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第二章 日記帳のスティア

十話

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アリーヤ様が傘に入れて下さった日から、アリーヤ様のお姿を見るとつい目で追ってしまう。

ララに相談したら、

「それは恋ですわ、スティア様!スティア様はとてもお綺麗ですし、気立ても良いのできっとアリーヤ王子殿下もスティア様の良さを分かって下さると思いますよ。」

と凄く嬉しそうに言ってくれた。

辺境伯は国の要所を守る家柄で公爵家に次いで位が高いとされているけど、私なんかではとてもアリーヤ様と釣り合わないわ…

応援してくれるララには悪いけど私はただアリーヤ様の御姿を拝見できるだけでも幸せですもの。

確か…アリーヤ様のご両親である両陛下も学院で出会って御結婚されたのよね。素敵だわ。
アリーヤ様も両陛下の様にこの学院で伴侶を見つれられるのかしら…?
その御相手になれる御令嬢が少し羨ましいですわ…

「…ティア?どうかしたのかい?ぼーっとしているようだけど…もしかして!体調が悪いのかい?」

「いえ、大丈夫ですわ、レオお兄さま。少し考えごとをしていましたの。」

いけない!せっかくレオお兄さまと過ごせる時間なのに…

レオお兄さまがサマーバケーションは、領地には帰らず寮で過ごすとおっしゃられたので私もレオお兄さまにならって寮で過ごすことにした。
御忙しそうなレオお兄さまはサマーバケーションの間、毎日私のために時間を作ってくれている。

今も柔らかな日が差し込む自然のカーテンの下でアフタヌーンティーをしていた。

「考えごと…?何か困っていることでもあるのかい?」

「いえ…そういう訳ではないのですが…」

「じゃあ、どうしたの?…僕には言えないことなの?」

あまりにもレオお兄さまがご心配をなさるのでつい今までのことを話してしまう。

「…そうか。アリーヤ様にね…」

レオお兄さまは少し複雑な顔をした。

「私はアリーヤ様とどうこうなりたいわけではないのです。私は外聞も悪いですし…アリーヤ様には釣り合いませんもの…
私はただアリーヤ様の御姿を拝見出来るだけで幸せですわ。」

「違うんだ!アリーヤ様とティアが釣り合わないと言っている訳ではないんだよ。
ただ、兄として複雑なんだ。
大好きなティアが人を愛する気持ちに目覚めてくれてとても嬉しい気持ちと僕から離れていってしまうのではないかという寂しい気持ちが喧嘩しているんだ。
…ティア、これだけは覚えていて。
ティアは自分はアリーヤ様に釣り合わないと思っているだろうけど、僕にとってティアは凄く可愛いし、頭も良いし、気立ても良くて優しい自慢の妹だよ。
それに、恋をすることは誰かに決められることでも否定されることでもない。ティアが自分の心で決める、ティアだけのものだ。」

ああ、やっぱりレオお兄さまに言われると凄く勇気がでるわ…
レオお兄さまの暖かい手で頭を撫でられるととても安心するの…

レオお兄さまの言葉に勇気をもらった私は少しでもアリーヤ様に近づけるよう自分磨きを頑張った。

身嗜みにより一層気を使って、立派な淑女になれるようマナーな美しい所作を心がけた。
今までよりも勉学に励み、苦手だった人間関係も少しずつではあるが改善しようと心がけている。

アリーヤ様に恋をしてから毎日が輝くように楽しくて笑顔が増えたように感じる。
ララにも、最近とても明るくなりましたね。と褒めらようになって凄く幸せだ。

ああ…こんな幸せな毎日がずっと続いていくのかもしれない。
なんとなくその時の私はそう思っていた。

その幸せな毎日がミラの入学とともに儚く崩れ去っていくとも知らずに。
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最後までお読み頂きありがとうございます!
今日もギリギリセーフになってしまいました…
すみません…

今回は、アリーヤ王子への恋心に気づいたスティアが自分磨きを頑張って明るくなっていくお話しです。
恋する女の子ってどうしてあんなに綺麗なのでしょうね。マンドラゴラは恋する女の子大好きです!笑
アリーヤ王子に見てもらえなくてもひたむきに頑張る姿はとてもいじらしくて可愛いですよね。

さて、次回は閑話を挟んで、ついにミラが学院に入学します。
ミラによって壊されていくスティアの人生…
暗い話になりますが、お付き合い下さい。
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