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ウインティア王国編

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エリーの乗ったウォルシュ家の馬車が校門から入ってくると周りが騒ぎ出した。

先に降りてきたのはアランだ。
令嬢たちの悲鳴が上がるが中に手を差し伸べてレイをエスコートする。
さすが慣れたもんだな。

次は俺の出番だな。
続いてエリーが降りてくる。
差し出す俺の手を見てエリーがクスッと俺に笑顔を見せる。
朝からエリーが可愛い。
抱きしめたい!

エリーが笑顔を見せると周りが静まり返るのも慣れてきたな。
前から思っていたがエリーはみんなの視線に全く気が付かないから気にもしない。

教えて意識しだしたら困るのは俺だ。
黙っているのが正解だな。

その時エリーが俺の手をギュッと握り返してきた。

「今日もお弁当を作ってきたの。ルフランも一緒に食べるでしょ?」と俺を見上げながら小さい声で聞くんだよ。
もうエリーが可愛すぎる。

「ありがとう当然一緒に食べるよ」

誰にもエリーの手作り弁当は渡さない。

そのまま手を繋いで教室まで歩く。
これが毎日続くんだぞ。最高だ。
帰ってきてくれてありがとう。

幸せだな。
諦めていたエリーが俺の手の届く所に帰ってきたんだ。
もうこの小さな手を離すことは出来そうにない。
だからエリー、俺のことを好きになってくれ。



今日編入するこの3人は俺と同じクラスだ。

教師が来る前に俺の隣にエリーを座らせた。
誰にも文句は言わせない。

3人とも注目を集めているな。
もうこれは仕方がない。

エリーとアランは当然だが、王子妃教育も終わらせているレイの洗練された佇まいは羨望の眼差しを向けられている。

アトラニア王国でのレイは元婚約者のせいで周りから蔑まれていた。
それにレイを嘲笑う声ばかりが聞こえていた。
それでもレイは折れることなく背筋を伸ばし堂々と前を向いていた。
そんなレイの強さを俺も見てきた。

今もアランの隣にいるレイに、嫉妬や妬みの目を向けてくる令嬢もいる。
でもレイのことはアランが守るだろう。

教師が入ってくると3人の自己紹介が始まった。

「アトラニア王国に留学していたエリザベート・ウォルシュです。皆さん仲良くして下さいね」
エリーそこで微笑むな!
俺は周りを威嚇するように睨んだ。

「僕も姉と一緒にアトラニア王国に留学していたアラン・ウォルシュです。隣にいるのが僕の婚約者です。僕の可愛い婚約者にちょっかい出さないで下さいね」

アランは笑顔でクラスの男たちを見渡す。

「もう!アランったら!アトラニア王国から留学してきましたレイチェル・ビジョップです。よろしくお願い致します」

さすが綺麗な礼だな。

休憩時間になるとクラスメイト達がこっちをチラチラ見てくる。
3人が気になるのは分かる。
だが、誰もエリーには近づかせないからな!
それにエリーも気にしていないようだしな。

「ルフラン、後で学園内を案内してね。ここも広いから迷っちゃう」

可愛いお願いだな。

「昼休みか放課後がいいな」

「ルフランに任せるわ」

案内は放課後にしよう。
エリーと少しでも長く一緒にいたいからな。

「そうだね放課後に案内してもらおうか」

「ええ、それがよさそうね」

アラン!レイ!ニヤニヤするな!
こいつら俺の心を読めるのか?




エリーと手を繋いでカフェのテラスまで歩いて行く。

昨日よりも重くなっているバスケットには、後ろから着いてくるアランとレイの分も入っているのだろうな。
邪魔だが仕方がない。

テーブルいっぱいに広げられた弁当は色とりどりで美味しそうだ。

そこにゾルティーが側近候補を連れて現れた。

「美味しそうだね」

「ご機嫌ようゾルティー殿下。私の手作りでよろしかったらご一緒しませんか?」

エリーが優しいのは知っている。
でも弟だろうがエリーの手作りは食べさせたくない。

「いいのかな?」

ゾルティー当然断るよな?

「ええ是非!お連れの方もどうぞ」

エリーーーもう人を増やすな!
候補の2人も頬を染めるなよ。

「「ありがとうございます」」

お前ら遠慮しろよ。

座っているテーブルは5人しか座れない。
もちろんゾルティーが残りの椅子に座った。

隣のテーブルには側近候補の2人と何故かガルザークが座った。

「足りなかったら声をかけてね。おかわりもあるわよ」

3人にも笑顔でそう言っていた。
コイツら図々しいな。

「本当に美味しいんだけど、全部エリー嬢が作ったの?」

「そうだよ。沢山あるからいっぱい食べてね」

ゾルティー調子に乗るなよ。

「ほらルフランも食べて」

エリーは俺にだけ食べさせてくれる。
この特別感が何とも言えないな。

目の前でレイもアランに食べさせているな。

隣のテーブルの3人は無言で一心不乱に食べている。
お前ら味わって食えよ。

「ねえエリー嬢、今度の休みにランに会いに行ってもいいかな?」

「もちろん!ルフランも来るでしょう?」

「当然だ」

「じゃあ天気が良かったらバーベキューしない?職人さんに頼んで作ってもらったあれ、持って帰ってきたんでしょう?」

レイ、そのバーベキューとはなんなんだ?

俺とゾルティーが首を傾げるていると。

「いいわね。当日までルフランもゾルティー殿下も楽しみにしていてね」


「「あの~私たちも参加してはダメでしょうか?」」

厚かましいな、ゾルティーの側近候補。

「いいわよ。ね?」

「ああ、多い方が楽しいからね」

「そうね。みんなとバーベキューするの楽しみだわ」

おい!アランとレイ!2人とも断らないのか?

「では俺も行かせていただきます」

ガルザークなんでお前まで・・・

俺が一言も発せない間に決まってしまった。


沢山食べて欲しいからお腹を空かせて来てね。
エリーが笑顔でそう言うと、3人とも何度も頷いていた。

まあ、コイツらは別にエリーを狙っていなさそうだし参加を許してやるか。



俺の周りがこんなに賑やかなのも久しぶりだな。







~ゾルティー殿下+側近候補2人の会話~


「あんなに綺麗なウォルシュ嬢の手料理が食べられるなんてな」

「しかも、すごく美味しかったね。」

「次の休みが楽しみだな」

「今度は何を食べさせてくれるのかな?」

「2人とも分かっていると思うがエリー嬢にだけは、手を出すなよ」

「「当然です。まだ死にたくありません」」

「まあ、私も楽しみなんだけどね。それより兄上の顔見た?」

「独占欲丸出しでしたね」

「ずっと無表情の顔しか見たことがありませんでしたが、ウォルシュ嬢の前では別人でしたね」

そんなんだよね。
まだ兄上の表情は動かないままなんだけど、エリー嬢の前だけでは鋭かった目は優しくなり、口角が上がるんだよね。

「面白いよね。そうそうウォルシュ家にはエリー嬢の飼っている犬がいるんだけどね、大型犬だから苦手なら来ない方がいいよ」

「大丈夫です。私は犬が好きですから」

「私も犬を飼っているので大丈夫です」

「すっごく可愛いんだよ。ランて名前で人なつこい子なんだよ。会うのが楽しみなんだ。私と同じ金色の瞳なんだよ」
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