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第十話 その魔物を誰も目撃してないんだよ

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「俺が話して言うのもなんだが、あんま大きな声で驚くな」

「すみません」

 二人は声を小さくして会話を始めた。

「けど、だったらここで飲んでる場合ではないんじゃないですか?」

「それが、その魔物を誰も目撃してないんだよ」

「目撃してない?」

「ああ、なんでも二十代前半の若い女性が何か視線を感じるとか、何かいるような気配がするとか言ってるんだ」

「それは魔力を感じるとかじゃなくて?」

「ああ、違うらしい。けど、若い女性の間ではかなり噂になってるみたいでな。しまいには透明の魔物がいるんじゃないかって話が出てきてしまって、門番は何やってるの!とクレームが来た始末さ」

「なるほど。けど、俺がこの村に来て間もないせいなのか、わかりませんが、そんな噂聞いたことないんですよね・・・・・・」

「・・・・・・タケシはこの村に来て、会話した女性は何人だ?」

「そうですね。ギルドの受付のお姉さんと宿屋のおばさんの二人ぐらいですかね」

「だったら、可能性は低いな。どちらも二十代じゃないからな」

「えっ?宿屋のおばさんはともかく、受付のお姉さんは二十代じゃないんですか?」
 
「ああ、もう三十前半で既婚者の子持ちだ」

「マジか・・・・・・全然みえなかった」

「まあ案外、人は見かけじゃあわからねえもんさ」

「なるほど、それでその二人からは何も聞かなかったのか」

「他にも理由はあるだろうが、まあ、それより話は戻るが、目撃者はいない。被害もない。魔力も感じない。ただ、視線と気配を感じるだけで、どこにいるのか分からないでは、クレームを入れられても、捜しようがない」

「確かに・・・・・・あのーカンタロウさん」

「なんだ?」




 
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