悪逆第四皇子は僕のお兄ちゃんだぞっ! ~商人になりたいので悪逆皇子の兄と組むことにします~

野良猫のらん

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第一部 リューナジア城編

第二話 第五皇子だぞっ!

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「カレン殿下、大丈夫ですか!?」

 え、今なんて言った? 殿下?
 つまり僕は皇子様なのか?

 眩暈を覚えながら僕は立ち上がった。
 視界に小さな手と小さな足が写る。三、四歳児くらいの身体だ。
 どうやら僕は本当に転生できたようだった。

「ああ、カレン殿下。この乳母を心配させないで下さいまし」

 メイドさんのような中年の女性が駆け寄って来る。
 どうやら僕は外を歩いていて転んだところらしい。
 僕はふわふわの煌びやかな服を着せられている。
 どうやら高貴な身分に転生したのは確かなことらしい。

 これは計算外だ。
 タソトキでは主人公は平民出身であるから、もちろん僕も片田舎の平民として転生するものだとばかり思っていた。
 まさか皇子になるとは。身分なんて欠片ほども興味ないのに。

 しかも僕はカレン殿下と呼ばれていなかっただろうか?
 カレン殿下と言えば、タソトキの設定では流産になって生まれる前に死んでしまった幻の第五皇子という設定上だけの存在だ。
 どうやら僕は本来ならば死んでいた登場人物として転生したらしい。

「けほ、けほ!」

 そう考えていたら、突然咳が喉を突いて出る。

「ああ! 身体が弱いのにご無理をなさるから!」

 それになんだか頭が熱っぽくてぼんやりとする。
 身体が弱いってそれ……本当は死んでるはずだったのに転生で生まれてきた代償とか?
 そん、な……僕は行商人になりたいのに。



 それから数日間、僕はベッドの上から動けなかった。
 ずっと高熱を出していたのだ。

 この身体は本格的に病弱なようだった。
 ベッドから漏れ聞いた話によると、僕ことカレンは寝込んでいない日の方が珍しいらしい。
 僕はもうすぐ五歳になるらしいのに、身体は同じ年齢の子と比べて一回り小さいようだった。
 こんな調子で僕は行商人になれるのだろうか。

 いや、待てよ?
 そもそも病弱かどうかに関わらず僕は行商人にはなれないんじゃないかと思い至った。
 だって僕は皇子だ。行商人になるなんて周りが許してくれないんじゃないだろうか。
 「僕は行商人になりたいんだー! 行商中毒だー!」と主張したら最悪の場合悪魔憑き扱いされるかもしれない。
 何せ悪魔憑き扱いされた皇子の前例があるのだから。

 その悪魔憑き扱いされた皇子というのがカレンの兄、第四皇子である。
 第四皇子は自分で何かを工作して発明するのが大好きだった。賢かった彼の発明品は"科学の結晶"と呼ぶのに相応しいほどまでの代物になった。だが魔法だけが発達し科学が未知のこの国では彼の発明は異端でしかなかった。だから第四皇子は悪魔憑きとされ、療養と称して遠い離宮に幽閉された。
 名前はなんだったかな……そう、ウィルフリートだ。

 そんな環境だから、この世界では行商人になるどころか前世の知識を活かしてチートとかやるだけで悪魔憑き扱いされることは間違いなかった――――何と言うことだ!
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