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第二章 十二王家の目覚め

30話 判定(1)

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【魔空船・操縦室】


「ボス、やはりこの辺に巨大な何かの反応! 近いです!」


 船内が騒がしい。ボスと呼ばれた男が鼓舞するように叫ぶ。

「良し。野郎共! 準備しろ! 空賊の時間だぜぇ!」


「「「「オオォォォオオッ!!」」」」


 そこで、操縦している者が怯えながら言う。

「あ、あの……何か近づいてきます……」

「なに? オラぁ! 呆けて無いで早く解析しろ!」

「ひぃ! は、はい! 分かりました!」


 外の様子の立体映像が出現する。それを見たボスは訝しげに言う。

「グリフォンに乗ったゴツイおっさんだとぉ?」

「何やら攻撃してきません。話し合いをしたい雰囲気ですが……恐らくこの先の船から来たのではないかと」


「空飛ぶおっさんなど知った事か! 撃て!」




 クライヴがゆっくりと手を振りながら近づくと、甲板からバリスタや砲撃が飛んで来た。左に急加速して避ける。

「うお! 信じられねぇ! 撃って来やがった! 可愛いグリフォンと一緒のっ、この慈愛に満ちた男が見えなかったのかよッ!!」



 少し時は遡る。


 アルフィーはクライヴを使者に任命した。皆はその理由を聞く。特にエルナが食いついた。

「それなら私でも出来るよ! 私がやる!」

「ははは、殿下は大人しくしとくネ。私なら出来るヨ」

「うん。それも考えた。じゃあ、ディアナ」

「私?」


「ヨーゼブ陛下に気持ちになりきってくれないか?」

「? 分かった」

「エルナが使者として来た、どうする?」

「丁重に迎える」

「クライヴが使者と来たら?」

「丁重に迎える」


 そこで、飛竜の周辺をうろついていたロマンを呼んだ。

「アルフィーさん、なんすか? お、こんなに戦力を集めて、どっかの集落でも落とすんですか?」

(冗談だろうけど、丁度いい蛮族がいたわ)


「今から賊の気持ちになりきってくれ」

「なりきったっす」

「エルナが使者として来たらどうする?」


「捕まえるか、招き入れて捕まえるっす」

「クライヴが使者として来たら?」

「なんだこのおっさんは! 攻撃される前に殺そう!」


「おいロマン?」

「違うっすよ! アルフィーさんが賊になれって!」


「……はい! 絶対じゃないけど、こうなる可能性が高い。でもこうなったら敵って分かるから楽だ」


「なるほどネ」


「それにもし攻撃されたら、先に攻撃して来たのはあっちだと言えるのは大きいですね」


「なるほどなのはいいけど……それ、俺が危なく無いか?」

「でもクライヴ。敵が目の前に居たら、お前突っ込まないか?」

「それりゃぁ敵が居たら倒しに行くだろ?」



 クライヴ和平作戦を開始する。そこで木陰に獣人がチラリと見えた。テオが急に大声を出す。

「ぁあ! 武器を忘れてしまったぁ! どうしよー!」


 クライヴが呆れていた。

「何やってんだこの小さい王様は……」


「テオ様! 丁度偶然まさかぁッ、その辺でテオ様に相応しい武器を調達しました!」

 待機していた獣人が木陰から出て来た。

「おお! その辺に落ちているとは運が良い!」

(どさくさに紛れて、大剣のことを誤魔化す気か。緊急事態を利用して怒れない状況を作るとは中々に策士……王の威厳は無くなるけど。というか、何時その作戦を伝えたんだろう……訓練されてるなー)


「良し準備は出来たな! 行くぞ!」

「ロマンもついでだ、来い!」

 クライヴが連れて行こうとする。彼はこのメンツの中にっ、と驚いていたが了承した。自然体で口笛を吹くと、飛竜のビエントが隣に飛んで来た。

「ええ! お前もそれ出来るの!?」

「それはそうっすよ。これ考えたの俺っすよ? それじゃあ早く行きましょっか」

 さらにロマンは走り出す。皆が止める暇なく、島から跳んだ。落下するのを見て驚愕する。数人が叫んだ。

 だが、飛竜が高速で飛び立つと、彼を拾い、そのまま空高く舞い上がる。誰がどれに乗るとかをまだ決めて無い。喋れないのにも関わらず、お互いの信頼が凄かった。


(……なんか極めてる……マールさんが悔しがってる気持ちが少し分かった)


 ディアナを残して皆は飛び立つ。彼女は島を守るために早速指示を出して陣を築く。

 飛竜テラーはお休みだ。島の周辺を守ることになった。クライヴが乗るのが飛竜だと、流石に攻撃的な見た目になるからだ。そして、アルフィー、エルナもグリフォンである。




 手を振って見たがクライヴは攻撃され、逃げ回る。そのタイミングで雲に隠れていたアルフィーたちが魔空船に乗り込む。

「て! 敵襲ぅぅぅぅうう!!」


 テオが兵器のところに飛んで行く。竜のブレスと自分の炎を同時に叩きこもうと、力を溜める。

「おい! そんなことしたら船が落ちるぞ!!」

「大丈夫だ! 余の勘がそう言っておる!」


 それを放った瞬間、賊は逃げる。兵器は破壊された。しかし、不思議と船には傷一つない。ユイが短くリズムを刻む様に跳びはねていた。

「ォォ! 凄い硬いネ。この素材」

 鍛えているユイが地を力強く蹴っても壊れることがない。凄まじい速度で接近すると賊を次々と倒していく。エルナもそれに負けないように槍を振るい、敵をなぎ倒す。

 遅れてクライヴが甲板に着地する。船内に入って行った。ロイクが意識を奪った者たちを次々と縄で縛る。テオを始め皆が暴れてくれているので、ここは問題ない。船内に入るとしよう。


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