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2章 恋の修羅場ラバンバ!
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しおりを挟む───初夏も近くなった午後、外は爽やかな風が吹く。キラキラと注ぐ木洩れ日は眩いほどに輝いていた。
放課後の屋内プールでは新入生らしき顔ぶれが沢山見られる。夏目の活躍もあったお陰か、今年の水泳部は入部満員御礼を迎えていた。
「夏目! 調子いいな、凄いタイムだぞ!」
プールサイドに上がった夏目にコーチがそう声を掛けてくる。夏目は当然とでも言いたげに余裕の笑みを向ける。
プールのコースに夏目専用のロープを張って、国体に向けての特訓に余念がない。
タイムは順調に伸びている。
夏目は一息付くと、椅子に掛けていたタオルで濡れた身体を拭きながら窓の外を眺め、あっ!と声を上げていた。
「苗ー!」
隣に背の高い男が並んで歩いてる──
見るからに晴樹ではないと確信しながら夏目は人目も気にせず手を振った。
「あ、大ちゃん!」
苗も手を振り返すとこちらに向かって歩いてくる。
一緒に着いてくる男子を何気に気に掛けながら、夏目はふと気づいた。
──…あれ?
あいつ、新入生代表で挨拶してた奴だ……
そう思いながら近くなってくるその相手を見つめ、夏目はハッとする。
「──…っ…」
苗の隣に並ぶ絵姿で夏目は思い出していた──
・
“嫁にもらうって言ってたもん”
「……!っ…」
あいつっ…苗の田舎の幼馴染みじゃんっ!
夏目は去年の夏休み、三つ子に見せてもらったアルバムの写真を鮮明に思い浮かべていた。
苗の隣を添うように歩く。そんな悟に夏目は一気にライバル心が沸き上がる。
「ぜんぜんデケーっじゃん…っ…」
夏目が予想した通り、中学の頃の写真に写っていた小柄な少年は立派に長身の家系の血を引いていた。
スラリと足から伸びたであろうその姿に夏目は小さな嫉妬を浮かべる。
「大ちゃん、タイムはどんな?」
「……ああ、かなりいいよ…てか、苗は何してるんだ?」
夏目は悟を気に掛けながらも近くに来た苗に話し掛けた。
苗は答える。
「今からね、剣道部の見学に行こうと思ってさ」
「剣道?」
聞き返してちらりと見る夏目に悟は何か含んだ眼差しを返していた──
「……!…」
夏目は察知する。
そして同じく悟も──
苗に対して特別な感情がお互いあることに、二人は本能的に気づいていた。
・
苗はそれもわからず能天気に話を続ける。
「あ!この子、田舎の幼馴染みの悟ちゃん」
「知ってる……」
「え?知ってる?……知ってるの? なんで?」
素朴な疑問だった。
一言答えた夏目の視線に尚更棘が見える。悟もそれを感じて一瞬眉をピクリとさせる。
そして悟はふっ…と微かに嫌な笑みを口端に浮かべて見せた。
夏目はその表情にあからさまにムッとした。
こいつ──
完全な敵だ──…っ
しかもアイツとはかなり違うタイプの嫌な奴だ…っ…
そう感じてモヤモヤしてくる夏目に苗は返す。
「あ、と…じゃあ、苗達見学に行くから大ちゃんもがんばってね!」
「…っ…あ、苗…」
手を振る苗に小さく呼び掛けたが振り向いたのは悟のほうだ。
夏目は流し目を返してくる悟を睨むように見つめる。
呼び掛けたはずの苗はまったく気づかずに背中を向けたままだ。
「……っ!?…」
夏目は睨んでいた目を見開いた。先ほどの嫌味な笑みに輪を掛けた視線を悟は夏目に投げ掛けてくる──
新たな恋敵の登場に、今年の夏は──去年よりもヒートアップしそうな予感を夏目は静かに感じていた……。
・
「──……」
「ん、どうかしましたか晴樹さん?」
急に顔を上げた晴樹に直哉は声を掛けていた。
「……いや…、なんかちょっと嫌な予感がしただけだ…」
「…予感?」
「ああ、大丈夫だ気にするな」
自らそう返しながらも晴樹は口に手を当てて考え込んでいた──
……なんか、すげー…嫌な感じがしたけど一体なんだったんだ?…
婚約したにも関わらず──
晴樹と苗の二人の関係は今後も前途多難が窺える……。
晴樹は気に掛けながら、机を挟んで向き合った直哉と何かの資料に目を通していた。
目の前には田舎の風景を写した写真が沢山ある。風情ある無人の駅や廃校になった木造校舎──
住む人だけでは補えない田舎をどうにか活性させるよう、祖父や父親から晴樹に与えられた課題。
それは苗の田舎の村起こしだった──
以前、泊まったことのあるぼったくりホテルをどうにか有効活用できないかと、晴樹自身から口に出した結果──
その地味で何気に大掛かりな仕事は晴樹に託された。
経営、企画、プランナーとしての腕はどうなのか──
晴樹は今、まさに試されている。
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