ありのままのキミに夢中 ~イケメンはずんどうぽっちゃりに恋をする!~

中村 心響

文字の大きさ
249 / 255
2章 恋の修羅場ラバンバ!

2

しおりを挟む

場所は一杯ある…

有り余った土地、放置された建物を活かして予算をどう低く見積もるか──

何を推しにして集客率を上げるべきなのか──

色々考えた末に村、全体をテーマパークとして開発することに晴樹は重点を置いた。

常に人気を誇るディズニーランドやユニバーサルスタジオとまではいかずとも。

そうして考えた企画の客の反応を見る為に、晴樹はあるイベントを一学期の学園行事に組み込んでいた。

「たぶん上手くいきますよ…この手の内容にはリピーターがつくから……」

「そう思うか?…」

少々不安な表情を覗かせていた晴樹を直哉は力強く後押しする。

晴樹は聞き返しながら暫し直哉を見つめる……

「……? 何か顔についてますか?」

「やっぱ俺、お前欲しいわ……」

「………」

“右腕として”…その一言を付け足すのを忘れたばっかりに、直哉の表情がほんのり赤くなっていく……。

やがては結城財閥の後継者となる晴樹に気に入られたのなら直哉もこの先安泰だろう。

先の全貌を見据えつつ、晴樹は資料を静かに閉じていた。



「みんな、弁当は食べてるかー?」


ガタンゴトンと全体が揺れ動く。
ガヤガヤと賑やかな声がする。その中で声を張り上げた担任の教師が確認しながら何かの紙を前から配っていた。

「食べたら弁当の感想も書くようにな」

賑やかさの元凶。明るい生徒の返事が車内に響いていた。

海風香る海岸沿い──

車窓から望める風景を眺めながらの駅弁“竹鳥物語”が結構イケる。

竹の子ご飯に甘ダレの焼き鳥はハズレがない味付けだった。

本日は晴天なり──

短い空の旅を終えて列車で目的地へと向かう一行。

今日は結城学園の全学年が合同で参加する林間学校初日。

大人数の為に移動の列車や宿泊するホテルに旅館はほぼ貸し切り状態だ。

ただ、花火やサーフィンといった収益見込める夏期と違い、今時期は普段なら村全体が閑散としている。

その為か、今回のこの林間学校企画。結城学園ご一行様による経済効果はかなり期待できると予想される。

「準備は進んでいますか?」

座席の隣にいた直哉が聞いてくる。
晴樹はパソコンを開いて直哉に見せた。

「一週間前には内装も済んでるらしいから、今日は下見も兼ねて皆の反応を見ることにする」

現地に先に入っていた村井から送られたメール。今回の極秘プロジェクトの進み具合を晴樹は直哉にも確認させた。

「おお、なんか低予算でかなり本格的になってますね…」

パソコン画面の写真を見て、直哉は冷や汗と生唾を飲み込む。

写し出された画像はなんとも不気味な雰囲気の漂う木造の教室だった……。



夏であろうが冬であろうが──

嫌だ嫌だと言いながら人は恐い話しが大好きだ。

そういうわけで──

今回のプロジェクトの見出しはこれだ!

“大人も子供も夢中になる!恐怖と謎と大冒険!ホラー・ミステリーツアー!”

村全体がお化け屋敷やミステリースポットとなって謎解きや宝探しにも挑戦できるようになっている。


人の興味を煽るのに大掛かりな機械や高い予算を掛ける必要はどこにもない。

この企画に携わってもらったシナリオ作家は打合せ時にこう口にした。

「……入り込んでもらいましょう……お客様自ら恐怖の世界に……ヘッヘッヘ…」

「……お、お客自ら?…っ…」

会話よりもあまりにも気味悪いその作家の雰囲気に、晴樹は唾を飲みながら聞き返した。

「ええ、ほんの少し…“きっかけ”を与えるだけで……人は勝手に想像し……勝手に自ら描いた物語に飲まれていきますから……ヘッヘッヘ…」

「……っ…」

「ちょっとしたきっかけで……心理は勝手に恐怖の世界をさ迷います……ほら…」

そう口にした作家は晴樹の背後を無言で指差した──


目を見開いたその表情に晴樹はゾクッとして後ろを咄嗟に振り向く。



「…ヘッヘッ…なんでもありません…」

「──っ…」
なんだこいつ…っ


微妙にムカつく…

簡単に騙された晴樹を笑うと作家は言った。

「鳥肌たったでしょ……」

「………」

「何も言ってないのに勝手に恐いものを想像したでしょ……」

「はあ、……まあ…」

認めたくないけど言われた通りだ。

「その想像力を掻き立ててあげればいいんですよ……」

「………」

「そしたらそのお客様にとって一番恐いことを勝手に想像して楽しんでくれます……これが恐怖を楽しむ醍醐味です……ヘッヘッヘ」

「……よく…わかりました…」

「そうですか……あ………」

「……っ…」

作家は晴樹の背後をまた指差した。

恐さを感じたのは確かだ…

そして、さっきと同じ動きをする作家に晴樹はひそかに青筋を立てていた。

大掛かりな仕掛けは必要ない。体を使って体感してもらう。

恐怖を味わい謎を探求し、解決する達成感。

飽きられない心理ゲームを提供し続け、次のリピーターに繋がるように……

仕掛ける側である晴樹は苛立ちもすれどこの作家に小さな期待が膨らんだ。

とにかく現地に着いたら見に行こう……。


田舎に着いて荷物をホテルに預けたらツアーは直ぐに開催される。

生徒にはリクレーションが行われるとしか、林間学校のしおりには記されていない。

晴樹は皆の反応を楽しみにしながら、車窓から流れる景色に目を向け頬を緩めていた……。



無駄に広い田舎町。

目的地に着き列車を降りた生徒達は、各々が選んだツアーコースに別れ宿泊施設に足を向けた。

ホテルや民宿。その他に廃校の校庭にキャンプを張って、空いてる施設を無駄なく使い回し、宿泊場所を確保している。

その中でもキャンプはかなり人気があった。

優雅な暮らししか知らないお金持ちの生徒達には全てが物珍しく中々の高評価だ。

各々の宿泊場所に荷物を預け、動きやすい服装に着替えた生徒達は施設の一ヶ所に集められている。

廃校の校庭では三学年の生徒達が入り乱れた中に、苗と由美が居た。

「今から何が始まるのかね?」

「なんかゲームするって」

こっそり聞いた苗に、由美はよくわからないまま答える。苗達はキャンプコースに参加していた。


前の方では引率の教師が何かの紙を配っている。

「今からグループを作って夕食の材料を各自で集めるぞ」

プリント用紙を配りながら言った教師の言葉に皆がざわついた。

「食材?……校舎の中にあるって書いてある……」


苗は回ってきたプリントを手にして内容に目を通すと由美と顔を見合わせた。

そこに居た生徒皆にプリントが行き届くと教師が言った。

「今から胆試しだ」

「ええーっ!?…こんな真っ昼間から…っ…」

生徒全員が口を揃えていた。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

処理中です...