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四章 新しい仲間たちの始まり
ハーレムパーティーと、予想外の出来事
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アダド地下大迷宮を主に活動している冒険者パーティー、『降りしきる花』は一つの冒険者パーティーを追跡していた。
「ターラ、本当に気付かれてないんだろうか?」
リーダーであるハリードは、好青年という単語を具現化したような爽やかな顔を歪め、すぐ横に立つ女魔術師のターラへと問いかけた。
「……私の姿隠しの魔法は完全に発動しているわ。でも……」
ターラは見た目通り気が強く、自信家だ。
しかし、そんな彼女が戸惑いの表情を浮かべていた。
彼女が使っている姿隠しの魔法は完璧なはずだ。
代わり消費される魔力が凄まじく、魔力操作も難しい。結果として他の魔法は使えなくなるのだが、その代償に相応しい効果があった。
魔獣ですら最初の一撃を当てるまでは気付かれることはない。人間に見破られるはずが無かった。
「すまない。私の不手際のせいだ」
姿勢正しく腰を折って頭を下げたのは、盗賊のアディーバだった。
「私が失敗したせいで、目標に警戒させてしまったようだ」
「いや、気にすることはないよ。あのグリフォンに薬が効かなかったのが予想外だったんだ。君のせいじゃない」
深く頭を下げるアディーバに、ハリードは輝くような笑みを向ける。
優しい瞳に見つめられ、アディーバは薄っすらとほほを染めた。
「でもでもでも!どうするの?後ろから付いて行ってるのも、気付かれてるかもしれなんだよね?ヤバくない?」
割り込んだのは、いかにも小回りが利きそうな、小動物の様な見た目をしたルゥルゥである。
彼女は二人の間に割り込むと、片手に装備した小盾をアディーバの前に差し込んで二人の視線を遮った。
「そうですわね。困りましたわ」
頬に手を当てて本当に困っているのか分からない様なおっとりとした口調で言ってのけたのは、サマルだ。
彼女は女神官なのだが、冒険者として動きやすいようにスカートを膝上で切って足を晒している。神官の帽子も頭の形に添うような小さな物だ。
魔術師のターラ、盗賊のアディーバ、回避盾のルゥルゥ、神官のサマル。
女性四人に囲まれてリーダーをしている剣士のハリード。
この五人が冒険者パーティー『降りしきる花』であり、アダドの勇者パーティーであった。
勇者パーティーに任命されていることから分かる通り、彼らの冒険者としての実力は高い。
勇者パーティーは各国の冒険者ギルドの看板として扱われることから、見た目の良さや話題性なども評価に含まれるが、だからといって実力が無下にされることはない。
彼らが勇者パーティーと呼ばれるに相応しい力を持っていることは間違いなかった。
ならばなぜ、それほどの実力を持つ彼らがこれほどまでに悩んでいるかと言うと。
追跡している冒険者パーティーに、追跡を気付かれている雰囲気があるためである。
あくまで雰囲気だ。
気付かれているという確証はない。だが、それを否定できる要素も無かった。
だからこそ、彼らは悩んでいた。
「一番怖いのは地上へと引き返されることだ。それさえ無ければ問題ない」
ハリードは女性たちの不安を無くすために、あえて言い切った。
そう、地上に引き返されない限りは、気付かれていようが何だろうが追跡は続けられる。
そして、追跡している限りは、目的を達成する機会はあるのだ。
「だっ!面倒だな。こんな依頼を受けなきゃよかったのに!」
重い雰囲気に耐えられなかったのか、ターラが乱暴に声を上げた。
「そうは言いましても、お世話になった方々の依頼でしたし。断るなら援助した金品を返せとまで言われたら断れませんわ」
「それに……暗殺も初めての事じゃないからな……」
「……」
サマルの言葉を受け、アディーバが呟くと全員が口を噤んだ。
そう、この追跡の最終目的は冒険者パーティーの暗殺だ。
後ろ暗い仕事だが、断ることはできない。
多くの者たちから支援を受けて勇者パーティーになった彼らは、支援者たちから度々個人的な依頼を受けていた。
今回の暗殺も、その一つだった。
依頼主から事情は一切聞いていない。
ただ、目的の冒険者パーティーを殺してくれと言われただけだ。彼らはそれをただ実行するしか道はない。
断れば今までの貸しを返せと言われ、破滅が待っている。
「仕方ないさ。オレたち自身が選んだ道なんだから」
後悔して無いとは言い切れないが、彼らが勇者パーティーになるためには必要な手段だった。
幸い、今までやってきた暗殺などの後ろ暗い仕事も、全部ダンジョンの中で始末をつけてきた。
ダンジョンの中は法が届かない場所だ。事実が表に出ても裁かれることはない。
支援者たちもその部分では配慮をしてくれているのだろう。
悪事がバレたとしても、法的には守られる仕事ばかりを選んでくれている。
「私は、何があろうがハリードについていくからね!」
「世界一の冒険者パーティーになろうって約束したんですもの。アダドの勇者パーティー程度では終われませんわ」
「ルゥルゥも一緒だよ!」
「ああ、もちろん私も裏切ることはしない」
女性陣が口々に宣言をし、ハリードへと身を寄せる。
「みんな……」
ハリードは女性たちの温かさを感じて、目に涙が溢れそうになるのを感じた。
「よし!気付かれている前提で行動しよう!襲うのは彼らが四十層のボス部屋で戦闘をしている時だ!あそこのミノタウロスなら、たとえ襲撃に気付いてもオレたちの相手をする余裕は無いはずだ。よそ見をすれば、一撃で殺されかねない相手だからな!」
「そうだな、ミノタウロスなら殺意が高いから、ある程度あいつらが攻撃を加えてた後に襲撃すれば、標的が私たちに移ることも無いだろう」
ハリードの言葉を、アディーバが肯定する。
魔獣に襲われている最中に襲撃する場合に気を付けないといけないのは、自分たちまで戦いに巻き込まれて魔獣の攻撃対象とされることだ。
そうならないように、十分に機会を窺う必要がある。
四十層のボスは牛頭人という魔獣だ。殺意が高く、執着する性質がある。今回の目的には最適だった。
「直接手を下さず、邪魔をして魔獣に殺させるようにするのですね。心得ましたわ」
「あの冒険者たちに恨みはないが、オレたちの成功の礎になって貰おう。オレたちが世界一のパーティーになることが、彼らへの手向けになる。だから、頑張ろう!」
ハリードの言葉に、全員が頷き合った。
彼らの心に迷いは無かった。
その後も、降りしきる花のメンバーたちは目的の冒険者パーティーを姿を隠して追いかけた。
「なにあれ!?本当に人間?」
離れたところから観察していたが、ターラが思わず驚きの声を上げてしまうほど異常な連中だった。
「ははははははは!このような小物でも、身体を動かす練習には丁度いい!流石は我だ!」
意味の分からないことを叫びながら、黒鎧の剣士が魔獣の群れに突っ込んでいく。
他のメンバーたちは、呆れたような視線を送るだけで動こうとはしない。
対峙している魔獣は狼頭人。
三十一層から四十層までは獣頭人身の魔獣がよく出るが、その中でも群れで行動し地味に厄介な魔獣だ。
しかも、群れが壊滅しかけると別の群れを呼ぶ性質まである。
それを、黒鎧の剣士が一人で倒していっている。
異常以外の何者でもない。
「……バーサーカー?」
誰かの口からそんな呟きが漏れるほどの、信じられない状況だった。
狂戦士は伝説の存在だ。
戦場で敵味方関係なく戦い、最後は一人生き残ったという。
その伝説とワーウルフの群れを次々と倒していく黒鎧の剣士の姿が重なった。
最初は驚きで目を奪われた。
だが、見ている内に段々とその剣筋の美しさに囚われていった。
魔獣を倒す剣の動きが、美しすぎるのだ。
黒鎧の剣士の剣は、常に魔獣の急所を断ち切っている。まさに一撃必中。
狙っているというよりは、魔獣の急所が自分から剣の先に吸い込まれている様にすら見える。
動きを予測して、その先に剣を置いているのだろう。
そのことを、同じ剣士であるハリードだけが見抜くことができた。
だが、見抜けることと、再現できることは別だ。ハリードには絶対に真似できない技だった。
黒鎧は間違いなくハリードよりも強く、剣術に長けている。
ダンジョンに入る前に少しだけ耳にしたが、黒鎧の剣士はネレウス王国の剣聖ゲルトの隠し子らしい。
ならば、剣聖の剣技を受け継いでいるのだろう。
剣聖の剣技とは、あれほどまでに美しいのかと感嘆の吐息を漏らした。
黒鎧の剣技は、風の流れの様に自然で一瞬の淀みすらない。一流の舞踏家が踊っているようだった。
動きに無駄な部分は全くない。
……いや、一つだけある。邪魔としか思えないほどの、無駄なものが。
「ははははははは!貴様らごときが群れたところで我の敵にもならぬとなぜ分からぬ!美しい我の前で醜く散るなど詰まらぬぞ!我に歯向かうなど無駄なことをせず、キャンキャン言って逃げ回れ!」
黒鎧の口から垂れ流される雑音だ。
さながら芸術鑑賞中に横で悪ガキに騒がれている気分だ。
兜を被っていないからか、黒鎧の剣士の声は無駄にダンジョン内に響き渡っていた。
美しい剣技と、口から垂れ流される雑音。
どちらも黒鎧の剣士の所業なのだが、その噛み合わなさから見ている全員の脳が混乱して、神経が苛立っていく。
それは黒鎧のパーティーメンバーも同じなのだろう。
一人で戦っている黒鎧を、離れた場所から冷めた目で見つめていた。
従魔のグリフォンすら、冷たい目で見ている。
従魔というのは、魔道具の首輪で制御され絶対の忠誠を誓う存在なはずだ。それなのにあんなに冷たい目で主人を見られるのかと、驚いたほどだった。
そう言えば、アディーバの報告では魔狼が二匹いたはずだが、その姿はない。
まさかと思うが、あの黒鎧に呆れて逃げ出してしまったのではないかとハリードは考えた。
そうこうしている内に。
黒鎧の魔獣を蹴散らす快進撃のおかげで、異例の速さで彼らは四十層のボス部屋へと到達した。
三十一層から一日ほどしかかかっていない。
降りしきる花のメンバーたちは、その事に嫉妬心を覚えた。
自分たちが、一番深く潜った層は五十八層。
今では慣れや攻略方法を熟知していることもあって四十層は余裕を持って抜けられるようになったものの、それでも一日で三十一層から四十層に到達するのは不可能だ。
急いでも、だいたい二日はかかるだろう。
しかも、目の前のパーティーは、黒鎧の剣士がほぼ一人で魔獣を倒している。
罠の多い層だけに、罠の処理は他のメンバーたちがやっていたのだろうが、そういった事も考えても異常な速さだった。
……殺しておいた方が良い。
押し付けられた依頼だったが、降りしきる花のメンバーたちは、本心からそう考えるようになっていた。
美しい剣技と口から垂れ流される雑音の噛み合わなさに苛立っていたのもあるが、その考えの理由の大半は嫉妬だ。
もし、自分たちの記録を抜かれたら。
もし、それが初めてのダンジョン攻略で成されたら。
そう考えると、胸の奥で黒い気持ちがくすぶり出す。
降りしきる花のメンバー五人は、嫉妬から、本気で目の前の冒険者パーティーを殺したいと考え始めていた。
降りしきる花のメンバーたちが殺気を込めて見つめていると、黒鎧の剣士のパーティーと階層主との戦いが始まった。
降りしきる花のメンバーたちも、魔法で隠れたままボス部屋の中に入っている。ボス部屋は広く、壁際にいれば戦闘に巻き込まれることも無い。
ボスは予定通り、ミノタウロスだ。
たまに違うボスが現れることがあるが、今回はいつも通りだった。
さすがに黒鎧だけで戦うには負担が大きいらしく、パーティーメンバー全員で立ち向かっている。
ただ、いつの間にか合流していた二匹の魔狼とグリフォンは参加しないらしい。
……余裕をかましやがって……。と、ハリードは好青年らしからぬ口調で心の中で毒づいた。
ミノタウロスは身の丈三メートルはある巨体の怪物である。
頭が牛なだけで、身体は人間そのものだ。当然ながら武器を使うことも可能で、その手には巨大な鉄の斧が握られていた。
巨大な鉄の斧は間合いも長く、一撃が当たるだけで並の人間なら真っ二つにされる。
見た目は人間そのものでも、その身体も普通ではない。皮膚が分厚く、並の鎧よりも強度がある。
いくら剣技に長けていても、簡単に切り裂くことはできないだろう。
地道に小さな攻撃を加えて武器を奪い、足を止めをしながら倒すのが定番なのだが……。
「……ありえない!」
黒鎧の剣士はミノタウロスと真正面から向かい合うと、振り下ろされる斧の一撃を剣で弾いたのだった。
受け流しだ。
ミノタウロスは力を込めて振った斧が横へと弾かれ、身体の体勢を崩す。
「所詮、この程度か。いくら重量がある武器に力を乗せて振るおうとも、正しくない動作は簡単に対処される。学べ、無能ども!!」
その叫びはいったい誰に向けられたものだろうか?
その声を聞いて、ハリードは動揺した。
ぶもおおおおおおお!とミノタウロスは雄叫びを上げる。
たったの一撃。それも剣で弾いただけだ。
それなのに、ミノタウロスは牛の頭を真っ赤に染めて、血走った目で黒鎧の剣士を見つめていた。
完全に敵だと……全力で殺しにかからないといけない対象だと見定めたのだろう。
ミノタウロスが斧を再度振る。
今度は横なぎに。
先ほどよりも早く、風を切る音も鋭い。
だが、それは間一髪で避けられてしまう。あり得ない速さで、黒鎧は身を後ろに引いていた。
「予測していたのか……」
ハリードは呟く。
黒鎧はミノタウロスの動きを見てから動いたのではない。動きを予測して、先に身体を動かしていたのだ。
だから、ありえない速さで動いたように見えただけだ。
……自分にはあんな真似は不可能だと、ハリードの嫉妬心がさらに燃え上がった。
「……もう、十分だ。動こう」
ハリードは、同じく隠れてい見ていた仲間たちに合図を出した。
同時に、アディーバが弓を引いた。盗賊であるアディーバの得意の武器はナイフと弓。
弓はナイフほど得意ではないものの、それでも百発百中と言って良い腕前を誇っている。さらには鏃に毒が塗られていて、掠るだけでも致命傷になる。
狙いは黒鎧だ。それも無防備な頭だ。
行動を見るに、この狂戦士がパーティーの要だろう。
何が何でも真っ先に潰しておかなくてはならない。
ミノタウロスも次の攻撃の動作に入っており、そちらに集中している黒鎧にアディーバが放った弓を対処できる余裕は無いはずだった。
「甘いな!」
ターラの姿隠しの魔法は効いていたはずだ。矢が放たれる瞬間どころか、飛んでくる方向すら分からなかったはずだ。
それなのに、ミノタウロスから視線を外すことなく、黒鎧の剣士は背後から飛んできた矢を片手で掴んだ。
神業。
それ以外に言葉はない。
「っ!?」
息を呑んで驚いていると、視界の端で呑気に大きく欠伸をする二匹の魔狼の姿が見えた。
黒鎧が軽く後ろに飛ぶ。ほぼ同時に、彼がいた場所にミノタウロスの斧が振り下ろされる。
斧は黒鎧の身体に当たることなく、地面に敷き詰められた石板を割った。
ミノタウロスの力は凄まじい。
割られた石板は大きな塊の破片となり、四方へと飛び散った。人間に当たれば、たとえ鎧を着ていたとしても無事では済まないだろう。
「危ない!」
叫びが上がった。
ありえない光景を見た驚きから、ハリードは一瞬呆けていた。戦いの場であることを、忘れていた。
正気を取り戻したハリードが見たのは、自分に向かって飛んでくる大きな破片だ。
身体を捻って避けようにも、避けきれない。呆けていたせいで、身体の反応が間に合わず棒立ちになってしまう。
もうダメだ!と、ハリードが考えた瞬間に。
ドンと、何かが身体にぶつかった。
身体が横に飛ばされる。
柔らかな感触。石板の破片ではない。
そう気づいた時に視界に映ったのは、必死の形相のアディーバの顔だった。
短くも長い一瞬。
彼女の顔を見つめながら、ハリードは考える。
破片が自分の元に飛んでいくのに気付いたアディーバが、自分を押し退けて助けてくれたのだと。
そして……。
入れ替わるように、ハリードのいた位置にアディーバの身体が転がり込む。
このままでは、アディーバに破片が当たってしまう。
「あ……」
思わず漏れ出た声と共に、ハリードはアディーバに向かって手を伸ばした。
しかし、その指先はアディーバに届かない。
踏ん張ってアディーバを守ろうにも、押されて飛んだ身体は宙に浮いている。自分の意志ではアディーバの元には行けない。
ダメだ。……と思った時には、ハリードの身体は床へと転がり、打ち付けられた傷みが襲ってきた。
自分はアディーバに救われ、なのに、助けられなかった。
後悔の念が押し寄せる。
なのに……。
「こんなところで何をしているのだ?お嬢さん?」
なにやら能天気な声が聞こえた。
ハリードは慌てて身を起こし、声の方に目を向けた。
そこには、壁際に立つアディーバと、その前に立つ黒鎧の剣士の姿があった。
アディーバは壁に背を預け、黒鎧は壁に左手を突いて彼女と向かい合っている。
距離が近い。顔も近い。
吐息同士が重なりそうな距離だ。
壁に突いた男の手によって、アディーバには逃げ場はない。
ハリードはアディーバが黒鎧に救われたのかと察して安心する半面、近すぎる距離に怒りが湧いてきた。
「貴方の様な美しい女性は、戦いの場には向かぬぞ?」
黒鎧は何を言っているんだろう?
まるで、口説き文句だ。アディーバは黒鎧から顔を逸らしているが、耳元で囁かれて身悶えて頬を染める。
「美しい顔を良く見せてくれぬか?」
「だめ……」
黒鎧は右手でアディーバの頬に優しく触れた。
アディーバは否定の言葉を呟いたものの、無抵抗だ。黒鎧の手に促されるように、正面を向く。
そして、二人はしばらく見つめ合い……。
口付けをした。
「えええええ!!?」
「ぴぎゃーーー!!?」
重なる叫び声。驚きの声が、八つ同時に上がったのだった。
「ターラ、本当に気付かれてないんだろうか?」
リーダーであるハリードは、好青年という単語を具現化したような爽やかな顔を歪め、すぐ横に立つ女魔術師のターラへと問いかけた。
「……私の姿隠しの魔法は完全に発動しているわ。でも……」
ターラは見た目通り気が強く、自信家だ。
しかし、そんな彼女が戸惑いの表情を浮かべていた。
彼女が使っている姿隠しの魔法は完璧なはずだ。
代わり消費される魔力が凄まじく、魔力操作も難しい。結果として他の魔法は使えなくなるのだが、その代償に相応しい効果があった。
魔獣ですら最初の一撃を当てるまでは気付かれることはない。人間に見破られるはずが無かった。
「すまない。私の不手際のせいだ」
姿勢正しく腰を折って頭を下げたのは、盗賊のアディーバだった。
「私が失敗したせいで、目標に警戒させてしまったようだ」
「いや、気にすることはないよ。あのグリフォンに薬が効かなかったのが予想外だったんだ。君のせいじゃない」
深く頭を下げるアディーバに、ハリードは輝くような笑みを向ける。
優しい瞳に見つめられ、アディーバは薄っすらとほほを染めた。
「でもでもでも!どうするの?後ろから付いて行ってるのも、気付かれてるかもしれなんだよね?ヤバくない?」
割り込んだのは、いかにも小回りが利きそうな、小動物の様な見た目をしたルゥルゥである。
彼女は二人の間に割り込むと、片手に装備した小盾をアディーバの前に差し込んで二人の視線を遮った。
「そうですわね。困りましたわ」
頬に手を当てて本当に困っているのか分からない様なおっとりとした口調で言ってのけたのは、サマルだ。
彼女は女神官なのだが、冒険者として動きやすいようにスカートを膝上で切って足を晒している。神官の帽子も頭の形に添うような小さな物だ。
魔術師のターラ、盗賊のアディーバ、回避盾のルゥルゥ、神官のサマル。
女性四人に囲まれてリーダーをしている剣士のハリード。
この五人が冒険者パーティー『降りしきる花』であり、アダドの勇者パーティーであった。
勇者パーティーに任命されていることから分かる通り、彼らの冒険者としての実力は高い。
勇者パーティーは各国の冒険者ギルドの看板として扱われることから、見た目の良さや話題性なども評価に含まれるが、だからといって実力が無下にされることはない。
彼らが勇者パーティーと呼ばれるに相応しい力を持っていることは間違いなかった。
ならばなぜ、それほどの実力を持つ彼らがこれほどまでに悩んでいるかと言うと。
追跡している冒険者パーティーに、追跡を気付かれている雰囲気があるためである。
あくまで雰囲気だ。
気付かれているという確証はない。だが、それを否定できる要素も無かった。
だからこそ、彼らは悩んでいた。
「一番怖いのは地上へと引き返されることだ。それさえ無ければ問題ない」
ハリードは女性たちの不安を無くすために、あえて言い切った。
そう、地上に引き返されない限りは、気付かれていようが何だろうが追跡は続けられる。
そして、追跡している限りは、目的を達成する機会はあるのだ。
「だっ!面倒だな。こんな依頼を受けなきゃよかったのに!」
重い雰囲気に耐えられなかったのか、ターラが乱暴に声を上げた。
「そうは言いましても、お世話になった方々の依頼でしたし。断るなら援助した金品を返せとまで言われたら断れませんわ」
「それに……暗殺も初めての事じゃないからな……」
「……」
サマルの言葉を受け、アディーバが呟くと全員が口を噤んだ。
そう、この追跡の最終目的は冒険者パーティーの暗殺だ。
後ろ暗い仕事だが、断ることはできない。
多くの者たちから支援を受けて勇者パーティーになった彼らは、支援者たちから度々個人的な依頼を受けていた。
今回の暗殺も、その一つだった。
依頼主から事情は一切聞いていない。
ただ、目的の冒険者パーティーを殺してくれと言われただけだ。彼らはそれをただ実行するしか道はない。
断れば今までの貸しを返せと言われ、破滅が待っている。
「仕方ないさ。オレたち自身が選んだ道なんだから」
後悔して無いとは言い切れないが、彼らが勇者パーティーになるためには必要な手段だった。
幸い、今までやってきた暗殺などの後ろ暗い仕事も、全部ダンジョンの中で始末をつけてきた。
ダンジョンの中は法が届かない場所だ。事実が表に出ても裁かれることはない。
支援者たちもその部分では配慮をしてくれているのだろう。
悪事がバレたとしても、法的には守られる仕事ばかりを選んでくれている。
「私は、何があろうがハリードについていくからね!」
「世界一の冒険者パーティーになろうって約束したんですもの。アダドの勇者パーティー程度では終われませんわ」
「ルゥルゥも一緒だよ!」
「ああ、もちろん私も裏切ることはしない」
女性陣が口々に宣言をし、ハリードへと身を寄せる。
「みんな……」
ハリードは女性たちの温かさを感じて、目に涙が溢れそうになるのを感じた。
「よし!気付かれている前提で行動しよう!襲うのは彼らが四十層のボス部屋で戦闘をしている時だ!あそこのミノタウロスなら、たとえ襲撃に気付いてもオレたちの相手をする余裕は無いはずだ。よそ見をすれば、一撃で殺されかねない相手だからな!」
「そうだな、ミノタウロスなら殺意が高いから、ある程度あいつらが攻撃を加えてた後に襲撃すれば、標的が私たちに移ることも無いだろう」
ハリードの言葉を、アディーバが肯定する。
魔獣に襲われている最中に襲撃する場合に気を付けないといけないのは、自分たちまで戦いに巻き込まれて魔獣の攻撃対象とされることだ。
そうならないように、十分に機会を窺う必要がある。
四十層のボスは牛頭人という魔獣だ。殺意が高く、執着する性質がある。今回の目的には最適だった。
「直接手を下さず、邪魔をして魔獣に殺させるようにするのですね。心得ましたわ」
「あの冒険者たちに恨みはないが、オレたちの成功の礎になって貰おう。オレたちが世界一のパーティーになることが、彼らへの手向けになる。だから、頑張ろう!」
ハリードの言葉に、全員が頷き合った。
彼らの心に迷いは無かった。
その後も、降りしきる花のメンバーたちは目的の冒険者パーティーを姿を隠して追いかけた。
「なにあれ!?本当に人間?」
離れたところから観察していたが、ターラが思わず驚きの声を上げてしまうほど異常な連中だった。
「ははははははは!このような小物でも、身体を動かす練習には丁度いい!流石は我だ!」
意味の分からないことを叫びながら、黒鎧の剣士が魔獣の群れに突っ込んでいく。
他のメンバーたちは、呆れたような視線を送るだけで動こうとはしない。
対峙している魔獣は狼頭人。
三十一層から四十層までは獣頭人身の魔獣がよく出るが、その中でも群れで行動し地味に厄介な魔獣だ。
しかも、群れが壊滅しかけると別の群れを呼ぶ性質まである。
それを、黒鎧の剣士が一人で倒していっている。
異常以外の何者でもない。
「……バーサーカー?」
誰かの口からそんな呟きが漏れるほどの、信じられない状況だった。
狂戦士は伝説の存在だ。
戦場で敵味方関係なく戦い、最後は一人生き残ったという。
その伝説とワーウルフの群れを次々と倒していく黒鎧の剣士の姿が重なった。
最初は驚きで目を奪われた。
だが、見ている内に段々とその剣筋の美しさに囚われていった。
魔獣を倒す剣の動きが、美しすぎるのだ。
黒鎧の剣士の剣は、常に魔獣の急所を断ち切っている。まさに一撃必中。
狙っているというよりは、魔獣の急所が自分から剣の先に吸い込まれている様にすら見える。
動きを予測して、その先に剣を置いているのだろう。
そのことを、同じ剣士であるハリードだけが見抜くことができた。
だが、見抜けることと、再現できることは別だ。ハリードには絶対に真似できない技だった。
黒鎧は間違いなくハリードよりも強く、剣術に長けている。
ダンジョンに入る前に少しだけ耳にしたが、黒鎧の剣士はネレウス王国の剣聖ゲルトの隠し子らしい。
ならば、剣聖の剣技を受け継いでいるのだろう。
剣聖の剣技とは、あれほどまでに美しいのかと感嘆の吐息を漏らした。
黒鎧の剣技は、風の流れの様に自然で一瞬の淀みすらない。一流の舞踏家が踊っているようだった。
動きに無駄な部分は全くない。
……いや、一つだけある。邪魔としか思えないほどの、無駄なものが。
「ははははははは!貴様らごときが群れたところで我の敵にもならぬとなぜ分からぬ!美しい我の前で醜く散るなど詰まらぬぞ!我に歯向かうなど無駄なことをせず、キャンキャン言って逃げ回れ!」
黒鎧の口から垂れ流される雑音だ。
さながら芸術鑑賞中に横で悪ガキに騒がれている気分だ。
兜を被っていないからか、黒鎧の剣士の声は無駄にダンジョン内に響き渡っていた。
美しい剣技と、口から垂れ流される雑音。
どちらも黒鎧の剣士の所業なのだが、その噛み合わなさから見ている全員の脳が混乱して、神経が苛立っていく。
それは黒鎧のパーティーメンバーも同じなのだろう。
一人で戦っている黒鎧を、離れた場所から冷めた目で見つめていた。
従魔のグリフォンすら、冷たい目で見ている。
従魔というのは、魔道具の首輪で制御され絶対の忠誠を誓う存在なはずだ。それなのにあんなに冷たい目で主人を見られるのかと、驚いたほどだった。
そう言えば、アディーバの報告では魔狼が二匹いたはずだが、その姿はない。
まさかと思うが、あの黒鎧に呆れて逃げ出してしまったのではないかとハリードは考えた。
そうこうしている内に。
黒鎧の魔獣を蹴散らす快進撃のおかげで、異例の速さで彼らは四十層のボス部屋へと到達した。
三十一層から一日ほどしかかかっていない。
降りしきる花のメンバーたちは、その事に嫉妬心を覚えた。
自分たちが、一番深く潜った層は五十八層。
今では慣れや攻略方法を熟知していることもあって四十層は余裕を持って抜けられるようになったものの、それでも一日で三十一層から四十層に到達するのは不可能だ。
急いでも、だいたい二日はかかるだろう。
しかも、目の前のパーティーは、黒鎧の剣士がほぼ一人で魔獣を倒している。
罠の多い層だけに、罠の処理は他のメンバーたちがやっていたのだろうが、そういった事も考えても異常な速さだった。
……殺しておいた方が良い。
押し付けられた依頼だったが、降りしきる花のメンバーたちは、本心からそう考えるようになっていた。
美しい剣技と口から垂れ流される雑音の噛み合わなさに苛立っていたのもあるが、その考えの理由の大半は嫉妬だ。
もし、自分たちの記録を抜かれたら。
もし、それが初めてのダンジョン攻略で成されたら。
そう考えると、胸の奥で黒い気持ちがくすぶり出す。
降りしきる花のメンバー五人は、嫉妬から、本気で目の前の冒険者パーティーを殺したいと考え始めていた。
降りしきる花のメンバーたちが殺気を込めて見つめていると、黒鎧の剣士のパーティーと階層主との戦いが始まった。
降りしきる花のメンバーたちも、魔法で隠れたままボス部屋の中に入っている。ボス部屋は広く、壁際にいれば戦闘に巻き込まれることも無い。
ボスは予定通り、ミノタウロスだ。
たまに違うボスが現れることがあるが、今回はいつも通りだった。
さすがに黒鎧だけで戦うには負担が大きいらしく、パーティーメンバー全員で立ち向かっている。
ただ、いつの間にか合流していた二匹の魔狼とグリフォンは参加しないらしい。
……余裕をかましやがって……。と、ハリードは好青年らしからぬ口調で心の中で毒づいた。
ミノタウロスは身の丈三メートルはある巨体の怪物である。
頭が牛なだけで、身体は人間そのものだ。当然ながら武器を使うことも可能で、その手には巨大な鉄の斧が握られていた。
巨大な鉄の斧は間合いも長く、一撃が当たるだけで並の人間なら真っ二つにされる。
見た目は人間そのものでも、その身体も普通ではない。皮膚が分厚く、並の鎧よりも強度がある。
いくら剣技に長けていても、簡単に切り裂くことはできないだろう。
地道に小さな攻撃を加えて武器を奪い、足を止めをしながら倒すのが定番なのだが……。
「……ありえない!」
黒鎧の剣士はミノタウロスと真正面から向かい合うと、振り下ろされる斧の一撃を剣で弾いたのだった。
受け流しだ。
ミノタウロスは力を込めて振った斧が横へと弾かれ、身体の体勢を崩す。
「所詮、この程度か。いくら重量がある武器に力を乗せて振るおうとも、正しくない動作は簡単に対処される。学べ、無能ども!!」
その叫びはいったい誰に向けられたものだろうか?
その声を聞いて、ハリードは動揺した。
ぶもおおおおおおお!とミノタウロスは雄叫びを上げる。
たったの一撃。それも剣で弾いただけだ。
それなのに、ミノタウロスは牛の頭を真っ赤に染めて、血走った目で黒鎧の剣士を見つめていた。
完全に敵だと……全力で殺しにかからないといけない対象だと見定めたのだろう。
ミノタウロスが斧を再度振る。
今度は横なぎに。
先ほどよりも早く、風を切る音も鋭い。
だが、それは間一髪で避けられてしまう。あり得ない速さで、黒鎧は身を後ろに引いていた。
「予測していたのか……」
ハリードは呟く。
黒鎧はミノタウロスの動きを見てから動いたのではない。動きを予測して、先に身体を動かしていたのだ。
だから、ありえない速さで動いたように見えただけだ。
……自分にはあんな真似は不可能だと、ハリードの嫉妬心がさらに燃え上がった。
「……もう、十分だ。動こう」
ハリードは、同じく隠れてい見ていた仲間たちに合図を出した。
同時に、アディーバが弓を引いた。盗賊であるアディーバの得意の武器はナイフと弓。
弓はナイフほど得意ではないものの、それでも百発百中と言って良い腕前を誇っている。さらには鏃に毒が塗られていて、掠るだけでも致命傷になる。
狙いは黒鎧だ。それも無防備な頭だ。
行動を見るに、この狂戦士がパーティーの要だろう。
何が何でも真っ先に潰しておかなくてはならない。
ミノタウロスも次の攻撃の動作に入っており、そちらに集中している黒鎧にアディーバが放った弓を対処できる余裕は無いはずだった。
「甘いな!」
ターラの姿隠しの魔法は効いていたはずだ。矢が放たれる瞬間どころか、飛んでくる方向すら分からなかったはずだ。
それなのに、ミノタウロスから視線を外すことなく、黒鎧の剣士は背後から飛んできた矢を片手で掴んだ。
神業。
それ以外に言葉はない。
「っ!?」
息を呑んで驚いていると、視界の端で呑気に大きく欠伸をする二匹の魔狼の姿が見えた。
黒鎧が軽く後ろに飛ぶ。ほぼ同時に、彼がいた場所にミノタウロスの斧が振り下ろされる。
斧は黒鎧の身体に当たることなく、地面に敷き詰められた石板を割った。
ミノタウロスの力は凄まじい。
割られた石板は大きな塊の破片となり、四方へと飛び散った。人間に当たれば、たとえ鎧を着ていたとしても無事では済まないだろう。
「危ない!」
叫びが上がった。
ありえない光景を見た驚きから、ハリードは一瞬呆けていた。戦いの場であることを、忘れていた。
正気を取り戻したハリードが見たのは、自分に向かって飛んでくる大きな破片だ。
身体を捻って避けようにも、避けきれない。呆けていたせいで、身体の反応が間に合わず棒立ちになってしまう。
もうダメだ!と、ハリードが考えた瞬間に。
ドンと、何かが身体にぶつかった。
身体が横に飛ばされる。
柔らかな感触。石板の破片ではない。
そう気づいた時に視界に映ったのは、必死の形相のアディーバの顔だった。
短くも長い一瞬。
彼女の顔を見つめながら、ハリードは考える。
破片が自分の元に飛んでいくのに気付いたアディーバが、自分を押し退けて助けてくれたのだと。
そして……。
入れ替わるように、ハリードのいた位置にアディーバの身体が転がり込む。
このままでは、アディーバに破片が当たってしまう。
「あ……」
思わず漏れ出た声と共に、ハリードはアディーバに向かって手を伸ばした。
しかし、その指先はアディーバに届かない。
踏ん張ってアディーバを守ろうにも、押されて飛んだ身体は宙に浮いている。自分の意志ではアディーバの元には行けない。
ダメだ。……と思った時には、ハリードの身体は床へと転がり、打ち付けられた傷みが襲ってきた。
自分はアディーバに救われ、なのに、助けられなかった。
後悔の念が押し寄せる。
なのに……。
「こんなところで何をしているのだ?お嬢さん?」
なにやら能天気な声が聞こえた。
ハリードは慌てて身を起こし、声の方に目を向けた。
そこには、壁際に立つアディーバと、その前に立つ黒鎧の剣士の姿があった。
アディーバは壁に背を預け、黒鎧は壁に左手を突いて彼女と向かい合っている。
距離が近い。顔も近い。
吐息同士が重なりそうな距離だ。
壁に突いた男の手によって、アディーバには逃げ場はない。
ハリードはアディーバが黒鎧に救われたのかと察して安心する半面、近すぎる距離に怒りが湧いてきた。
「貴方の様な美しい女性は、戦いの場には向かぬぞ?」
黒鎧は何を言っているんだろう?
まるで、口説き文句だ。アディーバは黒鎧から顔を逸らしているが、耳元で囁かれて身悶えて頬を染める。
「美しい顔を良く見せてくれぬか?」
「だめ……」
黒鎧は右手でアディーバの頬に優しく触れた。
アディーバは否定の言葉を呟いたものの、無抵抗だ。黒鎧の手に促されるように、正面を向く。
そして、二人はしばらく見つめ合い……。
口付けをした。
「えええええ!!?」
「ぴぎゃーーー!!?」
重なる叫び声。驚きの声が、八つ同時に上がったのだった。
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