ありのままのキミに夢中 ~イケメンはずんどうぽっちゃりに恋をする!~

中村 心響

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2章 恋の修羅場ラバンバ!

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背を向けてむーっと唸り、眉間を寄せる苗を悟は後ろから覗き込む。

「どうした?何か考えごとか?」

「そうだよ!今、久し振りにすっごい考えごとしてるだよ!」

「苗は考えごとなんかしちゃダメだろ?何の考えごと?もしかして俺のこと?」

「そうだよ!すごい考え込んでるだよ!」

そうムキになって答えた苗を見て悟は思わず笑みを浮かべた。

「──…っ…人が悩んでるのに何でそんな嬉しそうだかね!?」

「そりゃ嬉しいよ」

「………」

怒ったはずが逆に悟に真顔を向けられて、苗は目を見開いた。

真っ直ぐに見つめてくる悟を前にして、苗はごくっと唾を飲む。

急に雰囲気が変わるから困ったものだ。

「苗……」

「……っ…」

暫しの沈黙の後、すっと伸びてきた悟の腕に苗は思わずビビった。

「もう戻ろ?皆待ってると思うから」

「ぬあ!そう言うならややこしい動きしなきゃいいだよ!」

「何言ってるんだよ?早く行くぞ」

「……っ…」

苗の手を握った悟は荷物を肩に抱え苗を振り向くと、一人であわてふためく苗を笑っていた。

そんな小さな危機を脱した苗を探して晴樹は真っ暗な校舎を歩き回っていた……。

「直哉……苗が今どこかわかるか?」

晴樹はモニターの前に居るであろう直哉に携帯電話で連絡を入れた。

直哉は困ったように返答する。

「それが……夏目ともはぐれたみたいで……」

「はぐれた?」

「はい……苗さんだけ突然消えてどのモニターにも映らないんです」

「──…なに!?」

直哉の言葉に晴樹は目を剥いて返していた……。




「消えたって……」

晴樹は口に手を当てて呟く。

「わかった…っ…ちょっと探すからお前はそっちを頼む」

電話を切った晴樹の額には焦りが浮かんでいた。

モニターに映らないってことは、モニターのない死角の場所を探した方が早い。
機械を設置した場所なら頭に入っている。晴樹はそう考えながら苦い表情を浮かべた。

失敗した……。
こんなことなら苗だけ参加させずに傍に置いて置けばよかった……

ビジネスとして取り組んでいた計画に後悔の念が湧く。

客としての反応を窺うのなら、他の生徒達だけでも十分にデーターは取れた筈だ。

まさかこんな簡単な作りの建物で人を、しかも苗を見失うことになるとは思わなかった。

晴樹は暗幕を捲って回りながら苗を探す。

そんな晴樹の耳に聞き覚えのある声が響いていた。

暗幕の向こうでガラッと開いたドアから外の明かりが漏れる。
その明かりに紛れ、笑顔を浮かべる悟と何故か怒り顔の苗が姿を見せていた。

「あれ、兄さん」

探し回った晴樹の気も知らず、苗は晴樹に気付き、能天気に呼び掛ける。

「……っ…どこに居たんだお前ら」

夏目とはぐれ、一人で迷ってると思ったからすごく焦ったのに、一緒に現れたのがよりにもよって悟とは──。

晴樹は二人を見つけた早々表情を険しくしていた。



晴樹は二人の前まで歩き腕を組んで上から威圧を掛けた。

「ミッションクリアしたなら速やかに戻る。配ったプリントにそう書いてあっただろ」

もっともらしいことを口にする晴樹の口調に苗はまたプッと頬を膨らませた。

「なんだその顔は?アン◯ンマンか?」

「違うだよ!言われなくても今から戻るとこだっただよ!」

「じゃあ早く戻れよ」

「……っ…」

厳しい口調にに苗は尚更ムッと口を尖らせていた。
怖い中を頑張って歩いたのに、晴樹の鬼のような態度が苗もちょっと気に入らない。

「なんだよ兄さん自分は何もミッションやってないくせにさっ」

「俺はイベント主催側だろ?」

「……っ…」

晴樹の当たり前だと言いたげな口振りに苗の顔が思いきり歪んだ。

ううっと声を漏らした苗の背中を悟が軽く押す。

「苗、これ持って先に戻って」

「ううっ…」

「俺のも班の奴に渡して。早く調理に入らないと間に合わないから頼むな」

悟は今にも泣き出しそうな苗を急かした。

「あ、苗っちょっと待て!」

頷いて駆け出した苗の背に晴樹が腕を伸ばす。
その動きを悟が遮っていた。
晴樹は邪魔をする悟を睨んだ。

「なんの真似だこれは」

「苗に近付かないで欲しいから」

「──……」

悟の口から出た言葉に晴樹は驚きを隠せなかった。



はっきりとした口調。笑みを浮かべながらも目は少しも笑っていない。

強気の視線を向ける悟に晴樹は、はっと笑って返した。

「近付かないも何も…」

「婚約してるから。って言いたいんですよね」

「………」

「特別な関係で一緒に住んでるから」

「………」

「だからそれがなんだって言いたいんですか?」

「なに言ってんだお前」

「結城さん知らないでしょう?苗がこの学校をすごく怖がってるって」

「………」

「昔、ここで苗すごい怖い思いしたことあるんですよ……」

「結城さん知らないから……苗が怖がること平気でできちゃうんですよね」

「……っ…」

初めて聞いた苗の過去に、晴樹は戸惑いを見せていた。悟はそんな晴樹を真っ直ぐに見据える。

「あなたが守れないから……俺が守っただけですよ」

そう付け加えた悟の言葉に晴樹は表情を険しくさせた。
悟はそんな晴樹にゆっくりと背を向ける。

「な…待て悟っ苗には」

「何も知らないくせにでしゃばるなっ…」

「………」

怒りに紛れ、掠れた声が聞こえる。晴樹は本心を露にした悟の捨て台詞に思わず自分の言葉飲み込んだ。



悟は校舎の出口に向かって歩く。強い足取りが悟の憤りを物語る。

“苗には”

苗には何って言いたい?
手を出すな。か?

冗談じゃない…っ…
手を出されたのも獲られたのもこっちだ……

苗を守るのも……俺だっ──



校舎を出れば、校庭では夕食の準備が始まっている。
各班が手に入れた食材で色々な料理が出来つつあるようだ。

無事に戻った苗と楽しそうに料理をする夏目。
そして、苗から離れた位置で自分達の役割をこなす悟。

晴樹は遠目にその様子を見つめため息を吐く。

苗がこの学校を怖がっていたなんて初耳だ。
もちろん情報の漏洩を防ぐ為に、苗にもこの企画は伝えてはいなかった。

「はあ…」

「大丈夫ですか?晴樹さん…」

「ああ、なんとかな」

ツアーは上手くいったものの、何処と無く気落ちしている晴樹を直哉は気に掛ける。

「夕食が済んだら苗さんと一緒に居たらどうですか」

「ああ、そうだな」

機嫌を損ねたままだ。意地を張るよりは早いうちに謝った方がいいかも知れない。

そう考える晴樹に直哉はそっと缶詰めを手渡した。

「なんだこれは?」

「仲直りのアイテムですよ」

「もも缶がか?」

「もらって喜ばなくはないと思いますよ」

「………」
こいつ……人の奥さんをなんだと思ってんだ?


そう白い目で直哉を見たが、取り合えず晴樹は黙ってもも缶を受け取った。

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