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第7章 使用人を帯同しない女子寮の秘密

274.転生して、大人だった記憶があるから、他の子どもを守ってやらないと、と思っていた。同い年の少女の姿に独りよがりだと思い知らされたなー。

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「呼び方、負け組貴族に変える?」
と忖度しないキャスリーヌ。

「実態は、負け組貴族。
医者として連れてきたから、医者と呼ぶ。暫定的に。」
とマーゴット。

「暫定的。」
と言って、マーゴットを見る医者。

「医者の呼び名を継続したいなら、呼び名に見合う行動をするといい。」
とマーゴット。

スラッルス・トークンは、舌を巻いた。

マーゴットは、キャスリーヌを側近というだけある。

マーゴット曰く、負け組貴族の医者にまんまと乗せられていた自覚があるスラッルス・トークン。

スラッルス・トークンが余計なことを言う前に、マーゴットが場を支配して、攻守を完全にひっくり返した。

今世では、命の危険もなく、家族仲はよろしくなくても、策謀を仕掛け合う間柄ではなかった。

この世界で、12年間。
スラッルス・トークンは、確かに、子どもとしての時間を過ごしてきた。

マーゴット、キャスリーヌ、バネッサ、レベッカ・ショア、ベリーベリー・イニー。

自分1人が大人で、他の子どもを守らないと、という気持ちでいたけれど。

スラッルス・トークン自身も、子どもだった。

この世界で、常勝を期待され、自身も常勝の名をほしいままにしたいと欲して突き進む同い年の少女。

スラッルス・トークンの目の前で、力強い輝きを放つ太陽。

俺、まだまだ、というか、ダメダメだ、カッコ悪い。

マーゴットにしても。
キャスリーヌにしても。
普段は苛烈さを匂わしもしないバネッサにしても。

貴族の看板を背負って、看板を殴られたら、看板とグーパンチで殴り返し、よろけることなく、一人で立っていた。

前世も含めて、大人の経験がある俺が守ってやらなきゃ、と考えていたのが、独りよがりだったなんて。

スラッルス・トークンは、恥ずかしくて、身悶えしている。

切り傷だらけで動けないので、横たわったまんまなのは、良かったのか、悪かったのか。

まあ、でも。
体は、動けないんだから、口だけ、動かすかー。
「ベリーベリーは、この部屋に用事があってきたんじゃないのかー?」
とスラッルス・トークン。

「現金や、新品のものが、あらかたなくなっているから、どうしたらいいか、相談しにきた。」
とベリーベリー・イニー。

「簡単、簡単。ナンシー・ボーンの家族に、払わせる。」
とキャスリーヌ。

「とっていったのは、ナンシーの家族?払うかな?」
とベリーベリー・イニー。

「現金は、アシがつきにくい。どこかの誰かに、現金を盗られる原因を作ったナンシー・ボーンの家族には、死にものぐるいで払わせる。」
とキャスリーヌ。

「えーと?お願いしても、いい?」
とベリーベリー・イニー。

「お願いされた。私の手間賃も上乗せして、ナンシー・ボーンの家族に払わせるから、ベリーベリーは、今回、手間賃を払う必要ないよ。」
とキャスリーヌ。

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