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三章 龍の花嫁

85 仕方ありません、助けに行きましょう

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 龍の花嫁の物語、それは思った以上に悲しい物語でした。

 ただ、そんなはるか昔の物語なのに今でもその習慣が残ってるというのも驚きです。

「龍の里は閉ざされた空間なので、まだお話にでてきた龍が生きているのかも定かではないようです。ただ、各国の代表が話し合って姫と呼ばれる立場の女性を差し出し、万が一にも降りかかるかもしれない厄災を未然に防いでいるようですよ」

 ……なるほど。ルールー、ほんとにどこからそんな情報を仕入れてるんですか? さてはスパイですか?

「乙女の秘密です」
「……それ、答えになってませんよ?」

 普通に誤魔化されてしまいました。なんで国の女王よりも情報を持ってるんでしょうか……。

 まぁなんにせよ、王国のアナスタシア王女がその龍の花嫁に選ばれ、なぜ拒否しているかというのは理解出来ました。

 花嫁といえば聞こえはいいですが、実際は生贄のようなものですし。

 王や馬鹿王子も、望んでいる訳では無いのでしょうが国が滅ぶよりは……という心境なのでしょうか?

 もし自分の子供が生贄に選ばれたら、私なら死んでも手放しません。力の限り戦ってみせます。

「ちなみに、アナスタシアさんの状況は?」
「悪魔たちの調査によると、現在なんとか国を抜け出してこちらへ向かってきているようです。ただ……その、何故か護衛がいません」
「……マズイですねそれは」

 龍の花嫁のことを知っていて、王国やその他の国に混乱を起こしたい組織とかがいたら、今のアナスタシアさんの状況は格好の的でしょう。

 すぐに護衛を送らないとまずい気がします。

「護衛ですか……それはこの国がアナスタシアさんを保護するということをアピールすることになってしまいます」
「やっぱりそうなりますか。ただ、仕方ありません、見捨てれませんから。文句を言ってきた国にはこう返しといてください。龍が来たら私が殴り返すと」
「……実績ありますからね」

 そうですよ、フォーレイと同じような強さなら殴り飛ばせます。

 護衛はアーさんとナオキを中心に、悪魔たちを加えての30人ほどの団体でお願いしましょう。

 悪魔たちだけだと、ただの襲撃のような見た目になってしまいますからね。おそらく顔を知っているナオキがいる事でアナスタシアさんも安心できるでしょう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ぎゃぁぁぁぁ、悪魔じゃ! 悪魔がいるのじゃぁぁぁぁ」
「落ち着いてくださいお嬢様、おそらくノアの国からの助けでしょう。お嬢様の願いが届いたのです、ここは王女らしくしてください」
「無理なのじゃ! 怖すぎるのじゃ! だいたいお前も足震えとるぞバニラ!」
「武者震いです」
「何のじゃ!」

 たしかに、護衛が欲しいなとは思っていたのじゃ。ただ、悪魔の軍勢をよこしてくるとは思わなかったのじゃ……。

 ただ、昔見た顔もいるのじゃ。たしか勇者にこき使われていたデブじゃな。

「お、おい。そこのデブ。妾を知っておるな?」
「……」
「なぜ無視するのじゃ! 不敬じゃぞ!」
「デブなんてここにはいない」
「いるじゃろ。お前自身じゃ」
「僕はデブじゃない! ぽっちゃりだ!」
「えぇ……」

 すごい剣幕で怒鳴られたのじゃ。妾は王国の姫なのじゃが……このあくまたちもそうじゃが、全然敬う気がないのじゃ。

 まったく、向こうではどんな教育がされてるのじゃ! 王族を敬うのは当然のこと、そんなことも教えていないとは。

 ほんとに妾のことを助けれるのか不安になってきたのじゃ。

「それで? いつごろ国に着くのじゃ! 妾には向こうでどんな生活が待ってるのじゃ? 妾は王族、いくら新参の小国とは言えみすぼらしい生活をさせたら怒るからの!」
「アナスタシア様、控えてください」

 む、なんじゃバニラ。王族とは確あるべしという姿を見せてるのじゃ。邪魔をするでない。

「なんなら、妾が統治してやってもいいのじゃぞ!」
「……ナオキよ。マーガレットには悪いが、このまま置いていくのはどうだ?」
「奇遇だねアーさん、僕も同じことを考えていたよ」

 え、え? 置いてく? 妾を? まさか、冗談でも許されんぞ……あ、本当に置いていこうとしている?!

「お、お待ちください! この通り、この通りですので!」
「ぬぉ?! バニラ?! 頭を押さえつけるな! 妾は王族だぞぉぉぉ」

 バニラに頭を押さえつけられて動けないのじゃ。なんたる屈辱的な格好。許さんぞ、許さんぞー!
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