自分では満足出来ない旦那様へ

りこりー

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最終章

これでいい ダニエルside

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 キャサリンの父には、遠くで眺めるのは許可された。けど、目の見えないキャサリンを世話するのは大変みたいで、ついつい手伝ってしまって、そのまま執事としてキャサリンのいる屋敷に残ることにした。

 自分の事を恨んでいるララには今も鋭い視線を送られるけれど、キャサリンの傍に居られるならこれでいい。

 それにキャサリンは、ダニエルとして自分には接してない。偽りの名であるマイクとして接してくれている。声で気が付くかもしれないとずっと口回りを布で覆って声を変えている。一人称も僕から私に変えて。

 彼女の目は一生治らない。たまにぼんやりと光が見えるらしいけど、はっきりと顔を認識するのは難しい。その状況を利用し、また彼女に嘘をつくのかと思ったら自分の汚さに笑える。

 でも、どうしても彼女の傍に居たいんだ。死んだら地獄でもなんでも行くから。お願いだから彼女の傍だけは誰にも渡したくない。

「貴方が…何故此処にいる」

「ダニエル、お前こそなんで居るんだ!」

 ララからの言葉で驚いて、屋敷の外に飛び出たら奴は居た。お互いに胸元を掴み合い、激しい取っ組み合いになった。

「何しに来たんだ!」

「お前こそ!キャシーが自殺未遂したのはお前のせいだろ!」

「貴方には関係ない!」

「いや、ある!俺がキャシーから離れたのは幸せになってほしかったからだ!それなのに…なんで…なんで…幸せにしてくれなかったんだ!!!」

 僕の頬を殴りながらベンジャミンは泣いていた。自分だって幸せにしたかった。あんな嘘なんてつかなければと何度思った事か。それをまざまざと突きつけられると自分も涙が勝手に流れる。

「泣くんじゃねぇよ!お前が泣くな!」

「貴方こそ泣いてるじゃないか…」

 お互いが疲れて手を離した時には、お互いの顔が見る無残な姿になっていた。年上を敬えと顔を擦りながら立ち上がったベンジャミンに手を差し伸べられたけど、そんな手には触れたくもないから自分で立ち上がった。

「可愛くないな」

「可愛いなど貴方に思われたくないです」

「なぁ、何があったのか聞いていいか?」

「…嫌ですね」

「ふ…本当可愛くない奴。俺がな、キャシーの傍になんでお前を置いておいたか。教えてやるよ」

 そういえば、自分の気持ちに気づいていたはずの男は何故自分をキャサリンから排除しようとしなかったんだろうか。そんな簡単な事をしなかった理由は少し気になる。

「いつかはバレると思ってたんだ。いや、バレてもいいと思ってたってのが理由か。じゃなきゃ、執務室なんかで情事に更けることはない。バレて自由になりたいってもうこの地獄から助けて欲しいって…」

「それと傍に置くことの接点が見つからない…」

「その時にキャシーの傍に居て支えてくれるのがお前だって思ったからだ。でも、いざバレたらキャシーの傍を離れたくなったし、どうにか修繕出来ないかと思ったけどな…もう無理なのに…」

「ふん、だったら今更来ないでください」

「仕方ないだろ…まだ好きなんだ。それに幸せなってたら諦めたのに…死にかけたなんて聞いて諦められるか」

「怖いですね」

「お前に言われたくないね」
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