼けた健康そうな色なのに、血の気が無く、病人めいて見える。
 男はゆっくりと目を開き、その黒い瞳でテオドアを視認し、口を開いた。

「あんたが俺の「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」

 しかし、アビーの悲鳴により、男の言葉が遮られた。

「変態ぃぃぃぃぃぃ!!」
「ぐべぇっ!?」

 お前にだけは言われたくないだろう悲鳴を上げながら、アビーはその拳を男の頬に叩き込んだ。
 驚き、固まるテオドアの目をそっと塞ぎながら、セスは遠い目をする。

「あー、うん、そうだよな。ゼロから体を作るんだもんな」

 キャーキャー悲鳴を上げているアビーを尻目に、セスは何処か納得したような、そして疲れたような声で呟いた。

「服を着ている筈が無いよな」

 作られた従者は、素っ裸だった。

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