一難去ってまた一難!?元悪役令嬢の受難の日々はまた難易度を上げる

マンドラゴラ

文字の大きさ
15 / 28
第二章 日記帳のスティア

十一話

しおりを挟む
「本日は、入学式ですね。」

ララの言葉に顔が強張るのを感じる。

「ええ、そうね。」

遂にミラが入学してくるのね。
ミラが入学して来るのは前々からわかっていたことだけどなんだか胸騒ぎがするわ…

「大丈夫ですよ、スティア様。スティア様にはこのララもレオン様も付いています!」

「そうね。ありがとう、ララ。どうにもならいないことに憂いていても仕方がないわ。
私も第二学年。新入生の見本になる立派な淑女になれる様に精進しなくては…!」

「そのいきですよ!スティア様!」

ララは、いつもこうして後ろ向きになりそうな私を励ましてくれるわ。
まだ、1年しか一緒にいないのが嘘みたいにララのことを信頼しているし、ララには何でも話せちゃうのよね。
後、2年しか一緒にいられないと思うと少し寂しいわ…



『新入生入場!』

学院長先生の声で真新しい制服に身を包んだ新入生たちが会場の拍手を受けて入場する。
その中には勿論ミラもいて、ピンクブロンドの髪を揺らして歩いている。

そんなミラに手を振るお義母さまとお父さま。
どちらも私の入学式には来てくださらなかったのに…

久しぶりに見た両親の顔はミラの入学を喜んでいるかの様な微笑みでミラは本当に愛されていると感じる。
どうして…こんなに胸が痛くなるの?
私は、どこからか来る胸の痛みに知らないフリをして入学式をやり過ごした。


『スティア様よ…妹君のミラ様はあんなに明るくて可愛いらしい方なのに全然似ていらっしゃらないのね…』

『スティア様の時にはいらしてなかったら御両親がミラ様の時はいらしていたわ…』

『ご両親から嫌われているっていうウワサは本当でしたのね…』

『それは、そうよ。あんなことされていればねぇ…』

『ミラ様が仰っていましたけど…本当にひどい話ですわ…』

ミラが入学してから息を潜めていた噂話が尾びれをつけてまた広まる様になった。
どうやら、何かにつけてミラが言いふらしている様だ。

廊下でも教室でも寮でもコソコソと…
全て聞こえていますわ…
もう、誰もいない静かな場所に行きたいですわ。

「ティア…!はあ…やっと見つけた。こんな所に居たんだね。」

「レオお兄さま…」

学院にある大きな主庭園とは逆方向にある小庭園の温室は庭師のアルファードさん所有の物だ。
私は、アルファードさんのお手伝いをさせて頂く代わりにいつでも使って良いとこの温室の鍵を預かっていた。
いつものように温室で本を読んでいると少し息を切らしたレオお兄さまがやってきた。

「こんな所で何をしているんだい?」

「本を読んでいましたの。
最近、図書館でも人目が気になってしまって…どうしてここが?」

「さっきそこで庭師と会ったんだ。ティアのことを聞いたらここだと鍵を預かったんだ。
それより、全くミラと困った奴だ。
あんな根も葉もないウワサを流すなんて。
僕がしっかり言っておくから。」

「良いですの。私は気にしていませんから。それよりも、レオお兄さままで何か言われてしまう方が嫌ですわ。」

私のせいでレオお兄さままで悪く言われたら悔やんでも悔やみきれませんわ。

「前は、時間が合えば一緒にランチをとっていたのに最近はカフェテリアにも姿を見せないじゃないか。
ちゃんとランチをとっているのかい?」

「ええ、ララに頼んでランチを持たせてもらうようにしましたの。
読みたい本もたくさんありますので。」

本を読みたいのはウソではないけど、1番の理由じゃないわ。
本ならランチを終わった後に読めば良いもの。
1年生の時もそうしていたわ。

1番の理由は、私といる事でレオお兄さまが何かを言われるのを避けるために、レオお兄さまとなるべく会わないようにしていた。

「そうか…程々にするだよ。
僕もたまにはティアとランチしたいからね。」

「はい。」

「…そろそろ戻ろう。休み時間が終わる。」

レオお兄さまが席を立つのに合わせて私も席を立つ。
温室の戸締りをしてからアルファードさんに鍵を返して教室へと戻った。

ああ…息苦しいわ。
温室から出た私は天をあおぐ。
温室と自室以外で安心できる場所なんてどこにもない。
まるで、大きな鳥籠みたいね…


「スティア・アストンフォーゲル。
この資料を教員室まで運ぶのを手伝ってくれ。」

「はい、先生。」

新学期が始まって数ヶ月。
陰口や蔑む視線は相変わらずだが、それにも慣れてきた。

令嬢として未熟な行いをするミラを姉の義務として嗜めていたことさえも曲がって伝わり私がミラをいじめていると言うウワサがひっきりなしに流れていたが、ここ最近新たなウワサはなく、その代わりにアリーヤ様とミラが良い雰囲気であるというウワサが耳に入るようになった。

まるで、嵐の前の静けさね…

『先生!少し伺いたいことが…』

「スティア・アストンフォーゲル。悪いが、先に行っていてくれ。
私の机の上に置いておいてくれれば良いから。」

「はい、分かりました。」

先生と渡り廊下を資料を運びながら歩いていると、先生が別の学院生に呼び止められた。
私は、言われた通りに先に進む。


『きゃぁぁっ!』

突然後ろから叫び声が聞こえたため後ろを振り返ると何故かミラが尻餅をついて私を睨んでいた。

「どうした!?大丈夫かミラ嬢!」

「大丈夫ですか?」

ミラの声に教室から人が出てくる。

「ひどいわ、スティアお姉さま!私を突き飛ばすなんて!」

「突き飛ばしてなんていないわ。私は前を向いて歩いていたし、荷物も持っているのよ。」

「言い訳をするな!お前がミラ嬢のことを突き飛ばしたんだろ!」

直ぐにミラに通ってきていた学院生が怒鳴る。

『まあ、スティア様がミラ様を…』

『怖いわ…』

『お可哀想なミラ様…』

私が何を言っても取り合ってくれないのね…

「では、両手に荷物を持っている私がどうやってミラを突き飛ばせるのか説明して下さる?」

「な…!!そんなの一度置いてやったんだろ!つくづく醜い女だな!こんなに目撃者がいるのに言い逃れをするなんて!」

「もう…やめて下さい…私が悪かったんだわ…お姉さまを差し置いてアリーヤ様と仲良くしていたから…」

ぷるぷると涙目で男子院生の袖口を掴むミラを見ればどう見ても被害者に見えるだろう。

『なんの騒ぎだ。』

廊下の向こうから取り巻きを連れたアリーヤ様が歩いてくるのが見える。

「アリーヤ様…!スティア嬢がミラ嬢を突き飛ばしたのです!」

「違うんです…私が勝手に転んだだけですわ…」

駆け寄ったアリーヤ様にミラは震えながら私のように視線を向ける。

「…本当なのか?スティア嬢。」

「違います。先生に頼まれて資料を教員室まで運んでいたところ後ろでミラが転んだのです。
私は、このようにずっと資料を持っていました。
突き飛ばすなんて出来ません。ぶつかってもいません。」

アリーヤ様は私とミラを交互に見る。
ああ…アリーヤ様は私を疑っているのね…

「俺は見ていました!スティア嬢がミラ嬢を突き飛ばしました!」

「スティア嬢はミラ嬢のことを目の敵にしているようですし、スティア嬢の言うことは信用できません。」

「…取り敢えず先にミラ嬢を医務室へ運ぶのが先だ。」

ミラを横抱きにすると私を一瞥して去っていった。

なんて冷たい目…
アリーヤ様も私のことを信じてくださらないのね…

私は、その場を逃げるように立ち去ると教員室に資料を置いて温室に走った。

雨が降って来たけど構わずに走る。
やっとの思いでたどり着いた温室の隅で声を殺して泣いた。

「どうして…私は…やってないのに…!
アリーヤ様に嫌われてしまったわ…!」

結局、昔から体が弱かった私は雨に濡れたことにより熱を出し、学院を1週間ほど休むことになった。

休んでいた1週間ほどで、私がミラを突き飛ばして怪我をさせたと言う否定する者のいないウワサは学院全体に広まることになった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

最後までお読み頂きありがとうございます!
今回は少し長くなってしまいました!
過去編なのでなるべく早く終わられせて本編へ進めたいと思ってはいるのですが…書きたいことが次から次へと…まだ終わりそうにありません…

今回は、ミラが入学してきた話です!
スティアの入学式に誰も参加できなかったのは仕事でトラブルがあったからですが、スティアの入学式には誰も参加しなかったのに、ミラの入学式では両親揃って参加していればそれはウワサにもなりますよね。
この一件が、スティアとミラのウワサに信憑性を持たせることになってしまい、破滅フラグを加速させたことは言うまでもありません。
ウワサや先入観というものはとても恐ろしいものですね。マンドラゴラも日々びびりながら暮らしています。

さて、次回は日記帳にもあった文化発表会です!
文化発表会が終われば、卒業パーティー。そう、スティアの断罪です。
長くなってきておりますが、お付き合いお願い致します!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生ヒロインは悪役令嬢(♂)を攻略したい!!

弥生 真由
恋愛
 何事にも全力投球!猪突猛進であだ名は“うり坊”の女子高生、交通事故で死んだと思ったら、ドはまりしていた乙女ゲームのヒロインになっちゃった! せっかく購入から二日で全クリしちゃうくらい大好きな乙女ゲームの世界に来たんだから、ゲーム内で唯一攻略出来なかった悪役令嬢の親友を目指します!!  ……しかしなんと言うことでしょう、彼女が攻略したがっている悪役令嬢は本当は男だったのです! ※と、言うわけで百合じゃなくNLの完全コメディです!ご容赦ください^^;

悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。

しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。 断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

「そうだ、結婚しよう!」悪役令嬢は断罪を回避した。

ミズメ
恋愛
ブラック企業で過労死(?)して目覚めると、そこはかつて熱中した乙女ゲームの世界だった。 しかも、自分は断罪エンドまっしぐらの悪役令嬢ロズニーヌ。そしてゲームもややこしい。 こんな謎運命、回避するしかない! 「そうだ、結婚しよう」 断罪回避のために動き出す悪役令嬢ロズニーヌと兄の友人である幼なじみの筋肉騎士のあれやこれや

わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが

水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。 王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。 数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。 記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。 リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが…… ◆表紙はGirly Drop様からお借りしました ◇小説家になろうにも掲載しています

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

処理中です...