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第二部 セルフィニエ辺境伯領編
第百三十八話 中央からのお手紙 ②
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ブラックウェルさんからの手紙を僕が読み終わった頃、お兄ちゃんは暖炉の傍に屈んでいた。
南部は暖かいから僕は暖炉を使ったことはない。
お兄ちゃんは肌寒いのかなと思っていると、何とそこでマクシミリアンからの手紙に火を点け出した。
「ちょ、ちょちょちょっと何してるのお兄ちゃん!?」
実は手紙を燃やすほどマクシミリアンのことが嫌いだったのだろうかと慌てた。
「読んだらすぐ燃やせと書かれていたからな」
「えっ!?」
読んだらすぐに処分しろなんてそんなスパイ映画みたいな……。
ということはかなりヤバいことが書かれていたのだろうか。
「廃止された魔術院に勤めていた者がどうなったのかその後の動向を調べるようマクシミリアンに依頼していたんだ。『私どもは探偵ではないのですが』などと言いながら実に詳細に調べ上げてくれたよ」
「魔術院……!」
お兄ちゃんは魔術院について調べ続けていたんだ。
一体どんな事実が判明したのだろう。
「なんと魔術院に勤めていた者は現在一人残らず魔術師をやめているらしい」
「魔術師をやめてる……!?」
衝撃の事実に僕は目を丸くする。
魔術院になんて勤めてるくらいだからみんな凄い魔術師だったはずなのに、それが全員魔術師をやめてしまったなんて何があったのだろう。
「さらに魔術院の院長とその弟子数名に至っては行方すら不明になっている」
「行方不明者すらいるなんて……」
一体魔術院に何があったのだろう。
何があれば秘密裏にそんなことなってしまうのだろう。
僕がタソトキで魔術師プレイをしていれば真相を知れたかもしれないのに。
この国で一番魔石を消費していた魔術機関が潰れ、そこに勤めていた者も個人で研究を継続する訳でもなく魔術師をやめているのならばそりゃ魔石の需要が大幅に減少する訳だ。価格も暴落するだろう。
行商人としてしかタソトキの物語に関わらなかった僕にはそんなことしか分からない。
「これはマクシミリアンの予想だがな……院長とその一派は南部事変の首謀者だったんじゃないかとあった」
「っ!」
兄の静かな言葉にはっと息を呑んだ。
瞬時にあのスモークヒルから来たというボロを纏ったあの人たちのことが脳裏に浮かぶ。
一つの村を破壊し色んな人の人生を滅茶苦茶にした元凶が魔術院の院長だった……?
「院長と弟子らは魔術院の醜聞を漏らさないように秘密裏に処刑され、そして他の魔術師たちも連帯責任として魔術を封じられたのではないかと」
確かに。それなら外に情報が出ない訳だ。
だが同時に僕はその説に少し違和感も覚えていた。
「でも院長がどんなに酷いことをしたのだとしても、新しい院長を据えて魔術院は存続させればいいのに……」
魔術院はこの月の国にとって大きな財産だったはずだ。
タソトキでは月の国は最も魔術の栄えている国であるという設定だった。
この国でも最高峰の魔術師たちが集まっていたであろうに、それを連帯責任なんかで魔術を封じてしまうだろうか? そもそもそんな優れた魔術師の魔術を封じることなど可能なのだろうか?
「……まるで封じられたんじゃなくて、自分の意思で魔術を使わなくなったみたい」
気味の悪いものを感じ、ぽつりと呟いた。
南部は暖かいから僕は暖炉を使ったことはない。
お兄ちゃんは肌寒いのかなと思っていると、何とそこでマクシミリアンからの手紙に火を点け出した。
「ちょ、ちょちょちょっと何してるのお兄ちゃん!?」
実は手紙を燃やすほどマクシミリアンのことが嫌いだったのだろうかと慌てた。
「読んだらすぐ燃やせと書かれていたからな」
「えっ!?」
読んだらすぐに処分しろなんてそんなスパイ映画みたいな……。
ということはかなりヤバいことが書かれていたのだろうか。
「廃止された魔術院に勤めていた者がどうなったのかその後の動向を調べるようマクシミリアンに依頼していたんだ。『私どもは探偵ではないのですが』などと言いながら実に詳細に調べ上げてくれたよ」
「魔術院……!」
お兄ちゃんは魔術院について調べ続けていたんだ。
一体どんな事実が判明したのだろう。
「なんと魔術院に勤めていた者は現在一人残らず魔術師をやめているらしい」
「魔術師をやめてる……!?」
衝撃の事実に僕は目を丸くする。
魔術院になんて勤めてるくらいだからみんな凄い魔術師だったはずなのに、それが全員魔術師をやめてしまったなんて何があったのだろう。
「さらに魔術院の院長とその弟子数名に至っては行方すら不明になっている」
「行方不明者すらいるなんて……」
一体魔術院に何があったのだろう。
何があれば秘密裏にそんなことなってしまうのだろう。
僕がタソトキで魔術師プレイをしていれば真相を知れたかもしれないのに。
この国で一番魔石を消費していた魔術機関が潰れ、そこに勤めていた者も個人で研究を継続する訳でもなく魔術師をやめているのならばそりゃ魔石の需要が大幅に減少する訳だ。価格も暴落するだろう。
行商人としてしかタソトキの物語に関わらなかった僕にはそんなことしか分からない。
「これはマクシミリアンの予想だがな……院長とその一派は南部事変の首謀者だったんじゃないかとあった」
「っ!」
兄の静かな言葉にはっと息を呑んだ。
瞬時にあのスモークヒルから来たというボロを纏ったあの人たちのことが脳裏に浮かぶ。
一つの村を破壊し色んな人の人生を滅茶苦茶にした元凶が魔術院の院長だった……?
「院長と弟子らは魔術院の醜聞を漏らさないように秘密裏に処刑され、そして他の魔術師たちも連帯責任として魔術を封じられたのではないかと」
確かに。それなら外に情報が出ない訳だ。
だが同時に僕はその説に少し違和感も覚えていた。
「でも院長がどんなに酷いことをしたのだとしても、新しい院長を据えて魔術院は存続させればいいのに……」
魔術院はこの月の国にとって大きな財産だったはずだ。
タソトキでは月の国は最も魔術の栄えている国であるという設定だった。
この国でも最高峰の魔術師たちが集まっていたであろうに、それを連帯責任なんかで魔術を封じてしまうだろうか? そもそもそんな優れた魔術師の魔術を封じることなど可能なのだろうか?
「……まるで封じられたんじゃなくて、自分の意思で魔術を使わなくなったみたい」
気味の悪いものを感じ、ぽつりと呟いた。
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