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第四章 忍び寄る影。実は忍んでない
第5話 白金等級
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ルーベンとルディ、ヘシカ、プリシラが会話をしていると、扉が勢いよく開いた。そして、先頭で入って来た男が大声で嫌味っぽく言う。
「相変わらず、しけたメンツしかいねーギルドだなぁ」
誰かが悪態をついた彼の名を口に出した。
「お前は……リーンハルトッ」
「ああ? 気安く俺の名を呼んでんじゃねーよ田舎者がっ」
そこで、その背後にいた男が静かな口調で言う。
「邪魔だ。早く中に入れ……」
「す、すいません! ジークムントさん!」
五人の男女がギルドにゾロゾロと入って来た。彼等は王都中央区のギルド所属の者達だ。
その中のリーダー格の男は剣を携えたジークムント。白い服装をベースに、白いマントを着けているのが印象的だ。
リーンハルトと呼ばれた男は武器を持っていない。程よい筋肉で、がっしりした体つきだ。耳や口にピアスを着けている。
もう一人の男はニクラス。寡黙そうな男で槍を持っている。細身のラインに動きやすい紺色よりの服を着ている。
その後ろに大剣を肩に乗せた女性はカルロッテ。彼女は所々が破れたボロボロな茶色ベースの服を着ており、その影響で露出度が高かった。
最後の一人も女性で、右腕に細い金属が巻きついたアクセサリーを着けており、腰に鞭が付いてあった。小奇麗な服を身に着ける彼女の名はマルティナだ。
彼等はそれぞれ体格も武器も違うが共通している事があった。それは全てを見下すような笑みを浮かべていた。それが気に食わない者が彼等に食いついた。しかし。
「い、今更何のようだッ」
「邪魔だ……」
「くっ」
進路妨害を受けたので、手でその男を払いのけると軽くバランスを崩した。
ヘシカとプリシラはその様子を冷たい瞳で横目で見ていた。ルディは関わろうとせず彼等を見ない。ルーベンは変わらずにぐったりしていた。
ヘシカの座っている付近に来ると五人は止まった。最初に口を開いたのはヘシカだった。
「何しに来やがった?」
リーンハルトが睨み付けながら言う。
「ふん、情報が届いていないとは、思った以上の田舎だな。ここは」
「ああ?」
ここは貿易が盛んで大都市と呼ばれるが、王都に住む者からはここは田舎と呼ばれている。
「飛竜の討伐だ。このギルドに金等級以上が居ないから俺達がわざわざ来てやったんだろうがッ」
「はぁ……要らねーよ。私達だけで十分だ」
ジークムントがそれを否定する。
「だが、ギルドはそう考えなかった。ここでは最強かもしれんが、所詮は銀等級風情……身の程を知れっ」
「はっ……お前は何時も等級等級と。馬鹿の一つ覚えかっつーの」
「お前こそ何を勘違いしている。適当に手を抜いて銀等級に甘んじていると思っているのか? 自らを過大評価するお前は何時までも銀等のままだ……ずっとな」
リーンハルトがそれに便乗してヘシカに邪悪な笑みを向けた。
「うひゃはははは! 良い事を教えてやるよ、雑魚ヘシカ、ジークムントさんは疾うの昔に白金等級へと至ってんだよっ」
「何だとっ」
「ちなみに俺も金等級になったッ。理解できたか雑魚共ぉ!」
「ちっ……」
「リーンハルト……止めろ。俺の格まで下がる」
「す、すいません!」
等級は上から、ミスリル、白金、金、銀、黒、紫、赤、橙、黄、青、茶、緑、黄緑、白となっている。
「リーンハルト。俺は宿屋に戻っておく。手続きは任せるぞ」
「承知です!」
彼は一人ギルドから去って行った。プレッシャーから解放されたリーンハルトがある事に気がつく。プリシラが不機嫌そうにこちらを見ていたのだ。
「お、プリシラ。少しは良い女になったみたいだな」
「あっそう」
興味なさそうなプリシラが、姿勢を正して真っすぐ座る。それにイラついたのか無理やり腕を掴んで引きつり出す。
「気取ってんじゃねーぞ!」
「ちょっとやめてよッ」
手前に座っていたルーベンが、それの影響で引き込まれるように床に転がった。
ルーベンは床で倒れたままぐったりしていた。それを見たヘシカがぶち切れた。プリシラに乱暴をしようとしたからだ。
「その汚い手を離せッ。短小野郎がッ」
ヘシカが炎魔法を作り出す。至近距離でそれを遠慮なくぶっ放した。だが、リーンハルトは障壁魔法でそれを全て防いだ。炎は消え、火の粉が落ちる。床で倒れているルーベンにチクチクと刺さる。
「はっ、おっせーな! その程度かよ銀等級ぅ!」
それを見て今度はプリシラが切れる。床から土に棘が出現する。リーンハルトは軽く後ろに跳んで避ける。しかし、同時に礫も飛ばしていた。
一同はそれを見て少し驚いた。リーンハルトだけはその後に嘲笑った。明らかな練度不足が見えたからだ。
「ほー。二重詠唱か。ようやくそこに辿り着いたようだな」
しかし、彼は何もしない。礫が当たる瞬間、金属の盾に防がれた。マルティナの魔法だ。地属性系列の魔法。
それに気が付いたナディアが立ち上がるが、それを止めることが出来ない。ルディが目でナディアを制止させたのもあった。迂闊に踏み込めば簡単に死ぬだろう。
そこでプリシラの背後から低めの女性の声が聞こえた。
「うぜー」
「プリシラぁ! 避けろッ」
ヘシカが叫ぶ。プリシラの背後にいたのはカルロッテ。大剣をすでに腕を狙って振り下ろされていた。プリシラが振り向くが遅かった。回避行動が間に合わない。
だが、当たる寸前で氷の板が出現する。それに大剣は止められてしまった。
「コール様っ……」
「コール! ……助かったっ」
大剣を止められたカルロッテが怒りをぶつける。
「ああ? 黒等級如きがしゃしゃり出てくんなよぉ……しらけるだろうがぁ」
「それを言うならプリシラは紫だろ? お前は同格の金等級と遊ぶべきだ」
「ちっ……相変わらず、うぜー野郎だッ。関係ねぇー。俺は切りたい奴を切るっ」
争いは止まるどころかさらにヒートアップしていく。そんな中、ルーベンが床を這って移動していた。カルロッテの真下にいたのだ。それに気が付いた彼女は訝しげに問う。
「てめー……何やってんだ?」
「よく発達した太ももだ。素晴らしい。そして、その短パン。それが堪能できるこの角度が良い。あ、勿論マルティナみたいな体の線が出る服も好きだけど……こっちの方が珍しいからな、つい……」
「……」「……」
「お、お前は……殺す価値もねぇーよぉ!」
その瞬間、カルロッテとプリシラがルーベンをゲシゲシと蹴り出した。
「ぎゃあああ! 助けて! 殺される! お願いリーンハルトぉ助けてぇ!」
「……だ、誰が助けるかよ、馬鹿が……ちっ。しらけたな。帰るぞ」
それを見てマルティナが嫌らしい笑みを向けた。
「ねぇ、プリシラ……貴方、少し変わったわね……」
「はぁ? 急になに? 君は年をとったね」
「ああ?」
「あ、つい本音がでちゃったー。ごめんねぇ悪気はなかったのー」
「……へー、そうなのー」
マルティナがルーベンを持ち上げると胸に顔面を押し当てた。
「その狂暴な女より私の方が良いと思わない? えっと……」
「クロウだ」
「はぁ! いきなり何してんのッ。クロウ、それは敵だよっ、離れてッ」
マルティナはルーベンは好みでは無いが、嫌がらせのためならこの程度はお手の物だった。
「ねぇクロウ。私の胸はどう?」
「すごく柔らかーい」
「クロウ……すぐに離れた方が良いよ……その性悪女から……」
「あら怖いわね。騙されちゃだめよ。じゃあまたね」
「はーい♪」
プリシラの怒りが爆発する寸前だった。その反応を見たリーンハルトがそれに苛立つ。
「クロウとか言ったな……お前死んだぜ……この言葉を覚えておくんだな」
「う、嘘だろ。マルティナはそんなに凄いのか……凄く楽しみー」
「な、何言ってんだ……お前は俺に殺されるって事だッ。精々夜道には気を付けるんだな……ッ」
最初は隠したが、能天気な発言に怒ったリーンハルトは殺人予告をした後に三人を連れて帰って行った。プリシラがルーベンの背後にいた。そして、人前では絶対に出さない低い声で言う。
「……王都のギルドに寝返るなんて最低ー」
逆にヘシカは何時も通りに言う。
「プリシラの言う通りだ。なに普通に裏切ってんだ。殺すぞ」
それを見ていたギルドの者達がうんうんと頷いていた。ルーベンは何時もの席に座ってぐったりとした。
「……いや、だって。あの二人美人だし……体が勝手に動いてたんだ」
「そういう病気なの?」
「だからお前はゴミ屑最低クソ野郎なんだよ!」
「ヘシカ、少しは落ち着け。クロウが居なかったら殺し合いになっていたかもしれん。魔法を使ったのは好ましくない行為だったな」
「……す、すまない……だがっ」
「分かってる。あいつらにも非はある」
近くにいた男がコール達の方を向いて問う。
「な、何なんだあいつら」
「奴等は元々、このギルドに所属していた。最低でも銀等級以上だ。喧嘩を売るなよ」
「こ、コールさん。冗談はきついよ。う、売らないよ。絶対に」
「で、でもまた絡んできたら……誰が奴等を止めるんだ……」
「憲兵や騎士団を介入させるのが一番手っ取り早い」
「く、くそぉ! 俺達は泣き寝入りしか出来ないのか……」
「何とかならないのか! コールさん!」
「飛竜の討伐が終われば王都に帰るだろう。それまでの辛抱だ」
「ッ……」
ルディがナディアの元に行った。
「申し訳ありません。私には声をかける事すら出来ませんでした」
「気に病む事はない。それよりも飛竜の件だが」
「先ほど伝書魔鳥が来ました。どうやら今回は共同で飛竜を討伐するようです」
「こっちからも誰かを出すのか?」
「はい、五名を向かわせます」
それを聞いたヘシカが気合を入れながら言う。
「なら私が行く。それとコールとプリシラもだっ」
「ふむ……クロウも連れて行って良いか?」
「はぁ? 何でだよ! もっと強いのが居るだろうっ」
ヘシカが辺りを見渡すと、さっきのやり取りで委縮した者達が手を前に出して、首を横に振っていた。
「だ、そうだ」
「くそ! 根性無し共がっ」
その後、どうしても五人目が決まらずに四人で依頼に向かう事になる。
「あのさー。俺今、うんって言った?」
「アハハ♪ 良かったねークロウー。またマルティナに会えるよ~」
「確かに……しかし、過信は良くない。ここは謙虚にマルティナには素敵な贈り物をしよう!」
「そうだね♪ 何処に風穴開けようかなー。そうだ、じゃあ! どっちが先に倒すか勝負だよっ」
「え?」
「え?」「え?」
「え?」
ルーベンとプリシラはまるでかみ合わなかった。翌日から馬車を使い目的に向かうのであった……。
「相変わらず、しけたメンツしかいねーギルドだなぁ」
誰かが悪態をついた彼の名を口に出した。
「お前は……リーンハルトッ」
「ああ? 気安く俺の名を呼んでんじゃねーよ田舎者がっ」
そこで、その背後にいた男が静かな口調で言う。
「邪魔だ。早く中に入れ……」
「す、すいません! ジークムントさん!」
五人の男女がギルドにゾロゾロと入って来た。彼等は王都中央区のギルド所属の者達だ。
その中のリーダー格の男は剣を携えたジークムント。白い服装をベースに、白いマントを着けているのが印象的だ。
リーンハルトと呼ばれた男は武器を持っていない。程よい筋肉で、がっしりした体つきだ。耳や口にピアスを着けている。
もう一人の男はニクラス。寡黙そうな男で槍を持っている。細身のラインに動きやすい紺色よりの服を着ている。
その後ろに大剣を肩に乗せた女性はカルロッテ。彼女は所々が破れたボロボロな茶色ベースの服を着ており、その影響で露出度が高かった。
最後の一人も女性で、右腕に細い金属が巻きついたアクセサリーを着けており、腰に鞭が付いてあった。小奇麗な服を身に着ける彼女の名はマルティナだ。
彼等はそれぞれ体格も武器も違うが共通している事があった。それは全てを見下すような笑みを浮かべていた。それが気に食わない者が彼等に食いついた。しかし。
「い、今更何のようだッ」
「邪魔だ……」
「くっ」
進路妨害を受けたので、手でその男を払いのけると軽くバランスを崩した。
ヘシカとプリシラはその様子を冷たい瞳で横目で見ていた。ルディは関わろうとせず彼等を見ない。ルーベンは変わらずにぐったりしていた。
ヘシカの座っている付近に来ると五人は止まった。最初に口を開いたのはヘシカだった。
「何しに来やがった?」
リーンハルトが睨み付けながら言う。
「ふん、情報が届いていないとは、思った以上の田舎だな。ここは」
「ああ?」
ここは貿易が盛んで大都市と呼ばれるが、王都に住む者からはここは田舎と呼ばれている。
「飛竜の討伐だ。このギルドに金等級以上が居ないから俺達がわざわざ来てやったんだろうがッ」
「はぁ……要らねーよ。私達だけで十分だ」
ジークムントがそれを否定する。
「だが、ギルドはそう考えなかった。ここでは最強かもしれんが、所詮は銀等級風情……身の程を知れっ」
「はっ……お前は何時も等級等級と。馬鹿の一つ覚えかっつーの」
「お前こそ何を勘違いしている。適当に手を抜いて銀等級に甘んじていると思っているのか? 自らを過大評価するお前は何時までも銀等のままだ……ずっとな」
リーンハルトがそれに便乗してヘシカに邪悪な笑みを向けた。
「うひゃはははは! 良い事を教えてやるよ、雑魚ヘシカ、ジークムントさんは疾うの昔に白金等級へと至ってんだよっ」
「何だとっ」
「ちなみに俺も金等級になったッ。理解できたか雑魚共ぉ!」
「ちっ……」
「リーンハルト……止めろ。俺の格まで下がる」
「す、すいません!」
等級は上から、ミスリル、白金、金、銀、黒、紫、赤、橙、黄、青、茶、緑、黄緑、白となっている。
「リーンハルト。俺は宿屋に戻っておく。手続きは任せるぞ」
「承知です!」
彼は一人ギルドから去って行った。プレッシャーから解放されたリーンハルトがある事に気がつく。プリシラが不機嫌そうにこちらを見ていたのだ。
「お、プリシラ。少しは良い女になったみたいだな」
「あっそう」
興味なさそうなプリシラが、姿勢を正して真っすぐ座る。それにイラついたのか無理やり腕を掴んで引きつり出す。
「気取ってんじゃねーぞ!」
「ちょっとやめてよッ」
手前に座っていたルーベンが、それの影響で引き込まれるように床に転がった。
ルーベンは床で倒れたままぐったりしていた。それを見たヘシカがぶち切れた。プリシラに乱暴をしようとしたからだ。
「その汚い手を離せッ。短小野郎がッ」
ヘシカが炎魔法を作り出す。至近距離でそれを遠慮なくぶっ放した。だが、リーンハルトは障壁魔法でそれを全て防いだ。炎は消え、火の粉が落ちる。床で倒れているルーベンにチクチクと刺さる。
「はっ、おっせーな! その程度かよ銀等級ぅ!」
それを見て今度はプリシラが切れる。床から土に棘が出現する。リーンハルトは軽く後ろに跳んで避ける。しかし、同時に礫も飛ばしていた。
一同はそれを見て少し驚いた。リーンハルトだけはその後に嘲笑った。明らかな練度不足が見えたからだ。
「ほー。二重詠唱か。ようやくそこに辿り着いたようだな」
しかし、彼は何もしない。礫が当たる瞬間、金属の盾に防がれた。マルティナの魔法だ。地属性系列の魔法。
それに気が付いたナディアが立ち上がるが、それを止めることが出来ない。ルディが目でナディアを制止させたのもあった。迂闊に踏み込めば簡単に死ぬだろう。
そこでプリシラの背後から低めの女性の声が聞こえた。
「うぜー」
「プリシラぁ! 避けろッ」
ヘシカが叫ぶ。プリシラの背後にいたのはカルロッテ。大剣をすでに腕を狙って振り下ろされていた。プリシラが振り向くが遅かった。回避行動が間に合わない。
だが、当たる寸前で氷の板が出現する。それに大剣は止められてしまった。
「コール様っ……」
「コール! ……助かったっ」
大剣を止められたカルロッテが怒りをぶつける。
「ああ? 黒等級如きがしゃしゃり出てくんなよぉ……しらけるだろうがぁ」
「それを言うならプリシラは紫だろ? お前は同格の金等級と遊ぶべきだ」
「ちっ……相変わらず、うぜー野郎だッ。関係ねぇー。俺は切りたい奴を切るっ」
争いは止まるどころかさらにヒートアップしていく。そんな中、ルーベンが床を這って移動していた。カルロッテの真下にいたのだ。それに気が付いた彼女は訝しげに問う。
「てめー……何やってんだ?」
「よく発達した太ももだ。素晴らしい。そして、その短パン。それが堪能できるこの角度が良い。あ、勿論マルティナみたいな体の線が出る服も好きだけど……こっちの方が珍しいからな、つい……」
「……」「……」
「お、お前は……殺す価値もねぇーよぉ!」
その瞬間、カルロッテとプリシラがルーベンをゲシゲシと蹴り出した。
「ぎゃあああ! 助けて! 殺される! お願いリーンハルトぉ助けてぇ!」
「……だ、誰が助けるかよ、馬鹿が……ちっ。しらけたな。帰るぞ」
それを見てマルティナが嫌らしい笑みを向けた。
「ねぇ、プリシラ……貴方、少し変わったわね……」
「はぁ? 急になに? 君は年をとったね」
「ああ?」
「あ、つい本音がでちゃったー。ごめんねぇ悪気はなかったのー」
「……へー、そうなのー」
マルティナがルーベンを持ち上げると胸に顔面を押し当てた。
「その狂暴な女より私の方が良いと思わない? えっと……」
「クロウだ」
「はぁ! いきなり何してんのッ。クロウ、それは敵だよっ、離れてッ」
マルティナはルーベンは好みでは無いが、嫌がらせのためならこの程度はお手の物だった。
「ねぇクロウ。私の胸はどう?」
「すごく柔らかーい」
「クロウ……すぐに離れた方が良いよ……その性悪女から……」
「あら怖いわね。騙されちゃだめよ。じゃあまたね」
「はーい♪」
プリシラの怒りが爆発する寸前だった。その反応を見たリーンハルトがそれに苛立つ。
「クロウとか言ったな……お前死んだぜ……この言葉を覚えておくんだな」
「う、嘘だろ。マルティナはそんなに凄いのか……凄く楽しみー」
「な、何言ってんだ……お前は俺に殺されるって事だッ。精々夜道には気を付けるんだな……ッ」
最初は隠したが、能天気な発言に怒ったリーンハルトは殺人予告をした後に三人を連れて帰って行った。プリシラがルーベンの背後にいた。そして、人前では絶対に出さない低い声で言う。
「……王都のギルドに寝返るなんて最低ー」
逆にヘシカは何時も通りに言う。
「プリシラの言う通りだ。なに普通に裏切ってんだ。殺すぞ」
それを見ていたギルドの者達がうんうんと頷いていた。ルーベンは何時もの席に座ってぐったりとした。
「……いや、だって。あの二人美人だし……体が勝手に動いてたんだ」
「そういう病気なの?」
「だからお前はゴミ屑最低クソ野郎なんだよ!」
「ヘシカ、少しは落ち着け。クロウが居なかったら殺し合いになっていたかもしれん。魔法を使ったのは好ましくない行為だったな」
「……す、すまない……だがっ」
「分かってる。あいつらにも非はある」
近くにいた男がコール達の方を向いて問う。
「な、何なんだあいつら」
「奴等は元々、このギルドに所属していた。最低でも銀等級以上だ。喧嘩を売るなよ」
「こ、コールさん。冗談はきついよ。う、売らないよ。絶対に」
「で、でもまた絡んできたら……誰が奴等を止めるんだ……」
「憲兵や騎士団を介入させるのが一番手っ取り早い」
「く、くそぉ! 俺達は泣き寝入りしか出来ないのか……」
「何とかならないのか! コールさん!」
「飛竜の討伐が終われば王都に帰るだろう。それまでの辛抱だ」
「ッ……」
ルディがナディアの元に行った。
「申し訳ありません。私には声をかける事すら出来ませんでした」
「気に病む事はない。それよりも飛竜の件だが」
「先ほど伝書魔鳥が来ました。どうやら今回は共同で飛竜を討伐するようです」
「こっちからも誰かを出すのか?」
「はい、五名を向かわせます」
それを聞いたヘシカが気合を入れながら言う。
「なら私が行く。それとコールとプリシラもだっ」
「ふむ……クロウも連れて行って良いか?」
「はぁ? 何でだよ! もっと強いのが居るだろうっ」
ヘシカが辺りを見渡すと、さっきのやり取りで委縮した者達が手を前に出して、首を横に振っていた。
「だ、そうだ」
「くそ! 根性無し共がっ」
その後、どうしても五人目が決まらずに四人で依頼に向かう事になる。
「あのさー。俺今、うんって言った?」
「アハハ♪ 良かったねークロウー。またマルティナに会えるよ~」
「確かに……しかし、過信は良くない。ここは謙虚にマルティナには素敵な贈り物をしよう!」
「そうだね♪ 何処に風穴開けようかなー。そうだ、じゃあ! どっちが先に倒すか勝負だよっ」
「え?」
「え?」「え?」
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ルーベンとプリシラはまるでかみ合わなかった。翌日から馬車を使い目的に向かうのであった……。
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