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第三章 出会いと契約
第13話―2 探り合い
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そんなトイレの出来事が終わり、程なくして兵士たちが治療を受けている部屋にグーシュたちが着いたようだ。
「さて、どうなるか……」
相変わらずミラー大佐は真剣そのものだが、一木はどうにもトイレの盗聴から罪悪感のせいでまともに画面が見られないでいた。
殺大佐に至ってはすっかり観戦気分のようだ。
「兵士に慕われてるっていうからな。皇女様の人心掌握術見せてもらおうぜ」
「情報参謀がそんなんでいいの?」
ミラー大佐は不機嫌に問うが、殺大佐はどこ吹く風だ。
「別にいいだろ。ああ、ここはやっとくから一木司令はもういいぞ。シャルルの所に行って昼食会の段取りでも確認しておいてくれ。なんかあったら連絡すっから」
殺大佐にそういわれると、これ以上年頃の女の子の盗撮、盗聴を見続けることに耐えられなかったか、一木はマナと一緒に食堂へと向かった。
それを手のひらをひらひらと振って送ると、殺大佐はミラー大佐同様の鋭い視線で画面を凝視し始めた。
「悪い。なんか動きあったか?」
「特にないわね。ありきたりな見舞いに見えるわ……しかし甘やかしすぎじゃないの? サーレハの奴、ここまで一木を優遇するくらいだから、将来的には艦隊司令にする気じゃないの? 女の盗聴や盗撮くらいで照れてたら務まらないわよ」
一木が現在行っている業務は、本来なら旗艦で艦隊司令が行う領分だった。
現状は本来宇宙空間の業務を行う打撃艦隊がいないため、そちらをサーレハが行っている関係で一木が地上の業務全般を行っている。
確かに、人手不足とはいえ艦隊司令候補としての研修と言えなくもない状況である。
「そう言うなよ。そもそも一木は顔に……いやモノアイに出やすいやつだからな。あんまりあくどいことからは適度に俺たちで遠ざけてやらないと……」
殺大佐の言葉に、ミラー大佐はフンッと息を吐くと、再び画面に集中し始めた。
「ずいぶんと優しいじゃない……そんなにあいつが気に入ったの?」
「お前な……ジークじゃあるまいに何でもかんでも色恋に結び付けるな。ただ、あいつは最近じゃ珍しい見所のあるやつだからな。大事に育ててやろうって気にはなってるよ」
「あんた、あの人にはそこまで優しくなかったわよね……」
殺大佐はそう言われると、露骨に嫌そうな顔をした。
「おいミラー……お前まだあいつの事気にしてんのか?」
「…………」
「カルナークであいつは死んだんだぞ。いい加減に……おいミラー、返事し……」
「ちょっと黙って……」
ミラーが兵士たちを励ますグーシュを拡大し、収音率を上げる。
すると、グーシュと兵士たちの会話が聞こえてきた。
『ではこの怪我は橋の崩落ではなく、落ちてから岩場で切ったのか?』
『そうです。橋は大きな音のあと、一瞬でまるで砂になったように消えてしまったんです』
『そうか。わらわらのためにすまなかったな。ここの医者は優秀だ。絶対によくなる、ゆっくり休めよ』
そう言ってグーシュは、ベットに横になっている包帯まみれの両足の無い兵士をギュッと抱きしめた。
狼狽える兵士に優しく微笑むと、隣の兵士に話しかける。
そして会話の最後には同じように抱擁していった。
その姿に殺大佐は感銘を受けた。
「大したもんだ。貴族や皇族の娘が普通はあそこまで出来ないぞ」
しかし、その殺大佐の言葉にもミラー大佐は黙ったままだ。
さすがに殺大佐も気になり、グーシュたちの会話に集中する。
すると、殺大佐もミラー大佐の言わんとすることが分かってきた。
「さっきから怪我や体調の心配しながら、上手い具合に橋の崩れ方ばかり聞いてるな」
「当然答えは一瞬で崩れた……砂になったように粉々に……」
「そりゃそうだろ、そうなるように俺たちが崩したんだからな」
二人は黙ってしまった。
作戦は予想外の事態こそあったが、一木の機転と決死の行動でうまくいったはずだった。
だが、あの皇女はどこからか違和感に気が付き、嗅ぎまわっている……可能性が高い。
「ここまで具体的な疑いを持ってるとなると、悠長なことは言ってられないわね……情けないけど一木に判断してもらいましょう」
「何をだ?」
ミラー大佐は立ち上がると、兵士を抱擁するグーシュを冷たく、画面越しに見降ろした。
「こそこそ嗅ぎまわってる犬をどうするかよ。危ない橋は渡ったけど、リスクは早めに取り除くに限るわ」
「あいつが選ぶ選択肢は決まってると思うんだがね……」
「それならそれでいいわよ。たまには参謀らしく作戦案を提出しましょう」
二人はグーシュの監視を通信課のSSに任せると、一木がいる食堂へと向かった。
「さて、どうなるか……」
相変わらずミラー大佐は真剣そのものだが、一木はどうにもトイレの盗聴から罪悪感のせいでまともに画面が見られないでいた。
殺大佐に至ってはすっかり観戦気分のようだ。
「兵士に慕われてるっていうからな。皇女様の人心掌握術見せてもらおうぜ」
「情報参謀がそんなんでいいの?」
ミラー大佐は不機嫌に問うが、殺大佐はどこ吹く風だ。
「別にいいだろ。ああ、ここはやっとくから一木司令はもういいぞ。シャルルの所に行って昼食会の段取りでも確認しておいてくれ。なんかあったら連絡すっから」
殺大佐にそういわれると、これ以上年頃の女の子の盗撮、盗聴を見続けることに耐えられなかったか、一木はマナと一緒に食堂へと向かった。
それを手のひらをひらひらと振って送ると、殺大佐はミラー大佐同様の鋭い視線で画面を凝視し始めた。
「悪い。なんか動きあったか?」
「特にないわね。ありきたりな見舞いに見えるわ……しかし甘やかしすぎじゃないの? サーレハの奴、ここまで一木を優遇するくらいだから、将来的には艦隊司令にする気じゃないの? 女の盗聴や盗撮くらいで照れてたら務まらないわよ」
一木が現在行っている業務は、本来なら旗艦で艦隊司令が行う領分だった。
現状は本来宇宙空間の業務を行う打撃艦隊がいないため、そちらをサーレハが行っている関係で一木が地上の業務全般を行っている。
確かに、人手不足とはいえ艦隊司令候補としての研修と言えなくもない状況である。
「そう言うなよ。そもそも一木は顔に……いやモノアイに出やすいやつだからな。あんまりあくどいことからは適度に俺たちで遠ざけてやらないと……」
殺大佐の言葉に、ミラー大佐はフンッと息を吐くと、再び画面に集中し始めた。
「ずいぶんと優しいじゃない……そんなにあいつが気に入ったの?」
「お前な……ジークじゃあるまいに何でもかんでも色恋に結び付けるな。ただ、あいつは最近じゃ珍しい見所のあるやつだからな。大事に育ててやろうって気にはなってるよ」
「あんた、あの人にはそこまで優しくなかったわよね……」
殺大佐はそう言われると、露骨に嫌そうな顔をした。
「おいミラー……お前まだあいつの事気にしてんのか?」
「…………」
「カルナークであいつは死んだんだぞ。いい加減に……おいミラー、返事し……」
「ちょっと黙って……」
ミラーが兵士たちを励ますグーシュを拡大し、収音率を上げる。
すると、グーシュと兵士たちの会話が聞こえてきた。
『ではこの怪我は橋の崩落ではなく、落ちてから岩場で切ったのか?』
『そうです。橋は大きな音のあと、一瞬でまるで砂になったように消えてしまったんです』
『そうか。わらわらのためにすまなかったな。ここの医者は優秀だ。絶対によくなる、ゆっくり休めよ』
そう言ってグーシュは、ベットに横になっている包帯まみれの両足の無い兵士をギュッと抱きしめた。
狼狽える兵士に優しく微笑むと、隣の兵士に話しかける。
そして会話の最後には同じように抱擁していった。
その姿に殺大佐は感銘を受けた。
「大したもんだ。貴族や皇族の娘が普通はあそこまで出来ないぞ」
しかし、その殺大佐の言葉にもミラー大佐は黙ったままだ。
さすがに殺大佐も気になり、グーシュたちの会話に集中する。
すると、殺大佐もミラー大佐の言わんとすることが分かってきた。
「さっきから怪我や体調の心配しながら、上手い具合に橋の崩れ方ばかり聞いてるな」
「当然答えは一瞬で崩れた……砂になったように粉々に……」
「そりゃそうだろ、そうなるように俺たちが崩したんだからな」
二人は黙ってしまった。
作戦は予想外の事態こそあったが、一木の機転と決死の行動でうまくいったはずだった。
だが、あの皇女はどこからか違和感に気が付き、嗅ぎまわっている……可能性が高い。
「ここまで具体的な疑いを持ってるとなると、悠長なことは言ってられないわね……情けないけど一木に判断してもらいましょう」
「何をだ?」
ミラー大佐は立ち上がると、兵士を抱擁するグーシュを冷たく、画面越しに見降ろした。
「こそこそ嗅ぎまわってる犬をどうするかよ。危ない橋は渡ったけど、リスクは早めに取り除くに限るわ」
「あいつが選ぶ選択肢は決まってると思うんだがね……」
「それならそれでいいわよ。たまには参謀らしく作戦案を提出しましょう」
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