17 / 255
5章 田中家
1
しおりを挟む
晴樹は車から大量の荷物を下ろしながら苗の家を眺めた。
ここに10人で住んでんのか?ある意味凄いな…っ…
木造二階建て5LDK
築32年。
ちなみに周りにどんどん建てられているのは結城グループのマンションだった。
この辺りは土地開発の為に急激に高騰し、一部の土地を除き他はすべて買収できたと聞いている‥
‥その一部って苗の家だったのか…っ…
晴樹は新築のビルに囲まれた木造の古民家を眺め、苦笑う。ただ、ここも借家だ。大家は売る気満々だったが住民の立ち退きに手間取っているとの情報だった。
そう。長い間住んでいると例え借家でも居住権が発生してしまう。
苗は追い出されてはイカン!! と思い、立ち退きのネタになってしまう滞納していた家賃を一括で払い込んでいた。
そのために当分は今まで以上に苦しい生活を余儀なくされる。
従って、苗にとってたまにお持ち帰りをくれる存在の晴樹は拝んでも拝みきれないありがた~い人になっていたのだ。
買い物した荷物を晴樹は苗と一緒に玄関に運び込む。
「……よっ…と、苗。重いのは俺が運ぶから……っ」
まとめ買いした重い食材を置いて顔を上げると、晴樹の目の前には同じ顔が三つ並んでいた。
そして、晴樹を見るなり奥の部屋に向けて叫ぶ。
「姉ちゃんが男連れて帰ってきたぞ――っ!」
・
後ろから荷物を運んできた苗は三人の弟達を見て目を見張った。
「陸っー!!
あんた頭に何被ってんのっ…」
よく見れば三つ子のウチの一人。陸と呼ばれた弟は頭に白い猫ミミのような物を巻き付けていた。
「あんたまたっ姉ちゃんのブラジャーでそんなことして!!」
「だ、だってっ…ニャンだーマンに変身するにはコレが一番なんだ!!」
猫耳を庇うように陸は両手で頭を隠す。
陸達は三人でプロレスをする度に苗のブラを活用していた。
晴樹の目の前で揉み合うように取っ組み合いの姉弟喧嘩が始まる。
‥ニャンだーマン?‥‥
ああ!今、人気の覆面プロレスラーか…
晴樹は苗と陸のプロレスをしばしの間眺めた。そして苗の決め技が入る!!
「ぅお…っ…姉ちゃん!ギブですっ…ごめんなさいぃっ!!!」
足裏で股間に繰り出される苗の電気アンマ攻撃に、陸は悶絶を打ちながらぐったりと絶えた……。
「ほらっあんた達も荷物運んで!」
勝ち誇ったように苗は指示を出す。
…さすが…っ…高級レストランで持ち帰りする根性といい──
伊達に十人家族を切り盛りしてる訳じゃねぇな……
晴樹は密かに感心した。
「みんな兄さんにお礼言って!!
あの美味しい持ち帰りは兄さんが持たせてくれたんだから」
「ぇ!?じゃあこの兄ちゃんがあのパスタ兄さんか!?」
三つ子は同時に叫んだ。
・
「頼むからあんまり見ないでくれる?」
キラキラとした視線がむず痒い。
晴樹がパスタ兄さんだとわかった瞬間、三つ子の態度が変わる。三人は晴樹を羨望の眼差しで見つめ始めた。
「そっくりだな?苗は見分けつくんだろ?」
晴樹の問いに苗はサラッと応えた。
「うん。ブラを被ってたのが陸(りく)で、今奥に行ったのが海(かい)。んで、そこでキャベツ担いでるのが空(そら)」
「へぇ‥さすがだな…」
指を差して説明されても区別するのが難しい。
「じゃ、兄さん上がって!すごく狭い家で申し訳ないけど…」
車の荷物も全部運び終わり、晴樹は苗に誘われるまま家に上がった。
「……っ」
‥マジで狭いな…
擦りきれて色の変わり果てた畳みの居間に、長方形の座卓が二台繋げて置いてある。
テーブルには苗のW祖父母のペアがちょこんと座っていた。
そして、隅の方では腹巻きにステテコ姿で横になり尻を掻きながらテレビを観ている人が居る……。
‥!!…
もしかして‥満作父さん?
「もう!!また、父ちゃんそんな恰好してっ…お客さんだよ!!」
苗の口にした言葉に晴樹は思わず頬が緩んだ。
‥やっぱり、満作父さん!!
微かに嬉しさを漂わせる晴樹の前で、満作はせっかくくつろいでいるところを苗に無理矢理引っ張り起こされていた。
そして、満作は晴樹と目が合う……。
「お!なんだ苗のコレか!?お前ぇもやるなぁっ!さすが、俺の娘だ!ガハハっ」
・
ここに10人で住んでんのか?ある意味凄いな…っ…
木造二階建て5LDK
築32年。
ちなみに周りにどんどん建てられているのは結城グループのマンションだった。
この辺りは土地開発の為に急激に高騰し、一部の土地を除き他はすべて買収できたと聞いている‥
‥その一部って苗の家だったのか…っ…
晴樹は新築のビルに囲まれた木造の古民家を眺め、苦笑う。ただ、ここも借家だ。大家は売る気満々だったが住民の立ち退きに手間取っているとの情報だった。
そう。長い間住んでいると例え借家でも居住権が発生してしまう。
苗は追い出されてはイカン!! と思い、立ち退きのネタになってしまう滞納していた家賃を一括で払い込んでいた。
そのために当分は今まで以上に苦しい生活を余儀なくされる。
従って、苗にとってたまにお持ち帰りをくれる存在の晴樹は拝んでも拝みきれないありがた~い人になっていたのだ。
買い物した荷物を晴樹は苗と一緒に玄関に運び込む。
「……よっ…と、苗。重いのは俺が運ぶから……っ」
まとめ買いした重い食材を置いて顔を上げると、晴樹の目の前には同じ顔が三つ並んでいた。
そして、晴樹を見るなり奥の部屋に向けて叫ぶ。
「姉ちゃんが男連れて帰ってきたぞ――っ!」
・
後ろから荷物を運んできた苗は三人の弟達を見て目を見張った。
「陸っー!!
あんた頭に何被ってんのっ…」
よく見れば三つ子のウチの一人。陸と呼ばれた弟は頭に白い猫ミミのような物を巻き付けていた。
「あんたまたっ姉ちゃんのブラジャーでそんなことして!!」
「だ、だってっ…ニャンだーマンに変身するにはコレが一番なんだ!!」
猫耳を庇うように陸は両手で頭を隠す。
陸達は三人でプロレスをする度に苗のブラを活用していた。
晴樹の目の前で揉み合うように取っ組み合いの姉弟喧嘩が始まる。
‥ニャンだーマン?‥‥
ああ!今、人気の覆面プロレスラーか…
晴樹は苗と陸のプロレスをしばしの間眺めた。そして苗の決め技が入る!!
「ぅお…っ…姉ちゃん!ギブですっ…ごめんなさいぃっ!!!」
足裏で股間に繰り出される苗の電気アンマ攻撃に、陸は悶絶を打ちながらぐったりと絶えた……。
「ほらっあんた達も荷物運んで!」
勝ち誇ったように苗は指示を出す。
…さすが…っ…高級レストランで持ち帰りする根性といい──
伊達に十人家族を切り盛りしてる訳じゃねぇな……
晴樹は密かに感心した。
「みんな兄さんにお礼言って!!
あの美味しい持ち帰りは兄さんが持たせてくれたんだから」
「ぇ!?じゃあこの兄ちゃんがあのパスタ兄さんか!?」
三つ子は同時に叫んだ。
・
「頼むからあんまり見ないでくれる?」
キラキラとした視線がむず痒い。
晴樹がパスタ兄さんだとわかった瞬間、三つ子の態度が変わる。三人は晴樹を羨望の眼差しで見つめ始めた。
「そっくりだな?苗は見分けつくんだろ?」
晴樹の問いに苗はサラッと応えた。
「うん。ブラを被ってたのが陸(りく)で、今奥に行ったのが海(かい)。んで、そこでキャベツ担いでるのが空(そら)」
「へぇ‥さすがだな…」
指を差して説明されても区別するのが難しい。
「じゃ、兄さん上がって!すごく狭い家で申し訳ないけど…」
車の荷物も全部運び終わり、晴樹は苗に誘われるまま家に上がった。
「……っ」
‥マジで狭いな…
擦りきれて色の変わり果てた畳みの居間に、長方形の座卓が二台繋げて置いてある。
テーブルには苗のW祖父母のペアがちょこんと座っていた。
そして、隅の方では腹巻きにステテコ姿で横になり尻を掻きながらテレビを観ている人が居る……。
‥!!…
もしかして‥満作父さん?
「もう!!また、父ちゃんそんな恰好してっ…お客さんだよ!!」
苗の口にした言葉に晴樹は思わず頬が緩んだ。
‥やっぱり、満作父さん!!
微かに嬉しさを漂わせる晴樹の前で、満作はせっかくくつろいでいるところを苗に無理矢理引っ張り起こされていた。
そして、満作は晴樹と目が合う……。
「お!なんだ苗のコレか!?お前ぇもやるなぁっ!さすが、俺の娘だ!ガハハっ」
・
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる
グミ食べたい
恋愛
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。
彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。
だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。
容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。
「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」
そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。
これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、
高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。
手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる