ありのままのキミに夢中 ~イケメンはずんどうぽっちゃりに恋をする!~

中村 心響

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2章 恋の修羅場ラバンバ!

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場所は一杯ある…

有り余った土地、放置された建物を活かして予算をどう低く見積もるか──

何を推しにして集客率を上げるべきなのか──

色々考えた末に村、全体をテーマパークとして開発することに晴樹は重点を置いた。

常に人気を誇るディズニーランドやユニバーサルスタジオとまではいかずとも。

そうして考えた企画の客の反応を見る為に、晴樹はあるイベントを一学期の学園行事に組み込んでいた。

「たぶん上手くいきますよ…この手の内容にはリピーターがつくから……」

「そう思うか?…」

少々不安な表情を覗かせていた晴樹を直哉は力強く後押しする。

晴樹は聞き返しながら暫し直哉を見つめる……

「……? 何か顔についてますか?」

「やっぱ俺、お前欲しいわ……」

「………」

“右腕として”…その一言を付け足すのを忘れたばっかりに、直哉の表情がほんのり赤くなっていく……。

やがては結城財閥の後継者となる晴樹に気に入られたのなら直哉もこの先安泰だろう。

先の全貌を見据えつつ、晴樹は資料を静かに閉じていた。



「みんな、弁当は食べてるかー?」


ガタンゴトンと全体が揺れ動く。
ガヤガヤと賑やかな声がする。その中で声を張り上げた担任の教師が確認しながら何かの紙を前から配っていた。

「食べたら弁当の感想も書くようにな」

賑やかさの元凶。明るい生徒の返事が車内に響いていた。

海風香る海岸沿い──

車窓から望める風景を眺めながらの駅弁“竹鳥物語”が結構イケる。

竹の子ご飯に甘ダレの焼き鳥はハズレがない味付けだった。

本日は晴天なり──

短い空の旅を終えて列車で目的地へと向かう一行。

今日は結城学園の全学年が合同で参加する林間学校初日。

大人数の為に移動の列車や宿泊するホテルに旅館はほぼ貸し切り状態だ。

ただ、花火やサーフィンといった収益見込める夏期と違い、今時期は普段なら村全体が閑散としている。

その為か、今回のこの林間学校企画。結城学園ご一行様による経済効果はかなり期待できると予想される。

「準備は進んでいますか?」

座席の隣にいた直哉が聞いてくる。
晴樹はパソコンを開いて直哉に見せた。

「一週間前には内装も済んでるらしいから、今日は下見も兼ねて皆の反応を見ることにする」

現地に先に入っていた村井から送られたメール。今回の極秘プロジェクトの進み具合を晴樹は直哉にも確認させた。

「おお、なんか低予算でかなり本格的になってますね…」

パソコン画面の写真を見て、直哉は冷や汗と生唾を飲み込む。

写し出された画像はなんとも不気味な雰囲気の漂う木造の教室だった……。



夏であろうが冬であろうが──

嫌だ嫌だと言いながら人は恐い話しが大好きだ。

そういうわけで──

今回のプロジェクトの見出しはこれだ!

“大人も子供も夢中になる!恐怖と謎と大冒険!ホラー・ミステリーツアー!”

村全体がお化け屋敷やミステリースポットとなって謎解きや宝探しにも挑戦できるようになっている。


人の興味を煽るのに大掛かりな機械や高い予算を掛ける必要はどこにもない。

この企画に携わってもらったシナリオ作家は打合せ時にこう口にした。

「……入り込んでもらいましょう……お客様自ら恐怖の世界に……ヘッヘッヘ…」

「……お、お客自ら?…っ…」

会話よりもあまりにも気味悪いその作家の雰囲気に、晴樹は唾を飲みながら聞き返した。

「ええ、ほんの少し…“きっかけ”を与えるだけで……人は勝手に想像し……勝手に自ら描いた物語に飲まれていきますから……ヘッヘッヘ…」

「……っ…」

「ちょっとしたきっかけで……心理は勝手に恐怖の世界をさ迷います……ほら…」

そう口にした作家は晴樹の背後を無言で指差した──


目を見開いたその表情に晴樹はゾクッとして後ろを咄嗟に振り向く。



「…ヘッヘッ…なんでもありません…」

「──っ…」
なんだこいつ…っ


微妙にムカつく…

簡単に騙された晴樹を笑うと作家は言った。

「鳥肌たったでしょ……」

「………」

「何も言ってないのに勝手に恐いものを想像したでしょ……」

「はあ、……まあ…」

認めたくないけど言われた通りだ。

「その想像力を掻き立ててあげればいいんですよ……」

「………」

「そしたらそのお客様にとって一番恐いことを勝手に想像して楽しんでくれます……これが恐怖を楽しむ醍醐味です……ヘッヘッヘ」

「……よく…わかりました…」

「そうですか……あ………」

「……っ…」

作家は晴樹の背後をまた指差した。

恐さを感じたのは確かだ…

そして、さっきと同じ動きをする作家に晴樹はひそかに青筋を立てていた。

大掛かりな仕掛けは必要ない。体を使って体感してもらう。

恐怖を味わい謎を探求し、解決する達成感。

飽きられない心理ゲームを提供し続け、次のリピーターに繋がるように……

仕掛ける側である晴樹は苛立ちもすれどこの作家に小さな期待が膨らんだ。

とにかく現地に着いたら見に行こう……。


田舎に着いて荷物をホテルに預けたらツアーは直ぐに開催される。

生徒にはリクレーションが行われるとしか、林間学校のしおりには記されていない。

晴樹は皆の反応を楽しみにしながら、車窓から流れる景色に目を向け頬を緩めていた……。



無駄に広い田舎町。

目的地に着き列車を降りた生徒達は、各々が選んだツアーコースに別れ宿泊施設に足を向けた。

ホテルや民宿。その他に廃校の校庭にキャンプを張って、空いてる施設を無駄なく使い回し、宿泊場所を確保している。

その中でもキャンプはかなり人気があった。

優雅な暮らししか知らないお金持ちの生徒達には全てが物珍しく中々の高評価だ。

各々の宿泊場所に荷物を預け、動きやすい服装に着替えた生徒達は施設の一ヶ所に集められている。

廃校の校庭では三学年の生徒達が入り乱れた中に、苗と由美が居た。

「今から何が始まるのかね?」

「なんかゲームするって」

こっそり聞いた苗に、由美はよくわからないまま答える。苗達はキャンプコースに参加していた。


前の方では引率の教師が何かの紙を配っている。

「今からグループを作って夕食の材料を各自で集めるぞ」

プリント用紙を配りながら言った教師の言葉に皆がざわついた。

「食材?……校舎の中にあるって書いてある……」


苗は回ってきたプリントを手にして内容に目を通すと由美と顔を見合わせた。

そこに居た生徒皆にプリントが行き届くと教師が言った。

「今から胆試しだ」

「ええーっ!?…こんな真っ昼間から…っ…」

生徒全員が口を揃えていた。
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