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(4)名残のキスマーク

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もともと物が少なかった円香の部屋は、引越しの荷造りが済んで、すっかり空っぽになってしまった。

がらんとした部屋に、5箱の段ボール。
それと、冷蔵庫、オーブンレンジ、洗濯機。
衣類を詰めた、スーツケース。
毛布が1枚。

衣類はそこそこ持っていたが、大部分は古着屋に売ってしまった。
家具、食器、調理器具の類から、本や布団まで、売ったり処分したりしていた。

円香は、モノへの執着が異常に少ない女。
これで男まで処分されては、今のところ彼女の唯一の男である健一にとっては、たまらない。

ただでさえ、大学卒業とともに就職して東京に行ってしまう円香。
一方の健一は、大学院に残って研究者としての道を歩む。

これをきっかけに、捨てられてしまうのではないかという恐れを、消せないでいた。

どうにもたまらなくなって、円香に抱きつく。

「引っ越し屋さんが、来ちゃう」

円香は言ったが、予約された時間までゆうに1時間はある。
彼女もそれを承知の上で、彼を拒まない。

部屋の窓は大きいが、いわゆる型板ガラスなので外からは中の様子がわからない。
しかし外からは、春の眩しい陽光が部屋の中を照らす。

フローリングに毛布を敷いた。
その上に横たわった円香の裸体も、白く輝いて見える。

「そんなに見ないで」

彼女は閉じた脚を曲げて丸くなり、胸と股間を手で隠す。
笑ってはいるが、頬は上気して赤い。

健一は円香に寄り添うように横たわり、口を合わせる。
彼女は腕を彼に巻きつけて、引き寄せる。

舌を絡め、深く、激しくなっていくキス。
健一は円香の胸を弄る。

手のひらで包み、撫でながらそっと揉む。
乳首を指でつまみ、触れるか触れないかの加減で刺激する。

全身の筋肉を緩やかに緊張させ、そして弛緩させる円香。
彼女は口を離して、甘い声の混じった深い息を吐く。

健一は胸を弄いながら、耳たぶを、そして首筋を、唇で愛撫。
温かで円やかな彼女の体も、肌の甘い香りも、明日からは遠いところへ行ってしまう。

次に会うのは、どれくらい後だろう・・・?

名残惜しさから、普段よりも全身を密着させる。
素肌と素肌が吸い付き合うような錯覚。

健一の唇は、浮き出た鎖骨に挨拶程度に触れてから、乳首へと移る。
ローズピンクの愛らしい突起。

口に吸い込み、その先端に舌先を当ててクルクル回す。
同時に手は、脇腹、恥毛の繁る丘を撫でてから、熱い湯をたぎらせている割れ目へ。

柔らかく膨らみ、濡れているその中に、ポツンと佇む固いもの。
乳首よりもはるかに感度の高い、これもまた愛らしい突起。

人差し指の腹で押さえつつクリクリと揺り動かしながら、中指は円香の中へ。
熱くて柔らかい彼女の中を、マッサージするように指で刺激する。

「ああ・・・あああぁ~」

眉間にしわを寄せ、首を激しく振り、胴体や脚までくねらせて、快感を健一に伝える円香。
柔らかい光の中で、純粋に女になって燃えている。

健一は胸から離れ、彼女の脇から股間を覗き込む。
淫らに爛れた性器がぱっくりと口を開け、露を滴らせている。

「やだ・・・明るいのに・・・」

円香は恥ずかしがる。
しかしそれにも構わず、指で性器の合わせ目を開いたり閉じたりしながら、弄る健一。

指の動きとともに、ピチャピチャという音。
円香は喘ぎながら、健一の性器を掴み、軽く扱く。

健一は、明るい光の中で鮮明に目に映る彼女の性器を、網膜に焼き付けるようにじっと見た。
そしてそこに口を付け、舌で舐ると、円香はさらに悶える。

突起や肉などの組織、そしてさらに奥の方へも舌を差し込み・・・丁寧に舐めていく健一。

「ああ、ああ、イク、イク、イクぅ~・・・」

ついに円香は、脚をつっぱり、身をうねらせて、絶頂を迎えた。

円香の呼吸が落ち着くのを待って、健一はおねだりするように言った。

「ねぇ、ここにキスマークつけたい」

彼は円香の内腿を指先で撫でる。

「え・・・なんで?」

なんで、と聞かれても、健一本人が、なぜなのか分からない。

あえて言えば、彼女と離れ離れになってしまう名残惜しさからか。
いや正直に言えば、マーキングしたいという願望も、無意識のうちにあるはずだ。

イヤと言われないのをいいことに、すぼめた口を付ける。
チュウチュウ力いっぱい吸って口を離すと、そこには鮮紅色の花弁のようなキスマーク。

向かい側の内腿にも口を付け、そこに花弁をもう一枚。
円香は起き上がって、キスマークを見つめ、呟く。

「あーあ、付いちゃった・・・」

しみじみと、しかし半分おどけて。
そして健一を向いて、悪戯っぽく言った。

「仕返しに、私にも付けさせて」
「・・・どこに?」
「ここ!」

彼女は健一の股座を覗き込み、屹立し続ける性器を手に取る。

「ええ?ここに?」
「そう、私に会えないからって、浮気なんかできないように」
「浮気なんかしないよ」
「どうだか」

含み笑いを残し、彼の先端に唇を寄せ、ごく狭い一点を、強く吸う。

「いたたたた・・・!」

健一にとって、痛みが8割、快感が2割。
思わず円香の頭を掴む。

彼女が口を離すと、性器の先端に、鮮やかなキスマーク。

「やったなぁ~!」

健一は円香を押し倒し、覆い被さりながら口と手で乳房を愛撫。
彼女も、一旦はクールダウンした体がだんだんと温まり、気分も上がってきた。

「ね、お願い」

とろんとした目で訴えながら、健一の性器を軽く握り、引き寄せる。
彼も軽くキスして彼女から離れ、ズックのカバンからコンドームを取り出し、装着。

薄いゴムを通しては、円香に付けてもらったキスマークはよく見えない。
しかし、彼が付けたキスマークは、開かれた両側の内腿に、鮮やかに散っている。

ふたつのキスマークと、そして性器にも軽くキスをして、再び彼女に覆い被さる。

「ああ~・・・あああああ~・・・」

熱く濡れる彼女の内部をかき分け進む、いきり勃った性器。
円香の口からあがる、歓喜の悲鳴。

もうしばらく、会えなくなる。
彼女の体の温もりからも、遠ざかってしまう。

腰を振りながら、なんだか切なさがこみ上げてきそうだった。
その一方で心強いのは、ふたりの体に残されたキスマークの存在。

そのうちに儚く消えてしまうであろうキスマーク。
けれども、ふたりの繋がりはまだ活きていることの証拠にも思われた。

円香の乳首を口に含みながら、腰の動きを激しくする健一。
喘ぎながら、肌にうっすらと浮かんだ汗を光らせる円香。

程なくして、ふたりは溶け合いながら歓喜の頂に駆け上がった。 (了)
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