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第二十四話

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 それから数か月、リリアはライオネルのために毎日パンを焼く日々であった。

 同じものだと飽きるだろうといろいろな種類を作る。この世界にはない食事用ではない、スイーツのようなパンも焼く。とは言え、領都とこの別荘では早馬で駆けたとしても半日は掛かるので作るのは日持ちのするパンばかりであった。

 パンを毎日焼きながらリリアはニール、マイケル、マリーと穏やかに日々を暮らしているのだった。



 そして、再びキースが前触れをしてやってきたのだった。しかも、一人ではなく、何台かの馬車も一緒であった。四人が出迎えるとキースが会釈するのだった。

「急に悪い」

 リリアは首を横に振り、笑いかける。

「いえ、お越しいただけて嬉しいですわ」

 キースは時間が無いので、少しソワソワしている。ソワソワしているが、今日の訪問の目的を伝えなければと今日来た目的の説明を始めるのだった。

「単刀直入だが、リリアには死んでもらおうと思う」
「!!」

 キースの「死んでもらう」と言う言葉にビックリして声も出ないリリア。そして、リリアを守る様にニールとマイケルとマリーがリリアの前に出てくる。

 マイケルが普段と違う緊張した表情を見せる。

「キース様、それはどういう事で」

 マリーもリリアの体を隠すようにキースに立ちはだかる。

「キース様、リリア様は何も殺されるような事なさってません」

 ニールは愛しいリリアのためには何でもすると言わんばかりに隠し持つ武器に手をかけようとしている。

「キース様、リリア様を殺させません。僕が代わりに……」

 一応、私兵団に所属しているマイケルとニールだけではなく、武家のデルヴィーニュ家に仕える者のたしなみとして戦闘訓練を受けているマリーもキースに殺意を向けながら相対した。キースは三人の緊迫した様子に焦る。

「話を聞け!!ちゃんと説明を聞いてから動け!!」

 取りあえず、何とかしないといけないと思いキースは叫ぶ。それでも、三人の緊迫した状態は解けない。

 いつもの食いしん坊の様子が全く消えてしまったマイケルは叫ぶ。

「話も何もキース様がリリア様を殺すとおっしゃったじゃないか!!」

 キースは慌てて首を振る。

「『死んでもらう』と言ったが、殺すとは言ってない。リリアがこのままでは動けないからここで死んだことに便宜上して、別の者に仕立ててから領都でパン屋をしないかと言う誘いだ」

 慌てたキースは一気にこれからの計画を言ってしまう。その計画を聞いて、三人の緊張は解ける。緊迫した空気が消えた事にキースと別荘についてきた者たちはホッとするのだった。
 空気が変わった事にホッとしたリリアは誘いと言う事が気にかかる。

「誘いですか?」

 尋ねるリリアにキースはうなずきながら答える。

「そうだ。公爵家の者である以上、以前の事もあるからここから出すわけにはいかないし、パン屋をすると言う訳にはいかないが、平民がパン屋を開くなら普通の事だ」
「パン屋ですか?」

 パン屋を開くと言うキースの言葉にリリアはビックリ。

「とは言え、平民になってパン屋を開くことは許可できるが、以前の事もあるから領都から外には出すことはできないがな」

 パン屋を開くための条件をキースは告げるのだった。しかし、リリアは首を横に振るのだった。

「そんな……パン屋を開かせていただけるならそれだけで十分です」
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