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14章 つながり
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しおりを挟む「誰が言ったよ…」
静かな口調で聞き返す晴樹の表情に周りの皆が息を飲む。
「誰が言った……」
‥夏目以外に誰がお前にそんなことっ‥‥
晴樹の睨むような視線にさすがに鈍感苗もたじろぐ。
……っ…兄さん…コワいょっ…
突然、自分の知らない男の存在をほのめかされ晴樹は落ち着きが取り戻せない
「なんで言わない‥」
聞いても黙ったままの苗を晴樹は更に睨みつけていた。
ただ、苗は言わないというか‥びびって言えないだけだった。
苗達がそんな晴樹の威圧感に飲まれ沈黙に包まれている時に、田中家には一本の電話が鳴り響いていた──
ガチャ!
「もしもし?」
『あ、おばちゃん?
俺、悟(さとる)だけど!苗いる!?』
「ああ悟クン?苗、今
図書館に勉強に行ってるのよね」
『苗が勉強!?
そんなに無理するなって言って。
ところで、今度も夏休みはこっちに返ってくるんでしょ!?』
「今回は、みんなでは帰らないわ。おばちゃんも今お腹が大きいから大変だし、苗だけ帰らせるから墓参りも一緒に行ってあげて」
・
『解った!苗は帰ってくるんだ♪』
「悟クンは苗だけ帰って来ればいぃんでしょ」
『いゃ、別にそんなことは‥//‥
じゃあ‥こっち着いたら連絡するように言ってて!駅まで迎えに行くから』
「そぉ?じゃあお願いね!」
チン―
オカンは受話器を置いた。
「おぅなんだ?悟からか?アイツはこの時期になると必ず連絡寄越すな‥」
電話を切ったオカンに満作が言った。
「毎年、苗が帰ってくるのを楽しみにしてるんだって‥利枝チャンが言ってたわよ
夏休みは苗と遊ぶ為に彼女とデートの約束もしないんだって」
「なんだ、アイツ‥彼女いんのか?」
「彼女は彼女、苗とは結婚するんだ!って‥一成サンにも言い張ってるらしいわょ」
「ほぉ‥
さすがは俺の娘だ!俺に似てモテモテだなっ」
「あたしに似てモテモテなのよ!」
オカンの反論に満作は口を尖らせた‥‥‥
‥その顔は苗と似てるわ…
田舎からの帰省確認の電話が済んでも、館内で苗は晴樹に睨まれたままだった…
涼しく快適な図書館もいまは何だか凍てつく寒さに震えがきそうである。
「田舎の幼なじみだょ‥」
晴樹の問いに苗はやっとの思いで答えた‥
・
「幼なじみ?‥‥ヘェ‥」
晴樹はその一言だけ返すと黙りこくってしまった‥
雰囲気の重くなる中時計を見ると午後3時前‥
「よし、勉強はこの辺までにして何か食べに行くか?」
晴樹の言葉に陸達が喜ぶ。
「‥じゃあ‥
俺はもう帰るよ‥」
夏目はそう言って勉強道具をしまい始めた‥
「なに、大ちゃんは行かないの?」
苗に引き止められ夏目は晴樹をちらっと見る‥
「帰って、今日の勉強の復習したいからさ‥」
そう言ってから苗に耳打ちした
“後で電話する‥
話したい事があるから‥”
夏目は意味ありげに苗を見つめた。
そして、二人の様子を鋭い目付きで見ている晴樹に夏目は言う‥
「先輩、今日はありがとうございました。俺はこれで帰ります!」
頭を下げて帰ってく夏目を静かに見送ると、晴樹達も図書館を後にした‥
家に帰り着いた夏目は携帯を眺めながら考える‥
‥やっぱ、あの人‥どう見ても苗のこと好きだよな…
夏目は今日の晴樹の態度ではっきりと確信していた‥
‥幼なじみ‥‥か‥
どんな奴なんだろ‥‥‥
知らない男の出現に不安なのは夏目も同じだった‥‥
・
「ただいまぁ!」
再び田中家が賑やかになる中、晴樹はあまり口を開かない‥
解らないところがあると言う空の宿題の続きを見ながらほとんどしゃべらなかった‥
そして、オカンの言葉に晴樹は目を見開く!
「苗、悟クンから電話あったから!」
「悟チャンから?」
「うん、図書館に勉強に行ってるって言ったら無理はするな!って‥‥」
「──‥っ‥
き、…今日の夕飯は何にする?」
苗はいたたまれずに話を反らした‥
「今日は暑いから、素麺にでもしましょ‥」
オカンの意見に苗は頷き台所で準備に取り掛かる。
「おばさん‥」
座椅子に腰掛けゆっくりと休むオカンに晴樹は話かけた。
「悟チャン?て苗の幼なじみのこと?」
「えぇ、まだ、豊作爺ちゃん達が田舎にいる時に苗を長い間預けてたことがあってね‥
あー見えて、あの子小さい頃体が弱かったのよ‥」
「体が?」
‥弱い?‥‥
イメージがわかない──
半信半疑の晴樹にオカンは続けた‥
「ちょうど不況でお父ちゃんもあたしも仕事が大変だったから側に居てあげられなくて、爺ちゃん達に預けたんだけど‥‥その時、仲良くしてくれたのが悟クンって子‥」
・
「その子はあたしの同級生の息子なんだけどね‥
体が弱いっても大した事はないんだけど‥ちょっと無理しちゃうと疲れて高熱がでやすくてね。
幼稚園にも行ってないから由美チャンが初めての女の子の友達になるのよね。あの子たまに話が通じない時あるでしょ?
一人で喋って一人で答える遊びしてたから‥
しかもジジババっ子だから話しがズレてるのよね~」
‥確かに‥
オカンの言葉に晴樹は深く頷いた‥
そぅ、咲子(オカン)35歳の親、父 (弘)母 (百合子)はまだ60代だが、満作の両親豊作とイネは今年で94歳を迎える‥‥‥
満作は7人兄弟の末っ子だった‥
そして、戦前・戦中・戦後のハードな時代を生き抜いてきた祖父母に貴重な幼少時代の苗を預けた結果‥苗は半分古い人間、半分新人類という人格に育ってしまったのだ‥‥‥
堅い考え方をすることもあれば、喜び事がある度に人前でも大胆なハグをする‥理解し難い奴になっていた──
「陸達がお腹にいるのが分かってね、弟と一緒にいたいって言うから、ちょうど体調も治ってたし‥婆ちゃん達も歳だから、田舎引き払ってこっちに戻ってきたのよ。
で、夏休みは毎年田舎に帰るんだけど、今年はコレだから‥」
・
オカンはお腹をポンポンさすりながら晴樹に言った‥
「今もたまに疲れやすい時があるから、晴樹クンや夏目クンみたいに頼りになる友達がいて、あたし達もあんしんだわ‥‥
変わった娘(ムスメ)だけど、よろしくね‥」
オカンの苗メモリーズを聞き終えると、タイミングよく苗が大きなガラスの器に入った素麺を持ってきた
薬味も色んな種類が揃っている‥‥‥
そして、晴樹はこの日、初めて素麺を目にするのだった‥‥
「これ‥どうやって食べるんだ?」
「なに‥兄さん、素麺初めて食べるの!?」
田中家一同が驚いていた。
「食べ方はお蕎麦と同じだょ‥」
苗はそう言って食べ方の見本を見せた‥
水の中を泳ぎ回る素麺を晴樹は箸で追い回す‥だが、捕まえることが出来なかった。
「〰〰むっ…」
「兄さん、箸の握り方ヘタだね?」
苗の言葉に晴樹はムキになり始める‥ただ、田中家の箸はツルツル滑る竹の箸‥‥‥
晴樹にはとても使いこなせる物のではなかった‥
晴樹はこっそり、陸達の手元を見る‥‥‥
‥‥クソ〰っ…///‥
晴樹はこの時初めて箸が使えない事に恥ずかしさを覚え、苗は見かねてそんな晴樹のために素麺をとってあげていた‥
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