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王立学園編~後編
44.魔法大会⑧
しおりを挟む次はシード権を持ったアリアとの対戦だ。
「アリア! 絶対負けるな!」
「アリアは2属性だし魔力も高いから大丈夫!」
「俺の屈辱を果たしてくれ!」
試合前に、アステル、マイク、レスターに励まされながらアリアは試合会場に入る。
その後を少し遅れて私も続いた。
2人が会場内に入ると、試合開始の笛が鳴る。
「ファイアストーム!」
いきなり私の周りを範囲して、嵐の炎を巻き起こし、火の勢いで私を焼ききろうとした。
すぐさま空間魔法を展開し、鎮火する。
光の矢を生成し、アリアに向かって放つが、アリアもすぐにシールドを張って、矢を防いだ。
私は、アイテムボックスから槍を取り出し、雷エネルギーを纏わせて、シールドに突き刺し、シールドを破壊した。
「えっ!? なんで!?」
アリアは動揺して、次の一手をすぐに出せなくなっている。
その隙に一旦槍は片付けて、今度はアイテムボックスから鞭を取り出し、アリアに向かって振るう。
動揺しているアリアを鞭で縛り上げると、悔しそうな表情で叫んできた。
「ちょっと! それって、アイテムボックスなんじゃないの!? この世界にはないはずよ! 何故あなたがそれを使えるのよ!」
アイテムボックスなどという単語を耳にした事のない他の人たちは、皆、首を傾げて
「アイテムボックスって何だ?」
「あの鞭はどこから? 持ってた槍はどこに行った?」
などと噂していた。
「やっぱりあなた、転生者でしょ!? でなきゃそんな風にアイテムボックスが使えるわけがないわっ!」
まぁ、いいか。
どうせ近い内にアリアには、ちゃんと話して宝玉をこちらに渡してもらわないといけないし。
ラケシス様の遣いが2人もいるなら、アリアも信じるかもしれないものね。
「アリア様、あなた、転生前に女神様のところから持ってきた物があるでしょ?
それ、女神様に返してくれない?」
鞭で身動きが取れないアリアは、私の言葉に怪訝な顔で見る。
「はぁ? 何言ってるのよ。って、やっぱりあなたも転生者じゃない! 日本なんて知らないって言ったくせに!」
「あなたの持ち出した玉、あれ、危険な物だって知ってる?」
私の言葉に、アリアはキッと私を睨み付ける。
「ふん! そんな事言って、願いを叶えてくれるビー玉を狙ってるんじゃないの!? あれは私が女神様から貰った物なのよ! あんたなんかに渡さないんだからっ!」
うん、やっぱりこういう反応だよね。
つい、アイテムボックスについて言及されたのと、有利な体勢だからか気が大きくなっちゃって言っちゃったけど、まずかったかな?
あとで、グレイに怒られるかも……
「まぁ、今はいいわ。信じてもらうには私の力をまず示さないとね。女神様から貰った、あなたよりも大きな加護の力を」
そう言って、鞭に雷エネルギーを纏わせる。
鞭伝いに電撃を放って、アリアを失神させた。
「勝者、エマ・ベルイヤ!」
審判の判定に勝敗が決まった。
失神したアリアは、担架で医務室に運ばれる。
「「「アリア!」」」
アステル王子たちが、アリアの所に駆けつけてからこちらを睨み付ける。
「貴様! よくもアリアを!」
「このお礼は必ずするからな!」
「アリアに何かあったら許さない!」
アステル、レスター、マイクはそう叫び、どうやらレスターとマイクは医務室まで付き添うようだ。
残ったアステルは改めて私を睨んできた。
「貴様の実力が本物かどうかなんて、もはやどうでもいい。アリアの仇はしっかり取るからな!」
「はぁ……」
私は目を丸くして、そう返答する。
アステルは軽く舌打ちをして、足早に控え室に戻って行った。
別にただの対戦だし、アリアが死んだわけでもないのに大袈裟ですね。
……という言葉を飲み込んだ私を誰か褒めてほしい。
優勝したら絶対にあの王子との婚約の話は白紙に戻してもらわなければ!
そう固く決心しながら、ゆっくりと控え室に戻った。
こうして、準々決勝に進出する4名が決定した。
アステル・ド・サンタベルグ
レイラ・アスティ
オリバー・ベオグラード
エマ・ベルイヤ
準々決勝の1組目はアステルとレイラ
2組目が私とオリバーだ。
まず、1組目の対戦が始まった。
アステルは光魔法を剣に纏わせて、レイラに斬りかかっていく。
レイラは水魔法で水カーテンを作って、アステルの視界を遮った。
しかしアステルは、その水カーテンをも剣で切り裂き、レイラの間近に迫る。
レイラは水を氷点下まで温度を下げて氷化し、氷柱をアステルの上から落としていく。
しかし、レイラの近距離まで近付いたアステルは、氷柱を剣で軽く壊し、剣の振り切った風圧でレイラは吹き飛ばされ、会場の壁に激突する。
そのままレイラは立ち上がる事が出来ないでいた。
これにより、レイラは戦闘不能と判断され、 アステルの勝利となった。
レイラはイベントスタッフに支えられながら、戻ってくる。
「レイラ! 大丈夫!?」
私は駆け寄ってレイラの状態を確認した。
「大丈夫ですよ。人間の女子の身体はすぐに吹き飛ぶのですね。踏ん張りが効かなくて困りましたよ。
もう少しこの身体に慣れていたら、負ける事なかったんですが、まぁ私の目的は既に果たせたので、ここらが引き際ですよね」
小声でそう言いながら笑っているので、ホッとした。
「次はエマ様の番ですね。頑張って下さい」
「うん、頑張ってくるね」
私はもうすぐ始まる対戦に思いを馳せる。
私の知っているオリバーは、もう居ないのだろうか。
オリバーもアリアの願い事で、人が変わったようになっているのか……。
こんな形でオリバーと向き合う事に、少し悲しい思いを感じながら、次の試合の始まるアナウンスを聞いていた。
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