メスイキしないと死ぬ呪いをかけられたので、ライバルに「抱いてくれ」と頼み込んだらヤンデレだった件。

野良猫のらん

文字の大きさ
1 / 5

第一話 呪いにかけられてしまった

しおりを挟む
「頼む、俺を抱いてくれ……ッ!」

 王国立魔術学院の生徒であり、闇魔術の天才的な使い手ジェイミーこと俺は、戸口で金髪碧眼のイケメンに向けて開口一番に言い放った。
 金髪碧眼の彼――クライドは、爆弾発言を受けても眉一つ動かさず、絶対零度の視線で俺を見下ろした。

 そもそもこんな頼み事をする羽目になったのも全て、クライドのせいだというのに。

 俺は事の次第を回想した。

 *

「またクライドが一位、だと……!? ぐぎぎぎぎ……!」

 学院のホールに張り出された成績順位表を前に、俺は歯軋りしていた。
 今回の期末試験の成績順位表の一番上に名前があったのは、クライドだった。俺は二位。
 俺は天才で一位になって当然なのに、いっつも一位をかっさらっていくのはクライドだ。俺がどんなに努力しても、アイツを追い越すことはできないのだ。

 ――ただでさえ、アイツは俺の憧れの光魔術を使いこなすのに。

 俺はホールにいるであろうアイツの姿を探した。
 いた。
 金髪碧眼、俺より頭一つ分は余分にある上背。魔術学院の生徒の癖に、まるで騎士のような体格。爽やかな笑顔。
 何もかもが俺とは違っている。得意属性すらも!

 父や祖父のように、俺も光魔術を使いこなすのだと思っていた。だが属性診断をした結果、俺には光魔術の才能は少しもないことが判明した。代わりに与えられたのは、闇魔術の才だった。

 闇魔術? いいさ、才を与えられたからには使いこなしてやるともさ。
 自分の黒髪黒目の見た目も嫌いではない。背は少々小さいが、上背なんて魔術師には必要ない。愛想が悪いから、なんだと言うのか。
 
 そう思っているのに、アイツは、クライドは俺の劣等感の全てを刺激していくのだ。

 ふと、クライドがこちらを振り向いた気がした。

「ふっ」

 笑った声なんて聞こえるはずないのに、はっきりと聞こえた気がした。
 
 これだ。アイツはいっつもこういう顔で俺のことを嘲笑うんだ。
 一見爽やかに見える、目を細めた笑み。けれどよくよく見ると、普段の微笑みより眦が一ミリほど上がっているのだ。その目元から、アイツの感じている「愉快さ」のようなものがアリアリと窺えた。

 クライドは、内心で俺をおかしく思って嘲笑っていやがるんだ!

 今日こそは、もう我慢ならなくなった。
 絶対にアイツをぎゃふんと言わせてやらねばならない。
 そのためには手段なんて選ぶべきではない。今までは間違っていたのだ。直接ぶちのめしてやらなければ。

 俺が向かったのは、学院の図書館だ。
 図書館の奥には、禁書庫がある。禁書を読んで、究極の闇魔術を身に着けるのだ。
 もちろん、禁書を勝手に読むのは禁じられている。だが俺は闇魔術で身体を透明化し、司書に見咎められずにするりと禁書庫に侵入した。
 透明化の魔術は高度なものだが、俺なら難なく使えるのだ。

 禁書庫に侵入した俺は、いい感じの本を探した。
 その末に、一冊の本に目が留まった。

「悪魔召喚……? これだ!」

 悪魔召喚の儀と銘打たれた本に、俺は目が釘付けになった。
 吟遊詩人が歌う歌でも、悪魔に秘術を教えてもらう魔術師はよく歌われる。
 悪魔ならば、究極の闇魔術を知っているはずだ。

 俺は本を広げると、内容に目を通した。

「ふんふん……」

 読んだ結果、俺の魔力量ならばこの場で悪魔を召喚できそうなことがわかった。流石俺だ。
 いつも持ち歩いているチョークで、床に魔法陣を描いた。俺ほどの魔術師ともなれば、道具もなしにフリーハンドで完璧な円を描けるのだ。
 それから禁書に記されている呪文を唱えた。

「我が使役し我が命じ我が支配する、我が前にこうべを垂れよ、黒き悪魔……!」

 本当はもっと長い呪文だが、詠唱破棄短縮呪文にしてやったぞ、俺は本当に有能だろう?

 急激に大量の魔力を消費したことにより、もくもくと紫色の魔術煙が発生する。
 煙が収まると、そこには青い肌の女がいた。

「不敬者め」

 次の瞬間には女は――いや、悪魔は俺の目の前にいて、俺の額に長い爪を突きつけていた。
 この悪魔はこの爪だけで俺の身体を引き裂ける。本能的に感じた。
 あ、俺死んだ?

「こんな不遜な呼び出しは初めてよ。さて、この不敬者はどんな風に殺してくれようか」

 俺の召喚の何かが、悪魔の機嫌をいたく損ねたようだ。
 このままでは殺されてしまうことを認識し、俺の身体はガクガクと震え出した。

「おや?」

 俺の黒い目を覗き込んでいた悪魔が、ふと片眉を上げる。

「おやおやおやおや、これはこれは」

 悪魔が両手で俺の顔を掴み、瞳の中を覗き込んでくる。

「ふふっ、これは面白くなりそうじゃ。よし、特別に命は見逃してやろう。代わりに、呪いは受けてもらうがな」
「の、呪いだと……!?」

 悪魔に呪われるだなんて。
 一体、どんな酷い呪いをかけられるのか。
 吟遊詩人の歌に出てくる悪魔の呪いといったら、それは酷いものばかりだ。死ぬ方がマシだというものばかりだと相場が決まっている。
 俺は絶望した。

「おぬしにかける呪いは――――毎日メスイキしないと死ぬ呪いじゃ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

趣味で乳首開発をしたらなぜか同僚(男)が近づいてきました

ねこみ
BL
タイトルそのまんまです。

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

年下くんに堕とされて。

bara
BL
イケメン後輩に堕とされるお話。 3話で本編完結です

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

「レジ袋はご利用になりますか?」

すずかけあおい
BL
仕事帰りに寄る、いつものコンビニで五十嵐 歩(いがらし あゆむ)はイヤホンをつけたまま会計をしてしまい、「――――?」なにかを聞かれたけれどきちんと聞き取れず。 「レジ袋はご利用になりますか?」だと思い、「はい」と答えたら、実際はそれは可愛い女性店員からの告白。 でも、ネームプレートを見たら『横山 天志(よこやま たかし)』…店員は男性でした。 天志は歩に「俺だけのネコになってください」と言って…。

美形でヤンデレなケモミミ男に求婚されて困ってる話

月夜の晩に
BL
ペットショップで買ったキツネが大人になったら美形ヤンデレケモミミ男になってしまい・・?

処理中です...