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第二章 十二王家の目覚め
29話 忍び寄る影
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心地よい風が吹く。アルフィーは日当たりが良い芝生に座って居た。隣にはレティシアも座っており、フィーが周辺を走り回っている。
一瞬、風が強くなった。急に影が覆われる。空を見上げると、怪鳥が飛んでいた。鳴き声を発していて、それを聞いたレティシアが立ち上がる。
「何かが来てるって……」
「何か?」
「分からない。大きなのが飛んでるみたい」
「魔獣か? ……兎に角、グリフォンのところに行って来る。レティシアは陛下にそれを伝えて」
「うん! 気を付けて!」
走り出した瞬間に、怪鳥が低空飛行を始めた。脚に捕まると急上昇、急加速する。道中、ロイクさんが道を歩いていた。こちらを見るなり何かを察したらしく、短剣を投げて来た。
「うお!」
それを掴むと、こっちに雷魔法で自らを引き寄せ、怪鳥の脚に乗る。
「どうされたんですか?」
「ギルスたちが何か嫌な感じがするって警告してくれたんです。今から斥候に」
「なるほど。では私が行きましょうか?」
「ロイクさんが?」
「グロムは私と相性が良い。最速で行けます。アルフィーさんは最悪の事態を想定して、編成をお願いします」
グロムはロイクが倒した雷の飛竜。最速だが欠点は持久力の無さだろうか。風とはその辺りが違う。彼にそれを頼むと同時に、口笛を吹いた。するとグロムが遠くから超スピードで接近して来た。
(え? そんな事出来るの?)
彼は飛び降りると、飛竜の背中に見事に乗り移る。
(良いな……俺も練習しようかな……)
そして、ロイクは嫌な感じのする方へもの凄い速度で飛び去って行く。シオンの島にと進路を変える。
王宮前で降り、走って接近すると門番が居た。迂闊に空中から近づくと迎撃される。最近では属性結界を研究しているらしい。
丁度庭にテオが走って来ていた。
「余は大剣など持ってない! 勘違いだ!」
「違いますって。ピュールに聞いてないんですか?」
「今は寝てる。昨日遅くまで、共に訓練したからな」
「……巨大な何かがこっちに来てるそうです。今、ロイクさんが確認に行ってくれてます」
「なに!」
「飼育所にいますので」
そう言って門の外に出ると、怪鳥に乗る。飛び立った瞬間にテオが叫ぶ。
「ノイチに伝えるのだ。余は先に行く」
「ハッ!」
脚にちゃっかり乗っていた。細かい対応はシオンとノイチに任せるつもりらしい。
途中、ユイが平均台の上を歩くかの如く。塀から塀、物から物へぴょんぴょんと跳び移り、バランスを取りながら進んでいた。
彼女が空を見上げた。こちらに気が付いた際、何かを察したらしく、建物の屋根に上り、飼育所に向かってダッシュする。
(はや……)
上空から街の様子を見ると、エルナが道を走っていた。彼女もこういう時の嗅覚は人一倍。ユイが屋根の上を走っているのを見て、対抗心を燃やしたのか、上り始めた。
(若干ロスになってる)
飼育所に到着すると、皆が集まってくれていた。丁度ロイクさんも戻って来た。
「単刀直入に言いますと、空を飛ぶ巨大な船ですね」
「船が!?」
「気持ちは分かります。しかし、事実をそのまま伝えるとそうなります。船には兵器を積んでいるようでした。人員はざっと見た感じだと20人以上は居ましたね。中にはまだいるかと。余り近づくと見つかりそうだったので……」
「魔空船だね」
ニョキっと地面からシオンが出て来た。驚いたが、声を上げるのは我慢した。
「うむ。余の記憶にも少しあるぞ。厄介だな」
「偶然発掘したとかあるのかねー」
クーもニョキっと地面から出て来た。守護精霊は定期的に人を驚かさないといけない決まりが在るのだろうか?
「コアみたいなのがあるのか?」
「あるよ。動力源。使いこなせるかは知らないけど、それを守るための手段もね」
「あー、結界とかがあると厄介だね」
「それでどうするんだい?」
アルフィー考える。そして、素早く結論を出した。
「ディアナを残して、全員で行こう」
「ほう。攻めるか。やはり、そうでないとなッ」
「な! わ、私も行きたいぞ!」
「大人数をまとめ上げて、指揮をするのはディアナが適任だ。俺たちが食い止められずに、この島に侵入された時は頼む。こんな責任重大な事を任せられるのはディアナだけだからな」
それを聞き終わる頃には、自信満々の表情になっていた。
「任せろ。アルフィー殿。私が民とこの島を守ろう!」
「とはいえ、敵とは限らないから一度、話し合いを」
「そんな事をすると奇襲の効果が薄れるぞ?」
「それは分かってる……でもな……」
エルナの方をジッと見る。何かを察したらしく、自信満々に言う。
「し、仕方ないわね! アルフィー。私にしか出来ない事なんでしょ!」
(いや、駄目だな。ここは……)
「……ねぇ、今なんでこっち見たの?」
一瞬、風が強くなった。急に影が覆われる。空を見上げると、怪鳥が飛んでいた。鳴き声を発していて、それを聞いたレティシアが立ち上がる。
「何かが来てるって……」
「何か?」
「分からない。大きなのが飛んでるみたい」
「魔獣か? ……兎に角、グリフォンのところに行って来る。レティシアは陛下にそれを伝えて」
「うん! 気を付けて!」
走り出した瞬間に、怪鳥が低空飛行を始めた。脚に捕まると急上昇、急加速する。道中、ロイクさんが道を歩いていた。こちらを見るなり何かを察したらしく、短剣を投げて来た。
「うお!」
それを掴むと、こっちに雷魔法で自らを引き寄せ、怪鳥の脚に乗る。
「どうされたんですか?」
「ギルスたちが何か嫌な感じがするって警告してくれたんです。今から斥候に」
「なるほど。では私が行きましょうか?」
「ロイクさんが?」
「グロムは私と相性が良い。最速で行けます。アルフィーさんは最悪の事態を想定して、編成をお願いします」
グロムはロイクが倒した雷の飛竜。最速だが欠点は持久力の無さだろうか。風とはその辺りが違う。彼にそれを頼むと同時に、口笛を吹いた。するとグロムが遠くから超スピードで接近して来た。
(え? そんな事出来るの?)
彼は飛び降りると、飛竜の背中に見事に乗り移る。
(良いな……俺も練習しようかな……)
そして、ロイクは嫌な感じのする方へもの凄い速度で飛び去って行く。シオンの島にと進路を変える。
王宮前で降り、走って接近すると門番が居た。迂闊に空中から近づくと迎撃される。最近では属性結界を研究しているらしい。
丁度庭にテオが走って来ていた。
「余は大剣など持ってない! 勘違いだ!」
「違いますって。ピュールに聞いてないんですか?」
「今は寝てる。昨日遅くまで、共に訓練したからな」
「……巨大な何かがこっちに来てるそうです。今、ロイクさんが確認に行ってくれてます」
「なに!」
「飼育所にいますので」
そう言って門の外に出ると、怪鳥に乗る。飛び立った瞬間にテオが叫ぶ。
「ノイチに伝えるのだ。余は先に行く」
「ハッ!」
脚にちゃっかり乗っていた。細かい対応はシオンとノイチに任せるつもりらしい。
途中、ユイが平均台の上を歩くかの如く。塀から塀、物から物へぴょんぴょんと跳び移り、バランスを取りながら進んでいた。
彼女が空を見上げた。こちらに気が付いた際、何かを察したらしく、建物の屋根に上り、飼育所に向かってダッシュする。
(はや……)
上空から街の様子を見ると、エルナが道を走っていた。彼女もこういう時の嗅覚は人一倍。ユイが屋根の上を走っているのを見て、対抗心を燃やしたのか、上り始めた。
(若干ロスになってる)
飼育所に到着すると、皆が集まってくれていた。丁度ロイクさんも戻って来た。
「単刀直入に言いますと、空を飛ぶ巨大な船ですね」
「船が!?」
「気持ちは分かります。しかし、事実をそのまま伝えるとそうなります。船には兵器を積んでいるようでした。人員はざっと見た感じだと20人以上は居ましたね。中にはまだいるかと。余り近づくと見つかりそうだったので……」
「魔空船だね」
ニョキっと地面からシオンが出て来た。驚いたが、声を上げるのは我慢した。
「うむ。余の記憶にも少しあるぞ。厄介だな」
「偶然発掘したとかあるのかねー」
クーもニョキっと地面から出て来た。守護精霊は定期的に人を驚かさないといけない決まりが在るのだろうか?
「コアみたいなのがあるのか?」
「あるよ。動力源。使いこなせるかは知らないけど、それを守るための手段もね」
「あー、結界とかがあると厄介だね」
「それでどうするんだい?」
アルフィー考える。そして、素早く結論を出した。
「ディアナを残して、全員で行こう」
「ほう。攻めるか。やはり、そうでないとなッ」
「な! わ、私も行きたいぞ!」
「大人数をまとめ上げて、指揮をするのはディアナが適任だ。俺たちが食い止められずに、この島に侵入された時は頼む。こんな責任重大な事を任せられるのはディアナだけだからな」
それを聞き終わる頃には、自信満々の表情になっていた。
「任せろ。アルフィー殿。私が民とこの島を守ろう!」
「とはいえ、敵とは限らないから一度、話し合いを」
「そんな事をすると奇襲の効果が薄れるぞ?」
「それは分かってる……でもな……」
エルナの方をジッと見る。何かを察したらしく、自信満々に言う。
「し、仕方ないわね! アルフィー。私にしか出来ない事なんでしょ!」
(いや、駄目だな。ここは……)
「……ねぇ、今なんでこっち見たの?」
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