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第三章 出会いと契約
第10話 救出
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「あなた方が我々への使者の方々であることも知っています! まずは女性二人を助けます!」
一木の声に再び反応する護衛兵達だが、どうも反応が妙だ。
「砂色の甲冑……騎士シユーだ……」
「おお、騎士シユーよ! どうか我らが主をお救いください!!!」
「……そうです! ですからあなた方が囲っている女性を……」
「空からオルドロ配下の悪魔が来ております! どうか、どうか……!」
一木の希望は急速に萎んでしまった。
護衛兵達の精神は限界に近かったのだろう。一木の事をシユーとかいう騎士。そしてあろうことか救助の要であるカタクラフトに搭乗している救助班の事を悪魔だと思っている。
すでに現実と幻覚、おとぎ話の区別すらついていないのだ。
途方に暮れた一木は、先ほどの後悔の一つがまだ遅くは無いことに思い至った。
急いで上の殺大佐に通信を入れる。
シャルル大佐に彼らの伝承を聞き、どうにか救助班が悪魔ではないことを理解させる方法がないか聞くためだ。
だが、一木の行動は一歩遅かった。
「シユーよ。今場所を作るので、主たちをお願いいたします! さあ、ミルシャ殿! もうひと頑張りだ、しっかりと殿下を支えるのだぞ!」
何をするつもりかと一木が怪訝に思っていると、護衛兵が囲っている騎士のミルシャが朦朧とした意識ながら足を踏ん張り、必死にグーシュ皇女を支え直すのが見えた。
その行動の意味に思い至り、一木は今は無いはずの心臓が軋むような感覚に襲われた。
「やめろ!」
叫んだが、もう遅かった。
彼らは一木にグーシュ皇女とミルシャを託すつもりなのだ。
狭く、あまりに小さい岩場の上で二人を支える自分たちから、シユーとかいう騎士に見える一木に。当然、託した後四人の護衛兵の居場所は無い。ならば、彼らの行動は決まっていた。
「さあ、騎士シユーよ! 我らは偉大なる女神ハイタの元へ先に行きます! どうか主を!」
そう叫んだ次の瞬間、護衛兵たちは激流に身を投げていった。
後には小さな岩場に膝まで水に浸かりながらグーシュ皇女を支え、しがみつくミルシャだけが残される。
当然、あの激流で支えていた四人の男がいなくなれば結果は見えている。
見る間にバランスを崩し、二人は不安定になっていく。
「上空救助班! 急いで……」
上空のカタクラフトに指示を出そうとするが、二人は今にも倒れこみそうだ。
ロープで再降下するには、時間が足りない。
(間に合わない……行けるか?)
救助班は間に合わない。
となれば一木が行くしかないが、歩いていこうとすれば再び水に頭までつかり、そのあとで五百キロの重量であの小さな岩場を登らなければならない。
その数十秒と、大重量が岩場を登る行為に二人が耐えられるだろうか。
手がないわけでは無い。55式強化機兵の背中と脚部には、降下時の減速やジャンプに用いるスラスターが搭載されている。
それを使用すればこの程度の距離なら一気に飛び移ることも可能だ。
(だが、出来るか?)
一木はこの体になってから、55式強化機兵の様々な装備を扱えるように幾度となく練習したが、人間には存在しないこれら装備を用いることは多大な負担を脳に与え、激しい頭痛に襲われた。
そのため、未だに多くの装備が扱えず、半ば飾りとなっていた。
しかしそんな事を言っている時間は無い。
視界の隅のメニューから背部及び脚部スラスターを選択。
システムはオールグリーン、使用可能。
意識を背中と足に集中する。
炎が体を持ち上げ、大きくジャンプするイメージを……。
その瞬間、ハンマーで頭を殴られたような痛みが頭を襲う。
単なる痛みではない。以前受けた説明によれば、存在しない器官を動かそうとする行為により、実際に脳がダメージを受けていることによる頭痛だという。
だが、それでもやらなければならない。
一木は今にも激流に倒れこもうとする二人を見て、決心する。
先ほど死んでもいいなどという下らない事を考えたのだ。
今更護衛兵達の願いを無視して、多少の頭痛くらいで諦めるなど、出来るわけがない。
「大丈夫、だよ」
また、優しい声が聞こえた。
驚く一木の視界に、白い手が見えた。
白い手は、一木の頭を後ろから抱きしめるように包み込む。
すると、頭痛が嘘のように和らぎ、透き通るような清涼感が足と背中のスラスターの位置につながる感覚がした。
まるで氷の針金を脳みそから背中と足に通したようだ。
その感覚は一瞬だった。
まるで夢を瞬間的に見たようだ。
だが、効果は絶大だった。
一木が意識すると。いや、意識するまでもなく、指や足を動かすように自然にスラスターが可動する。
迷いは一瞬だった。驚きも、困惑も、恐怖も後回しだ。
勢いよく、目の前にいる少女二人の元へとジャンプする。
そう考えて行動に移した瞬間、スラスターのエンジンが瞬間的に燃焼し、一木の五百キロの義体を一瞬で跳躍させた。
「うおおおおおおおおおおおお!」
グーシュ皇女とミルシャを焼かない高度で短時間だけスラスターを燃焼、減速すると土煙を上げて一木は岩場に着地した。
小さな岩場は耐えきれずに崩れるが、腰まで水に浸かりながら一木は二人をしっかりと抱えこんだ。
「救助班!」
一木の叫びと通信を待つまでもなく、降下した救助班が一木の元にやってくる。
先にグーシュ皇女。そしてミルシャをロープでぶら下がった救助班のSSに渡す。
二人はしっかりとベルトで固定され、カタクラフトに運び込まれていった。
すぐにニャル中佐の治療を受けることだろう。
「1番機は至急宿営地に帰還しろ。俺は他の機で帰還する」
通信を入れると、了解と返答するミョーの背後でマナが騒いでいた。
苦笑しながら、一木は一言だけマナに通信を入れた。
「ごめんな、マナ。帰ったらいくらでも怒られるから」
こんな無茶をしでかしては、ましてやマナが準備した装甲板や、日ごろから整備してくれていたスラスターがここまで役立っては、もう心配性などとは言えないだろう。
一木がマナに言葉を掛けると、ミョーはいそいそと宿営地の方角に飛び立っていった。
これで一安心だ。
だが、一木の心には深い疑問が浮かんでいた。
あの、白い、シキに似た少女は一体。
しかもあの護衛兵は言っていた。偉大なる女神ハイタ、と。
サーレハ司令も言っていた。白い少女を見たといったあの時、司令室でハイタ、と。
「シャルル大佐や殺大佐なら何かわかるか、な……」
頼りになる文化参謀と情報参謀の事を考えながら、一木は救助に降りてきて、身体にワイヤーを結び付けるSS達をモノアイで眺めていた。
『ダグラス』
旗艦シャフリヤールで作業していたダグラス大佐の元に、殺大佐から通信が入った。
地上からわざわざ量子通信で秘匿回線で、だ。
秘匿回線は艦隊参謀だけが使用可能な特殊な回線だ。
ただでさえ機密性の高い量子通信を、さらに他の参謀型からすら防諜するための特殊な回線だ。
ただしそれ故に制限も大きい。
特に、秘匿回線で話した事実自体は他の艦隊参謀に筒抜けになってしまうという制限があった。
内容自体は分からなくても、わざわざそういった回線を開いた事が分かってしまうため、よほどの事が無ければ行わない通信であった。
『どうした殺? 何か問題か?』
『今の状況はこれだ、共有しろ』
殺大佐の記憶情報を共有したダグラスは、酷く驚いた表情を浮かべた。
『無茶なことするな……一木君は……しかし、なんだと……これたしかか?』
ダグラスが驚くのも無理はない。
かつて、サーレハ司令を一木の件で問い詰めたときに度々口にした単語が、現地人の口から離されていたからだ。
『old low……オールドロウ……そしてルーリアトに伝わる悪魔オルドロ……か』
『偶然だと思うか?』
『怪しい偶然は徹底的に洗え、だ。調査頼んだぞ相棒』
『ああ、あのヒゲやっぱり怪しいな。アセナとスルターナに気を付けろよ』
そう言って通信は終わった。
ダグラスは感情表現としてのため息をつく。
奇妙な経歴と体質のサイボーグ。
一個艦隊一個師団の少数兵力での異世界派遣。
艦隊司令官の妙な動きと、謎の接触者old low。
そして似た響きの現地に伝わる悪魔オルドロ。
「こりゃ役満だろ」
呟きながら目の前にいた相手に視線を戻す。
するとダグラスの目の前では会話と通信を中断していたクラレッタ大佐が不貞腐れていた。
「仲良しの殺大佐と秘匿回線で仲良しトークですか、仲がよろしいことですわね」
「いや、すまんって。別に大したことじゃないんだが……」
ダグラスの言葉にクラレッタ大佐はさらにむくれて、手に持っていた扇子を広げて顔を隠した。
わざわざ参謀モールと勲章で着飾った制服がシャラリと音を立てる。
「わたくしが一生懸命内務省の動向を伝えているのに、情報共有を切断までするなんて。どうせわたくしの事なんて事務屋くらいにしか思ってないんでしょうね」
「違う違う。殺とな、相談してたんだよ」
ダグラスは意地の悪い表情を浮かべながら話した。
その笑顔の対象はクラレッタ大佐ではなく、この場を誤魔化すための生贄にする一木であるが。
「一木代将の仮想空間に突撃しようって話をな」
瞬間、バシリと音を立てて扇子をたたむと、クラレッタ大佐はグイっと顔を寄せてダグラス大佐に詰め寄っていた。
「……サイボーグの仮想空間に入れるんですの!?」
「ああ、そのための相談だよ。アセナにばれるとうるさいだろ? たまには師団長とスキンシップもしないとな。お前とかミユキなんてほとんど会話もしてないしな」
かくして一木に、本人与かり知らぬ所で厄介事が降りかかるのであった。
一木の声に再び反応する護衛兵達だが、どうも反応が妙だ。
「砂色の甲冑……騎士シユーだ……」
「おお、騎士シユーよ! どうか我らが主をお救いください!!!」
「……そうです! ですからあなた方が囲っている女性を……」
「空からオルドロ配下の悪魔が来ております! どうか、どうか……!」
一木の希望は急速に萎んでしまった。
護衛兵達の精神は限界に近かったのだろう。一木の事をシユーとかいう騎士。そしてあろうことか救助の要であるカタクラフトに搭乗している救助班の事を悪魔だと思っている。
すでに現実と幻覚、おとぎ話の区別すらついていないのだ。
途方に暮れた一木は、先ほどの後悔の一つがまだ遅くは無いことに思い至った。
急いで上の殺大佐に通信を入れる。
シャルル大佐に彼らの伝承を聞き、どうにか救助班が悪魔ではないことを理解させる方法がないか聞くためだ。
だが、一木の行動は一歩遅かった。
「シユーよ。今場所を作るので、主たちをお願いいたします! さあ、ミルシャ殿! もうひと頑張りだ、しっかりと殿下を支えるのだぞ!」
何をするつもりかと一木が怪訝に思っていると、護衛兵が囲っている騎士のミルシャが朦朧とした意識ながら足を踏ん張り、必死にグーシュ皇女を支え直すのが見えた。
その行動の意味に思い至り、一木は今は無いはずの心臓が軋むような感覚に襲われた。
「やめろ!」
叫んだが、もう遅かった。
彼らは一木にグーシュ皇女とミルシャを託すつもりなのだ。
狭く、あまりに小さい岩場の上で二人を支える自分たちから、シユーとかいう騎士に見える一木に。当然、託した後四人の護衛兵の居場所は無い。ならば、彼らの行動は決まっていた。
「さあ、騎士シユーよ! 我らは偉大なる女神ハイタの元へ先に行きます! どうか主を!」
そう叫んだ次の瞬間、護衛兵たちは激流に身を投げていった。
後には小さな岩場に膝まで水に浸かりながらグーシュ皇女を支え、しがみつくミルシャだけが残される。
当然、あの激流で支えていた四人の男がいなくなれば結果は見えている。
見る間にバランスを崩し、二人は不安定になっていく。
「上空救助班! 急いで……」
上空のカタクラフトに指示を出そうとするが、二人は今にも倒れこみそうだ。
ロープで再降下するには、時間が足りない。
(間に合わない……行けるか?)
救助班は間に合わない。
となれば一木が行くしかないが、歩いていこうとすれば再び水に頭までつかり、そのあとで五百キロの重量であの小さな岩場を登らなければならない。
その数十秒と、大重量が岩場を登る行為に二人が耐えられるだろうか。
手がないわけでは無い。55式強化機兵の背中と脚部には、降下時の減速やジャンプに用いるスラスターが搭載されている。
それを使用すればこの程度の距離なら一気に飛び移ることも可能だ。
(だが、出来るか?)
一木はこの体になってから、55式強化機兵の様々な装備を扱えるように幾度となく練習したが、人間には存在しないこれら装備を用いることは多大な負担を脳に与え、激しい頭痛に襲われた。
そのため、未だに多くの装備が扱えず、半ば飾りとなっていた。
しかしそんな事を言っている時間は無い。
視界の隅のメニューから背部及び脚部スラスターを選択。
システムはオールグリーン、使用可能。
意識を背中と足に集中する。
炎が体を持ち上げ、大きくジャンプするイメージを……。
その瞬間、ハンマーで頭を殴られたような痛みが頭を襲う。
単なる痛みではない。以前受けた説明によれば、存在しない器官を動かそうとする行為により、実際に脳がダメージを受けていることによる頭痛だという。
だが、それでもやらなければならない。
一木は今にも激流に倒れこもうとする二人を見て、決心する。
先ほど死んでもいいなどという下らない事を考えたのだ。
今更護衛兵達の願いを無視して、多少の頭痛くらいで諦めるなど、出来るわけがない。
「大丈夫、だよ」
また、優しい声が聞こえた。
驚く一木の視界に、白い手が見えた。
白い手は、一木の頭を後ろから抱きしめるように包み込む。
すると、頭痛が嘘のように和らぎ、透き通るような清涼感が足と背中のスラスターの位置につながる感覚がした。
まるで氷の針金を脳みそから背中と足に通したようだ。
その感覚は一瞬だった。
まるで夢を瞬間的に見たようだ。
だが、効果は絶大だった。
一木が意識すると。いや、意識するまでもなく、指や足を動かすように自然にスラスターが可動する。
迷いは一瞬だった。驚きも、困惑も、恐怖も後回しだ。
勢いよく、目の前にいる少女二人の元へとジャンプする。
そう考えて行動に移した瞬間、スラスターのエンジンが瞬間的に燃焼し、一木の五百キロの義体を一瞬で跳躍させた。
「うおおおおおおおおおおおお!」
グーシュ皇女とミルシャを焼かない高度で短時間だけスラスターを燃焼、減速すると土煙を上げて一木は岩場に着地した。
小さな岩場は耐えきれずに崩れるが、腰まで水に浸かりながら一木は二人をしっかりと抱えこんだ。
「救助班!」
一木の叫びと通信を待つまでもなく、降下した救助班が一木の元にやってくる。
先にグーシュ皇女。そしてミルシャをロープでぶら下がった救助班のSSに渡す。
二人はしっかりとベルトで固定され、カタクラフトに運び込まれていった。
すぐにニャル中佐の治療を受けることだろう。
「1番機は至急宿営地に帰還しろ。俺は他の機で帰還する」
通信を入れると、了解と返答するミョーの背後でマナが騒いでいた。
苦笑しながら、一木は一言だけマナに通信を入れた。
「ごめんな、マナ。帰ったらいくらでも怒られるから」
こんな無茶をしでかしては、ましてやマナが準備した装甲板や、日ごろから整備してくれていたスラスターがここまで役立っては、もう心配性などとは言えないだろう。
一木がマナに言葉を掛けると、ミョーはいそいそと宿営地の方角に飛び立っていった。
これで一安心だ。
だが、一木の心には深い疑問が浮かんでいた。
あの、白い、シキに似た少女は一体。
しかもあの護衛兵は言っていた。偉大なる女神ハイタ、と。
サーレハ司令も言っていた。白い少女を見たといったあの時、司令室でハイタ、と。
「シャルル大佐や殺大佐なら何かわかるか、な……」
頼りになる文化参謀と情報参謀の事を考えながら、一木は救助に降りてきて、身体にワイヤーを結び付けるSS達をモノアイで眺めていた。
『ダグラス』
旗艦シャフリヤールで作業していたダグラス大佐の元に、殺大佐から通信が入った。
地上からわざわざ量子通信で秘匿回線で、だ。
秘匿回線は艦隊参謀だけが使用可能な特殊な回線だ。
ただでさえ機密性の高い量子通信を、さらに他の参謀型からすら防諜するための特殊な回線だ。
ただしそれ故に制限も大きい。
特に、秘匿回線で話した事実自体は他の艦隊参謀に筒抜けになってしまうという制限があった。
内容自体は分からなくても、わざわざそういった回線を開いた事が分かってしまうため、よほどの事が無ければ行わない通信であった。
『どうした殺? 何か問題か?』
『今の状況はこれだ、共有しろ』
殺大佐の記憶情報を共有したダグラスは、酷く驚いた表情を浮かべた。
『無茶なことするな……一木君は……しかし、なんだと……これたしかか?』
ダグラスが驚くのも無理はない。
かつて、サーレハ司令を一木の件で問い詰めたときに度々口にした単語が、現地人の口から離されていたからだ。
『old low……オールドロウ……そしてルーリアトに伝わる悪魔オルドロ……か』
『偶然だと思うか?』
『怪しい偶然は徹底的に洗え、だ。調査頼んだぞ相棒』
『ああ、あのヒゲやっぱり怪しいな。アセナとスルターナに気を付けろよ』
そう言って通信は終わった。
ダグラスは感情表現としてのため息をつく。
奇妙な経歴と体質のサイボーグ。
一個艦隊一個師団の少数兵力での異世界派遣。
艦隊司令官の妙な動きと、謎の接触者old low。
そして似た響きの現地に伝わる悪魔オルドロ。
「こりゃ役満だろ」
呟きながら目の前にいた相手に視線を戻す。
するとダグラスの目の前では会話と通信を中断していたクラレッタ大佐が不貞腐れていた。
「仲良しの殺大佐と秘匿回線で仲良しトークですか、仲がよろしいことですわね」
「いや、すまんって。別に大したことじゃないんだが……」
ダグラスの言葉にクラレッタ大佐はさらにむくれて、手に持っていた扇子を広げて顔を隠した。
わざわざ参謀モールと勲章で着飾った制服がシャラリと音を立てる。
「わたくしが一生懸命内務省の動向を伝えているのに、情報共有を切断までするなんて。どうせわたくしの事なんて事務屋くらいにしか思ってないんでしょうね」
「違う違う。殺とな、相談してたんだよ」
ダグラスは意地の悪い表情を浮かべながら話した。
その笑顔の対象はクラレッタ大佐ではなく、この場を誤魔化すための生贄にする一木であるが。
「一木代将の仮想空間に突撃しようって話をな」
瞬間、バシリと音を立てて扇子をたたむと、クラレッタ大佐はグイっと顔を寄せてダグラス大佐に詰め寄っていた。
「……サイボーグの仮想空間に入れるんですの!?」
「ああ、そのための相談だよ。アセナにばれるとうるさいだろ? たまには師団長とスキンシップもしないとな。お前とかミユキなんてほとんど会話もしてないしな」
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