文字の大きさ
大
中
小
17 / 28
番外編
宰相のその後
「汝、如何なる時も伴侶を何よりも愛し、伴侶の幸福の為に力を尽くすと誓うか?」
「誓います」
二人の男の声が重なった。
国王陛下ら国の重鎮が見守る中、彼らは唇を重ね合った。
この日精霊の御前で契りを交わしたのは第一王子アレクサンドル殿下とそのフィアンセである。
そしてアレクサンドルの頭の上には教皇の手によって金の冠が載せられた。
アレクサンドルが次期王に内定したという証である。
数年以内に正式な戴冠式が執り行われ、国王の座は代替わりするだろう。
それを苦々しく見つめるのはエドモン・コルリアーヴ……もはや宰相ですらなくなった男であった。
「ハッ」
次期王の披露宴の会場で、エドモンは隅の壁にもたれかかってワイングラスを傾けていた。
アレクサンドル王子は本当ならば聖女を逃したかどで王太子の座を廃止されるはずだったのだ。
そうなれば甥である第二王子シメオストルが次期王で決定になるはずだった。
笑えるくらいに何もかもが上手くいっていた。
そう思えたのは聖女ことフランソワ・フィルブリッヒが戻ってくるまでのことだった。
あの聖女は戻ってくるなり犠牲をゼロにするばかりか魔王を倒してしまう案を披露し、国王陛下はその案を採択した。
一転してアレクサンドル殿下は聖女を救った英雄として扱われ、エドモンは非道な案を提案したとして宰相の座を下ろされ、一介の文官として扱われることとなった。
国王陛下も含めて皆が私の案に賛成していた癖に。アレクサンドル以外はみな私と同罪だろうが。
理不尽さにこの披露宴の場を滅茶苦茶にしたくなるような怒りを抑えながら、エドモンはただただ葡萄酒を胃に流し込んでいた。
「あの……叔父上」
誰も話しかけられない苦々しげな雰囲気を放っているエドモンに話しかけたのは、彼の甥である第二王子シメオストル殿下だった。
まだ十五歳の気弱そうな少年である。青みがかった銀髪が美しく、母親似の顔立ちのせいでノンノワールのように見える。そうでないことは知っているが。
「おやおや、これはこれはシメオストル殿下ではありませんか。第二王子様が一介の文官風情に何の御用で? 文官風情をいちいち気にかけていては出世できませんよ」
エドモンは自虐の窮まった返事を返す。
もう何もかもがどうでもよくなっていた。
「文官風情だなんてそんな、叔父上は頭が良くて……」
「どんなに頭が良かろうと、実質的に国政に携わることを禁じられたのです。国史編纂室長なんて閑職を押し付けられてね。そうなればもう頭の良さなんて宝の持ち腐れです」
国史の編纂?
それも良かろう、そういうことをする人間も国には必要だ。
だが宰相だった人間をそんな職につけるという懲罰的な異動には屈辱しか覚えなかった。
「つまり、叔父上は今のお仕事が嫌なんですね?」
「おや、喜んでやっているように見えましたかな?」
「いえ。確認です」
そんなことを確認してなんになるのか、とエドモンはそこで初めて自分の甥御に視線を落とす。
「じゃあ叔父上がお仕事をやめられるようにしてさしあげます」
「は?」
ポカンと口を開いた次の瞬間、甥御はこう口にした。
「叔父上、僕と結婚して下さい……!」
「……え?」
エドモンは一瞬、自分はとんでもない聞き間違いをしたのだと思った。
だって、誰と誰が結婚するだって?
「大人になってからノンノワール化の薬を継続摂取するのは副作用がキツくて辛いと聞きます。それでも、叔父上には僕の伴侶になっていただきたいんです……!」
シメオストルの幼い瞳は真剣だった。
それで聞き間違いではなかったことを悟った。
しかも自分の方がノンノワールになる想定らしい。
「……王国法では血縁関係で結婚できるのは従兄弟からで」
「知ってます、叔父上は養子なんですよね?」
「な……っ!?」
甥御の言葉にエドモンは目を剥いた。
彼の口にしたことは事実であった。
シメオストルの母親が国王との婚約が決まった後で、跡継ぎである長男が事故死してしまったのだ。そこで頭の良さを買われてエドモンがコルリアーヴ家の養子になったのである。
「何故それを……」
「叔父上と結婚したいと母上に相談したら教えていただけました」
つまり、シメオストルとエドモンが結婚することには血縁上の問題はないのである。
それを自分の甥御が知っていることを認識したエドモンは震える。
「ハ……つまりなんですか、国政に携わることすら出来なくなった男は母となって子を産み育てるくらいしかできることはないと、それがコルリアーヴ家の決定なのでしょうか?」
エドモンはそれを烙印と受け取った。
だが、シメオストルはハッキリと首を横に振る。
「いいえ、コルリアーヴ家の意向は関係ありません。それにむしろ叔父上に国政に携わって欲しくて言っているのです」
「はい?」
そんなこと言われたって、私は左遷されたのだ。
これ以上どう国政に関わりようがあるというのか。
エドモンは目が点になった。
「叔父上はもともと、僕を傀儡にして国政を牛耳るおつもりだったんですよね」
「……ッ!」
不意打ちにエドモンは声が出なかった。
まさか甥がそのことを察知しているとは夢にも思わなかったから。
「僕は悪巧みをしている叔父上の顔が好きでした。だから今までは叔父上のことが好きでも思いを胸に秘めておこうと思っていたんです。宰相をやっている叔父上は活き活きとしていたから。……でも、状況は変わりました」
シメオストルはそっとエドモンの手を握る。
「僕は次期国王となる兄上の臣下になるでしょう。その時、僕のことを叔父上のために使ってください」
「それは、どういう……」
「国王になった僕を宰相として傀儡にしようとしていたように、兄上の臣下となった僕を伴侶として操って下さい! そうすれば叔父上は多少なりとも国政に携われるはずです!」
「な……」
シメオストルから感じるのは、本気の愛だった。
出世とかいつか国王の座を兄から奪うためとかではなく、愛のために自分の身を捧げようとしているのだということが痛いほどに伝わってきた。
近くで火が温めているかのように、頬がだんだんと熱くなっていく。
「え、ぁ、いや、でも、私は宰相としては若過ぎましたが、逆にノンノワールとして婿入りするには年を取り過ぎています。シメオストル殿下にはこんな年増などではなく、もっといい伴侶がいますよ」
甥御に愛の告白をされたエドモンが思いついたのは、凡百で月並みな言葉だけであった。
あれほど冴えていた頭も愛の言葉に対してはどう対処して良いやら何も思いつかなかった。
「年など気になりません! 僕は叔父上がいいんです!」
真っ直ぐな言葉が薄っぺらい反論を打ち砕く。
そうなるともうエドモンには思い付く言葉がなかった。
「え、あ、でも……」
「叔父上、結婚して下さい!」
甥の大声に周囲の視線が集まる。
「あう……は、はい、よろしくお願いします……」
伴侶を通してでもいいから国の政治に関われるのはエドモンにとっても願ったり叶ったりなのだ。
どうしても断る言い訳が見つからなかった。
完璧に言い訳を封じられてしまった。
もしかして自分の甥は爪を隠しているだけで結構な策士なのではないかと思えた。
こうして衆人環視の中甥御との結婚が内々に決まってしまったのだった。
(それにしても……)
甥御は今まで自分のことをどう見ていたのだろう。
彼が成人した暁には自分の半分ほどの年齢の甥御にベッドの上で組み敷かれるのだと思うと、ゾクゾクするものがあった。
「叔父上、一緒にいーっぱいイケナイことしましょうね♡」
(イケナイことって、悪巧みのことですよね……?)
年下の甥御に逆らえない予感を既にヒシヒシと感じ、エドモンは冷や汗を垂らしたのだった。
「誓います」
二人の男の声が重なった。
国王陛下ら国の重鎮が見守る中、彼らは唇を重ね合った。
この日精霊の御前で契りを交わしたのは第一王子アレクサンドル殿下とそのフィアンセである。
そしてアレクサンドルの頭の上には教皇の手によって金の冠が載せられた。
アレクサンドルが次期王に内定したという証である。
数年以内に正式な戴冠式が執り行われ、国王の座は代替わりするだろう。
それを苦々しく見つめるのはエドモン・コルリアーヴ……もはや宰相ですらなくなった男であった。
「ハッ」
次期王の披露宴の会場で、エドモンは隅の壁にもたれかかってワイングラスを傾けていた。
アレクサンドル王子は本当ならば聖女を逃したかどで王太子の座を廃止されるはずだったのだ。
そうなれば甥である第二王子シメオストルが次期王で決定になるはずだった。
笑えるくらいに何もかもが上手くいっていた。
そう思えたのは聖女ことフランソワ・フィルブリッヒが戻ってくるまでのことだった。
あの聖女は戻ってくるなり犠牲をゼロにするばかりか魔王を倒してしまう案を披露し、国王陛下はその案を採択した。
一転してアレクサンドル殿下は聖女を救った英雄として扱われ、エドモンは非道な案を提案したとして宰相の座を下ろされ、一介の文官として扱われることとなった。
国王陛下も含めて皆が私の案に賛成していた癖に。アレクサンドル以外はみな私と同罪だろうが。
理不尽さにこの披露宴の場を滅茶苦茶にしたくなるような怒りを抑えながら、エドモンはただただ葡萄酒を胃に流し込んでいた。
「あの……叔父上」
誰も話しかけられない苦々しげな雰囲気を放っているエドモンに話しかけたのは、彼の甥である第二王子シメオストル殿下だった。
まだ十五歳の気弱そうな少年である。青みがかった銀髪が美しく、母親似の顔立ちのせいでノンノワールのように見える。そうでないことは知っているが。
「おやおや、これはこれはシメオストル殿下ではありませんか。第二王子様が一介の文官風情に何の御用で? 文官風情をいちいち気にかけていては出世できませんよ」
エドモンは自虐の窮まった返事を返す。
もう何もかもがどうでもよくなっていた。
「文官風情だなんてそんな、叔父上は頭が良くて……」
「どんなに頭が良かろうと、実質的に国政に携わることを禁じられたのです。国史編纂室長なんて閑職を押し付けられてね。そうなればもう頭の良さなんて宝の持ち腐れです」
国史の編纂?
それも良かろう、そういうことをする人間も国には必要だ。
だが宰相だった人間をそんな職につけるという懲罰的な異動には屈辱しか覚えなかった。
「つまり、叔父上は今のお仕事が嫌なんですね?」
「おや、喜んでやっているように見えましたかな?」
「いえ。確認です」
そんなことを確認してなんになるのか、とエドモンはそこで初めて自分の甥御に視線を落とす。
「じゃあ叔父上がお仕事をやめられるようにしてさしあげます」
「は?」
ポカンと口を開いた次の瞬間、甥御はこう口にした。
「叔父上、僕と結婚して下さい……!」
「……え?」
エドモンは一瞬、自分はとんでもない聞き間違いをしたのだと思った。
だって、誰と誰が結婚するだって?
「大人になってからノンノワール化の薬を継続摂取するのは副作用がキツくて辛いと聞きます。それでも、叔父上には僕の伴侶になっていただきたいんです……!」
シメオストルの幼い瞳は真剣だった。
それで聞き間違いではなかったことを悟った。
しかも自分の方がノンノワールになる想定らしい。
「……王国法では血縁関係で結婚できるのは従兄弟からで」
「知ってます、叔父上は養子なんですよね?」
「な……っ!?」
甥御の言葉にエドモンは目を剥いた。
彼の口にしたことは事実であった。
シメオストルの母親が国王との婚約が決まった後で、跡継ぎである長男が事故死してしまったのだ。そこで頭の良さを買われてエドモンがコルリアーヴ家の養子になったのである。
「何故それを……」
「叔父上と結婚したいと母上に相談したら教えていただけました」
つまり、シメオストルとエドモンが結婚することには血縁上の問題はないのである。
それを自分の甥御が知っていることを認識したエドモンは震える。
「ハ……つまりなんですか、国政に携わることすら出来なくなった男は母となって子を産み育てるくらいしかできることはないと、それがコルリアーヴ家の決定なのでしょうか?」
エドモンはそれを烙印と受け取った。
だが、シメオストルはハッキリと首を横に振る。
「いいえ、コルリアーヴ家の意向は関係ありません。それにむしろ叔父上に国政に携わって欲しくて言っているのです」
「はい?」
そんなこと言われたって、私は左遷されたのだ。
これ以上どう国政に関わりようがあるというのか。
エドモンは目が点になった。
「叔父上はもともと、僕を傀儡にして国政を牛耳るおつもりだったんですよね」
「……ッ!」
不意打ちにエドモンは声が出なかった。
まさか甥がそのことを察知しているとは夢にも思わなかったから。
「僕は悪巧みをしている叔父上の顔が好きでした。だから今までは叔父上のことが好きでも思いを胸に秘めておこうと思っていたんです。宰相をやっている叔父上は活き活きとしていたから。……でも、状況は変わりました」
シメオストルはそっとエドモンの手を握る。
「僕は次期国王となる兄上の臣下になるでしょう。その時、僕のことを叔父上のために使ってください」
「それは、どういう……」
「国王になった僕を宰相として傀儡にしようとしていたように、兄上の臣下となった僕を伴侶として操って下さい! そうすれば叔父上は多少なりとも国政に携われるはずです!」
「な……」
シメオストルから感じるのは、本気の愛だった。
出世とかいつか国王の座を兄から奪うためとかではなく、愛のために自分の身を捧げようとしているのだということが痛いほどに伝わってきた。
近くで火が温めているかのように、頬がだんだんと熱くなっていく。
「え、ぁ、いや、でも、私は宰相としては若過ぎましたが、逆にノンノワールとして婿入りするには年を取り過ぎています。シメオストル殿下にはこんな年増などではなく、もっといい伴侶がいますよ」
甥御に愛の告白をされたエドモンが思いついたのは、凡百で月並みな言葉だけであった。
あれほど冴えていた頭も愛の言葉に対してはどう対処して良いやら何も思いつかなかった。
「年など気になりません! 僕は叔父上がいいんです!」
真っ直ぐな言葉が薄っぺらい反論を打ち砕く。
そうなるともうエドモンには思い付く言葉がなかった。
「え、あ、でも……」
「叔父上、結婚して下さい!」
甥の大声に周囲の視線が集まる。
「あう……は、はい、よろしくお願いします……」
伴侶を通してでもいいから国の政治に関われるのはエドモンにとっても願ったり叶ったりなのだ。
どうしても断る言い訳が見つからなかった。
完璧に言い訳を封じられてしまった。
もしかして自分の甥は爪を隠しているだけで結構な策士なのではないかと思えた。
こうして衆人環視の中甥御との結婚が内々に決まってしまったのだった。
(それにしても……)
甥御は今まで自分のことをどう見ていたのだろう。
彼が成人した暁には自分の半分ほどの年齢の甥御にベッドの上で組み敷かれるのだと思うと、ゾクゾクするものがあった。
「叔父上、一緒にいーっぱいイケナイことしましょうね♡」
(イケナイことって、悪巧みのことですよね……?)
年下の甥御に逆らえない予感を既にヒシヒシと感じ、エドモンは冷や汗を垂らしたのだった。
感想 207
あなたにおすすめの小説
初夜のあとに愛する人がいると言われたので祝福で身体の時間を一日戻しました
夫婦となって初めて迎えた夜、セレンティアは夫リオールから「俺には、愛する人がいる」と告げられる。
彼が初夜を済ませた理由は、三年後に白い結婚として婚姻無効を申し立てられないようにするためだった。
けれどリオールは知らなかった。セレンティアの祝福《一日回帰》が、自分自身の身体にも使えることを。
セレンティアは自分の身体の時間を一日前へ戻し、三年間、侯爵家の妻として務めを果たすことを決める。
夫に愛されるためではない。三年後、白い結婚としてこの家を出ていくために。
【完結】悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
本編完結済です。
おまけのお話を更新しています。
皆の動画をつくりました!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
動画にAIを使っていますが、小説にはAIを使っておりません
皆さまの応援のおかげで『もふもふ獣人に転生したら、最愛の推しに溺愛されています』書籍化、心から、ありがとうございます!
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
【完結】憧れの先輩アルファに告白されたんだがどうやら罰ゲームだったらしい
ある日の放課後、校舎裏で花壇の手入れをしていた上田凛斗に告白してきたのは、憧れの先輩であり校内の人気者でもある上條蘭世だった。
目付きの悪さと暗い性格のせいで恋人どころか友達もいない凛斗は、戸惑いながらもお試しで蘭世との交際をはじめたのだが……
美形溺愛アルファ×三白眼平凡オメガ
弟の未来と引き換えに、恋人を捨てたはずだった
伯爵家長男レオンハルトには、誰にも言えない恋人がいた。
だが父に関係を知られた彼は、弟の恋を守る代償として恋人との別れと政略結婚を選ぶ。
数年後。
王家の養子となった公爵家嫡男として現れたのは、かつて自ら手放した最愛の人エリオットだった。
これは弟のために愛を諦めた男と、捨てられたと思い込んだ男が、失われた恋を取り戻す物語。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
身代わりの恋人は、兄のためだった
名門アシュベリー伯爵家。
嫡男エドガーは、侯爵家嫡男ルシアンと秘密裏に恋人関係にあった。
しかしその関係が親に知られ、エドガーは家督と引き換えに恋を諦める。
残されたルシアンは傷つき、社交界から姿を消した。
兄の苦しむ姿を見ていられなかった弟レオンは、ある提案をする。
「兄上を忘れるまででいい。僕と付き合いませんか」
それは兄を救うための、偽りの恋人関係だった。
けれど。
兄の代わりとして見られながらも、レオンは次第にルシアンに惹かれていく。
そしてルシアンもまた、“似ている誰か”ではなく、レオン自身を愛し始めてしまう。
これは、誰かの代わりだった少年が、初めて“自分の恋”を選ぶ物語。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。