ありのままのキミに夢中 ~イケメンはずんどうぽっちゃりに恋をする!~

中村 心響

文字の大きさ
251 / 255
2章 恋の修羅場ラバンバ!

4

しおりを挟む

「醤油って書いてる…っ…」

「こっちは砂糖だってっ…」

「あ、ジャガイモだ……」


カレーに脈絡のない調味料がクジで引かれ、思考が付いていかない生徒達はその場で膝を折っていた。


料理をしたことのない生徒達全員が翻弄される。

苗は呟いた。

「肉……じゃが……?…」

「あ!そうかもっ…」

由美が苗の答えに頷いた背後で、次にクジを引いた生徒が頭を掻いた。

「…長葱……当てちゃった……」

戸惑いながら口にする。


「長葱!?……え!?…てことは……すき焼きっ!?」

苗の答えに由美がそれだ!と指差した。

「もうこの際、ジャガイモの存在は無視しよう!」

由美は言い切る。
調味料が醤油と砂糖なのだ。カレーの確率はかなり低い。

ざわざわとするその中でくじ引きは続いている。

「こっちは味噌当たったけど……」

「あたし達はキャベツだ……」

「俺達、大根……」

「トマト……」


「…っ…なに、何が出来上がるの?もしかして闇鍋食べさせる気かしら」

不安に駆られる生徒を他所に、カレーのルーが読み上げられたのはそのずっと後だった……。




「いいかー、各自手に入れる物を把握したら目隠ししろよ」

教師の声掛けに生徒の返事が返ってくる。

チームごとにスタート地点もばらばらだ。おまけに目隠ししたままスタート地点まで誘導される。

古い校舎。軋む廊下──

上の階では早くもゲームが始まったのだろうか。早速壮絶な悲鳴が響いてきていた。

視界を塞がれた今、その絶叫は否応なしに恐怖を煽っていた。

<目隠しを外せ>

くぐもった低い声が何処からともなく聞こえてくる。


<目隠しを外したら矢印の通りに進め……>


苗達のチームは恐る恐る目隠しを外していた。

視界にはジャングルが生い茂るように暗幕の垂れ下がる暗い廊下が映り込む。

そこはもう……別世界だった……。

「やだ怖いっ…」

苗を中心にして、チーム五人皆が苗にしがみつく。

暗い中で、フクフクとした肉付きの柔らかい感触は安心感がある。

皆は苗にぶら下がるようにして歩いていた。



途中で脱落する者が居たとしても、チームの一人が最終地点まで到達出来れば割り当てられた食材が手に入る。

その代り、最後に残った者には絶対にリタイヤ出来ないという精神的圧力が課せられる。

「うわあぁぁっやだ苗ちんっ……何か今ペタって顔に貼り付いたっ…」

「イデデでっ…由美わかったから腕に爪を立てないでっ…」

由美の叫び声につられ、周りもギャアギャア喚いてパニックに陥る。

「いやぁぁっ…あたしもう無理っ!…奥になんか変な白いの見えたもん今っ!」

発狂したように一人が訴えた。

そんな状況を繰り返し、離脱者が一人……また一人と人数が減っていく。

気付けば由美と二人連れ……。

「ねえ苗ちん……聞こえる…?」

「うん…聞こえるだよ…っ…」

二人は確認し合うと耳を澄ませた。

緊張仕切った表情で苗のクリ目が驚くほど見開いていく。
二人の耳にはどこからか、ずるずると何か重いものを引きずる音が聞こえてくる。

苗と由美はびくびくしながらそおっと後ろを振り向いた。



「──っ…」

真っ暗な廊下の奥深く。
懐中電灯で照らせばオレンジ色の光がボンヤリと浮いていた。

「──…きっ…」

叫ぶ声も出きらずに、由美はその場で白眼を剥くと気を失って倒れていた。

「由美っ……」

廊下の奥から切羽詰まった声で呼び掛けられた。
勢いよく近付いてくる、チカチカと揺れる白い灯り。

慌てて駈けて来たのは夏目と克哉の二人だった。

手には懐中電灯と赤いネットに入った玉葱をぶら下げている。

「なんだ玉葱じゃんっ…」

オレンジに光ったのは懐中電灯の灯りに反射した玉葱の皮だったのだ。

正体が知れて苗はホッと胸を撫で下ろしていた……。克哉は気絶した由美を抱き上げる。

「俺、由美と先に戻るから」

ゴールまで早々と制覇した夏目達は、食材の玉葱を手に入れて帰る途中だったのだ。

「玉葱は俺が持って戻るから由美だけ連れて行けよ」

「ああ、悪いな。頼む」

詫びる克哉を急かすように夏目は手を振る。

小さくなっていく克哉の背中を見届けると、夏目は思わず顔を緩ませた。



やばい…っ…

嬉しくてファイティングポーズ決めちゃいそうだっ…

夏目は脇で拳をぎゅっと握っていた。
苗を偶然に見つけてしかも二人きり。この状況に気持ちが高揚する夏目の表情は、鼻がヒクヒクと膨らんでいる。


「──っ…あいつっ…」

晴樹は一瞬モニターに映った二人を見て呟いた。


「直哉……ちょっと席外すから」

「……わかりました」

チッと舌を強く打って腰を上げた晴樹に直哉は頷いて返す。

出ていく晴樹の後ろ姿を見送ると、直哉はモニターを見て動きを止めた。

「これか……」

顎に手を当てて呟くと、その場から移動する苗達をカメラで追った。

見通しの悪い中、懐中電灯を手にして晴樹は古い校舎の廊下を歩く。

ゲームに参加する生徒とカチ合わないように、晴樹は壁際に身を隠しながら苗達が居る場所へ足早に向かった。

「……っ…どいつもこいつもっ…なんで諦めない…っ」

晴樹は暗闇の中で呟いた。

婚約しているにも関わらず、恋敵は引き下がらない。両想いなのに片想いの時と同じようにいつまでも不安が付きまとう。

「……っ…」

晴樹は唇を噛み締めた。
モニター室から苗の所までは結構距離がある。
暗幕で囲われた慣れない渡り廊下を抜けて、急ぎ足で向かう晴樹の表情には焦りが浮かんでいた。

「苗、俺が付いてるから大丈夫だって!」

「うぅあ…っ…でもこの先は行きたくないだよ…っ」

足を突っ張りながら歩く苗の肩を抱き、思いきり密着しながら夏目は苗を誘導していた。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい

みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。 それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。 願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。 スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。 ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。 ※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…

senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。 地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。 クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。 彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。 しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。 悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。 ――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。 謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。 ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。 この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。 陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました

ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。 意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。 しかし返ってきたのは―― 「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。 完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。 その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。

処理中です...