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第四章 見つかった死体

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「お前は私に殺されたいのか」
 仏頂面の天使は、やたらと低い声でそう述べた。
 天使を呼んだのはこれで二度目だ。現在、午後0時過ぎ。場所は雄吾の家。
 警察からの事情聴取から解放されたのはつい先程のことだった。まるまる一日、何も腹に入れていない。足がふらつくも、腹が減っている感覚もない。マラソンランナーのランナーズハイ。今の自分は、まさしくそれだった。良い状況ではない。しかし、悪いとも思えなかった。今、この瞬間、飯を食って一呼吸置くこともしたくないくらいに、興奮していた。
「藪から棒に何を?」
「やぶ?何のことだかわからんが」天使は雄吾を睨む。「私を呼ぶ時は、定時内に呼べと言っただろう」
 不機嫌な理由はそれか。そういえばそんなことを言っていた気もした。
「しかしまあ、なんたってこんな夜中に。私達は人間みたいに、長い間寝たりしないが。それでもオフの時は体を休めるもんなんだよ」
 くどくど文句を言う天使。そもそも今更だが、天使事務局なんてものの定時なんて、教えられていないし、分からないではないか。
 しかし機嫌をこれ以上損ねて、時間をかけるわけにはいかない。それに交渉する時間も、あまり残されていない。その中で、彼には了承してもらわないといけないことがある。ひとまず雄吾は素直に、頭を下げた。
「ごめん。でも」
「なんだ、警察の所にいたからしょうがないとでも?」
 天使はサンプルの動向を、一部始終把握している。話が早いと思いつつも、彼はそれを否定するために首を振る。
「一つ、お願いがあって」
「お願いだと?」
 天使は欠伸をして、首を傾げつつ雄吾を見た。そんな天使に雄吾は頷き返す。「少し無理があるかもしれない。けど、どうしてもやってほしくて」
「あのな。悪いが、サンプルの望みは一つしか叶えられないんだよ」
「違う違う。何も、別の望みを叶えてほしいなんてことじゃない。俺がお願いしたいのは、『成り代わり』に関することだよ」
「『成り代わり』の時間をのばしたり、回数を増やすなんてことも無理だぞ」
「そうじゃないって」
 話が前に進まない。時計を見る。それから、スマートフォン。まだ、大丈夫。大丈夫だが、早めに確約をとっておきたいのだ。話の流れをざっくりと切るように、雄吾は息を大きく吸って、尋ねた。
「あのさ…」
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