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王城編

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 ネイサンはランドンたちを伴って、人々が集まる広場から抜け出して居た。

「王城の騎士団詰め所って何処に有るんだろう…」

 その声を拾ったのは第二王子を見に来て居た一般市民。

「騎士団詰め所に行くのは良いが、騎士の試験は来年までねぇぞ?」

「えっ?!もしかして終わったんですか!?」

「あぁ、残念だがな。
 2日前に新人騎士が生まれたばかりだぜ」

「(くそっ!もう少し出立が早ければ間に有ったのに!)そう…ですか。
 あの…騎士団の見学は出来るのでしょうか?」

「どうだったかなぁ…見るのは大丈夫だったと思うが、
 第一騎士団は解体されるって聞いてるからなぁ。
 新たな団長が据えられるまでは動けないだろうな」

「第一騎士団が…解体?」

 ランドンは不思議に思って声に出してしまって居た。

「それな、あまり大きい声では言えないが、
 どうやら第一の団長さんが
 第二王子様を亡き者にしようとなさったらしい」

「・・・へぇ・・・(気が合いそうだな)」

「それでな団長さんは処刑が決まったそうだ」

 気が合いそうだ・・・と思って居た相手が断罪される、と聞かされたネイサン。

 それでも暗殺を止めたいとは思えなかった。

「見学は無理でしょうか?」

「今日は完全に無理だろうよ。
 第二王子様の護衛で動いて居るだろうし、
 これだけの人だ、何かしら何処かで
 トラブルも起きて居るだろうな。
 その対応に追われて居るだろうから、
 見学に時間を割く事は出来ないさ」

 確かに披露目当日に見学など組める訳がないな、と考えを改めたネイサン。

 その事が自分の首を絞める事になろうとは思いもして居ない。


 * * * *

 ライから頼まれたバルトは第二騎士団団長ヘンリーを見つけ

「団長、ランフォース様からの伝言です」

 と声を掛けた。

「君は…第二王子様付きの護衛バルト殿か。
 何か異常が有ったのか?」

「いえ。有った…と言うより起きる可能性が出たと言うべきかと」

「それは?」

「アレクシス殿になる前から
 毛嫌いして居たネイサンと言う人物が友人2名を連れ
 お披露目の場に現れました」

「・・・アレクシス様が狙われる可能性が有る…と言う事か?」

「はい。ネイサンは殿下が平民だった時から絡んでおりまして、
 剣術を挑まれ続けて居ましたが、
 殿下の方が格段に上…。
 連戦連敗を繰り返しておりました」

「・・・暗殺を企む可能性が有るな。
 判った。警備だけでなく名前を周知させ
 注意喚起を行っておこう」

「お願い致します」

 バルトは深々と頭を下げ、踵を返して持ち場に戻って行く。

(第二王子として披露目がされた時点で王族は確定、
 それなのに命を狙うとは…ネイサンとやらは阿呆なのだろうか?)

 挑んでは負け、挑んでは負け、を繰り返して居るのに挑み続ける阿呆…だと認識されてしまうのだが、本当に命を狙いに来た時は切り捨てる事も念頭に置き神経を集中させ、アレクを守る為に動き始めた
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