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第一部 リューナジア城編
第二十五話 お誕生日だぞっ!
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「わあ……!」
誕生日の朝、目が覚めると既に部屋が賑やかに飾り付けされていた。
乳母やメイドさんたちによるちょっとしたサプライズだ。
「えへへ、ありがとう!」
「殿下が喜んでくれて、飾り付けを頑張った甲斐がありましたよ」
乳母といつも朝の着付けを手伝ってくれるメイドさんたちに大声で礼を言うと、みんなにこりと微笑んでくれた。
「さあ殿下。今日は特別綺麗にドレスアップしましょうね」
「わーい」
ベッドから起き上がると、いつもより飾りの多いヒラヒラのドレスを着付けられる。
誕生日であっても病除けの風習の女装は続くらしい。
それにしても一つ疑問に思うことがある。
王侯貴族の誕生日パーティと言ったら普通、大勢の貴族を国内外から招いて中庭や大広間などで盛大なパーティを催すものではないだろうか。
僕の誕生日会はあんまりにもささやか過ぎる気がする。
まるで僕の存在が周囲に秘密にされて隠されているみたいだ。
まあ盛大なパーティなど開催されても僕の体力がもたないだろうから、自室でご馳走を食べるだけの今日みたいな誕生日会の方が僕にはありがたい。
きっと大人たちもそのことが分かっているから、ささやかなお祝いだけで済ませてくれるのだろう。
「殿下の髪は本当に綺麗ですねえ」
メイドさんたちが櫛を通す度に僕の金髪はきらきらと煌めく。
そして髪を梳き終わると、メイドさんたちは金髪を複雑に編み始める。
メイドさんたちの手が離れると、まるでお姫様みたいな髪型になった僕の姿が鏡に写っていた。
「わあ、すごーい!」
メイドさんたちの技術に感心して僕は感嘆の声を上げた。
「来年になったら殿下のこういう姿も見られなくなるかと思うと、少し寂しいですね」
乳母がしみじみと呟いた。
「来年? 何があるの?」
乳母を見上げて尋ねる。
「六歳になれば男の子の格好をしてよくなるんですよ」
「本当!? やったぁー!」
病除けの風習はどうやら六歳の誕生日で終わりらしい。
来年になったら新しい格好ができるという事実に僕はワクワクとした。
お誕生日会は正午からだ。
お昼が近くなってくるとご馳走が部屋に運び込まれてきて、着々とパーティの準備が整ってきた。
コンコン、ドアがノックされる。
「ウィルフリート殿下が到着されました」
「!」
お兄ちゃんが来てくれた!
メイドさんによってドアが恭しく開かれ、兄が姿を現した。
「わあ――――」
今日の兄の格好は一味違った。
艶やかな黒髪をオールバックにし、美しい金の刺繍がされた黒い宮廷服を身に纏っていた。
こうして見ると兄は恐ろしくイケメンだ。今さらながらに僕は兄の顔の良さに気が付いた。
思わず穴が空きそうなほど彼の顔を見つめてしまった。
周囲のメイドさんたちからも「まあ」などと溜息が漏れる。
「……な、何だその顔は。弟の誕生日なのだから正装ぐらいするだろう」
僕が黙り込むものだから、ウィルフリートは眉を吊り上げた。
「お兄ちゃんがかっこいいからすごいビックリしちゃった!」
「ふん、そうか」
僕のその言葉を彼は鼻を鳴らして軽く流すが、彼の頬が赤くなっていることからそれが照れ隠しであることが分かった。
乳母やメイドさんたちの視線が兄に一心に注がれている。
それは偏見や嫌悪の視線ではなく、羨望を含んだ驚きの視線だ。
こういう注目のされ方に慣れていないのか、兄は居心地が悪そうにしている。
兄のことだから社交界にはあまり顔を出したことがないのだろう。
皆正装をしている兄の姿を見るのは初めてなのだろう。
僕のお兄ちゃんはこんなにかっこいいんだぞ、と我が事のように誇らしくなった。
誕生日の朝、目が覚めると既に部屋が賑やかに飾り付けされていた。
乳母やメイドさんたちによるちょっとしたサプライズだ。
「えへへ、ありがとう!」
「殿下が喜んでくれて、飾り付けを頑張った甲斐がありましたよ」
乳母といつも朝の着付けを手伝ってくれるメイドさんたちに大声で礼を言うと、みんなにこりと微笑んでくれた。
「さあ殿下。今日は特別綺麗にドレスアップしましょうね」
「わーい」
ベッドから起き上がると、いつもより飾りの多いヒラヒラのドレスを着付けられる。
誕生日であっても病除けの風習の女装は続くらしい。
それにしても一つ疑問に思うことがある。
王侯貴族の誕生日パーティと言ったら普通、大勢の貴族を国内外から招いて中庭や大広間などで盛大なパーティを催すものではないだろうか。
僕の誕生日会はあんまりにもささやか過ぎる気がする。
まるで僕の存在が周囲に秘密にされて隠されているみたいだ。
まあ盛大なパーティなど開催されても僕の体力がもたないだろうから、自室でご馳走を食べるだけの今日みたいな誕生日会の方が僕にはありがたい。
きっと大人たちもそのことが分かっているから、ささやかなお祝いだけで済ませてくれるのだろう。
「殿下の髪は本当に綺麗ですねえ」
メイドさんたちが櫛を通す度に僕の金髪はきらきらと煌めく。
そして髪を梳き終わると、メイドさんたちは金髪を複雑に編み始める。
メイドさんたちの手が離れると、まるでお姫様みたいな髪型になった僕の姿が鏡に写っていた。
「わあ、すごーい!」
メイドさんたちの技術に感心して僕は感嘆の声を上げた。
「来年になったら殿下のこういう姿も見られなくなるかと思うと、少し寂しいですね」
乳母がしみじみと呟いた。
「来年? 何があるの?」
乳母を見上げて尋ねる。
「六歳になれば男の子の格好をしてよくなるんですよ」
「本当!? やったぁー!」
病除けの風習はどうやら六歳の誕生日で終わりらしい。
来年になったら新しい格好ができるという事実に僕はワクワクとした。
お誕生日会は正午からだ。
お昼が近くなってくるとご馳走が部屋に運び込まれてきて、着々とパーティの準備が整ってきた。
コンコン、ドアがノックされる。
「ウィルフリート殿下が到着されました」
「!」
お兄ちゃんが来てくれた!
メイドさんによってドアが恭しく開かれ、兄が姿を現した。
「わあ――――」
今日の兄の格好は一味違った。
艶やかな黒髪をオールバックにし、美しい金の刺繍がされた黒い宮廷服を身に纏っていた。
こうして見ると兄は恐ろしくイケメンだ。今さらながらに僕は兄の顔の良さに気が付いた。
思わず穴が空きそうなほど彼の顔を見つめてしまった。
周囲のメイドさんたちからも「まあ」などと溜息が漏れる。
「……な、何だその顔は。弟の誕生日なのだから正装ぐらいするだろう」
僕が黙り込むものだから、ウィルフリートは眉を吊り上げた。
「お兄ちゃんがかっこいいからすごいビックリしちゃった!」
「ふん、そうか」
僕のその言葉を彼は鼻を鳴らして軽く流すが、彼の頬が赤くなっていることからそれが照れ隠しであることが分かった。
乳母やメイドさんたちの視線が兄に一心に注がれている。
それは偏見や嫌悪の視線ではなく、羨望を含んだ驚きの視線だ。
こういう注目のされ方に慣れていないのか、兄は居心地が悪そうにしている。
兄のことだから社交界にはあまり顔を出したことがないのだろう。
皆正装をしている兄の姿を見るのは初めてなのだろう。
僕のお兄ちゃんはこんなにかっこいいんだぞ、と我が事のように誇らしくなった。
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