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第六十五話
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使い魔の殺害はこの国では殺人に次ぐ重罪である。
たとえ未遂に終わったとしても重罪であることには変わらない。
学生たちのしたことは退学どころの処分では済まない重いものだった。
だが彼らの罪を問わず退学だけで済ませる代わりに、僕の起こした魔力の暴走も正当防衛だったということで処理することになった。
僕はもうすぐのところで殺人者になってしまうところだった。
正当防衛ということになり僕の罪は不問となったが、償わなければならない罪だということは分かっている。
だから僕は医療魔術を修めて医者になることに決めた。
今度こそ絶対に魔術で人を傷つけず、逆に魔術で命を助けるのが僕の償いだ。
「エルネスト先生」
数日後、僕は学院の彼の私室を訪れていた。
彼は怪我の後遺症もなく、元気にしている。
「僕、シャルルくんと一度話をしてみようと思うんです」
この数日間僕は考えていたことがあった。
僕の中には光と闇の両方の魔力があった。
僕は光と闇の二重属性だったのである。
光属性も持っていることが分かると、自然と自分が本当の聖女の生まれ変わりなのだと悟った。
つまりシャルルくんが本物の聖女の生まれ変わりだという情報は間違っていたということだ。
何故シャルルくんはそんなことを言い出したのだろう。
僕は一度シャルルくんと会って話をしたかった。
「それで、その時にエルネスト先生に傍にいて欲しいんです」
僕は他人を信じることにした。
シャルルくんと二人きりで話すのは不安があった。
だから素直にエルネスト先生のことを頼るのだ。
「もちろんいいとも。君の頼みを断るものか」
彼は当然のようにこくりと頷いてくれた。
彼がいてくれることがこの上なく頼もしく感じた。
シャルルくんとは空き教室の一つを使って話をすることにした。
エルネスト先生とシャルルくんと僕の三人で話をするつもりだったのが、意外なことにここにもう一人加わることとなった。
話を聞いたマルステンが自分もついていくと言い出したのだ。
「あの後何があったのか聞いて、無理やりにでもついていかなかったことを後悔したのだ。今度は私も行くぞ」
マルステンは鼻息荒く主張した。
他の学生たちにはあの時のことは、魔術で使い魔の命を狙われたので僕も魔術を使って使い魔を守ったのだと説明されている。
ちなみに今日はエトワールにはお家でゆっくりしてもらっている。
彼は僕と一緒に登校したがっていたけれど、あんなことがあった直後だから休ませているのだ。
そういうわけでエルネスト先生とマルステンと一緒に僕らは空き教室に向かうことになった。
「ほう……? 二人はいつの間に仲良くなったのかね?」
ついてきたマルステンを見て、エルネスト先生が片眉を上げた。
その視線はマルステンのことを警戒しているのが分かる。
どうやらエルネスト先生の頭の中ではマルステンは一年生の時に僕が訴えた通りの危険人物のままらしい。
「知らなかったんですか? マルステンは僕の友人なんですよ」
僕は堂々と言った。
もっとも、マルステンが自分にとって大事な友人であると気が付いたのはここ数日のことだ。
大事な時に僕のことを案じ、助言をくれた彼は確かに友人であると気付いたのだ。
「わ、私が友人……!?」
マルステンが驚いたようにパチパチと瞬きをする。
彼のツリ目がまん丸く見開かれている。
納得したらしいエルネスト先生は、それ以上何も言わずにマルステンの同行を許可してくれた。
たとえ未遂に終わったとしても重罪であることには変わらない。
学生たちのしたことは退学どころの処分では済まない重いものだった。
だが彼らの罪を問わず退学だけで済ませる代わりに、僕の起こした魔力の暴走も正当防衛だったということで処理することになった。
僕はもうすぐのところで殺人者になってしまうところだった。
正当防衛ということになり僕の罪は不問となったが、償わなければならない罪だということは分かっている。
だから僕は医療魔術を修めて医者になることに決めた。
今度こそ絶対に魔術で人を傷つけず、逆に魔術で命を助けるのが僕の償いだ。
「エルネスト先生」
数日後、僕は学院の彼の私室を訪れていた。
彼は怪我の後遺症もなく、元気にしている。
「僕、シャルルくんと一度話をしてみようと思うんです」
この数日間僕は考えていたことがあった。
僕の中には光と闇の両方の魔力があった。
僕は光と闇の二重属性だったのである。
光属性も持っていることが分かると、自然と自分が本当の聖女の生まれ変わりなのだと悟った。
つまりシャルルくんが本物の聖女の生まれ変わりだという情報は間違っていたということだ。
何故シャルルくんはそんなことを言い出したのだろう。
僕は一度シャルルくんと会って話をしたかった。
「それで、その時にエルネスト先生に傍にいて欲しいんです」
僕は他人を信じることにした。
シャルルくんと二人きりで話すのは不安があった。
だから素直にエルネスト先生のことを頼るのだ。
「もちろんいいとも。君の頼みを断るものか」
彼は当然のようにこくりと頷いてくれた。
彼がいてくれることがこの上なく頼もしく感じた。
シャルルくんとは空き教室の一つを使って話をすることにした。
エルネスト先生とシャルルくんと僕の三人で話をするつもりだったのが、意外なことにここにもう一人加わることとなった。
話を聞いたマルステンが自分もついていくと言い出したのだ。
「あの後何があったのか聞いて、無理やりにでもついていかなかったことを後悔したのだ。今度は私も行くぞ」
マルステンは鼻息荒く主張した。
他の学生たちにはあの時のことは、魔術で使い魔の命を狙われたので僕も魔術を使って使い魔を守ったのだと説明されている。
ちなみに今日はエトワールにはお家でゆっくりしてもらっている。
彼は僕と一緒に登校したがっていたけれど、あんなことがあった直後だから休ませているのだ。
そういうわけでエルネスト先生とマルステンと一緒に僕らは空き教室に向かうことになった。
「ほう……? 二人はいつの間に仲良くなったのかね?」
ついてきたマルステンを見て、エルネスト先生が片眉を上げた。
その視線はマルステンのことを警戒しているのが分かる。
どうやらエルネスト先生の頭の中ではマルステンは一年生の時に僕が訴えた通りの危険人物のままらしい。
「知らなかったんですか? マルステンは僕の友人なんですよ」
僕は堂々と言った。
もっとも、マルステンが自分にとって大事な友人であると気が付いたのはここ数日のことだ。
大事な時に僕のことを案じ、助言をくれた彼は確かに友人であると気付いたのだ。
「わ、私が友人……!?」
マルステンが驚いたようにパチパチと瞬きをする。
彼のツリ目がまん丸く見開かれている。
納得したらしいエルネスト先生は、それ以上何も言わずにマルステンの同行を許可してくれた。
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